実施 2026.07 ・ 更新 2026.09.29
約1,100本の投資信託約款をAIで条文単位に構造化、130時間の作業が数分に
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 書類の直し方がベテランの記憶頼み
- 同じ内容の書類が部署ごとに書き方バラバラ
- 制度改正のたび大量の書類を手で修正
どのようなAIの取り組み?
投資信託約款を条文単位に分解してAIでタグを付け、検索から一括変更、新旧対照表の作成までを一つの基盤につないだAI取り組み
業種
資産運用(金融・保険)
取り組み領域
投資信託約款の文書管理
使ったAI
生成AI(条文のタグ付け・自然言語検索)
主な成果
従来130時間と試算された一括変更を数分で完了
三井住友DSアセットマネジメントは、約1,100ファンド分の投資信託約款をWordファイルで管理してきました。法令改正やファンド内容の変更に伴う約款変更は年間100本以上、新規作成も年間30本ほど発生し、対象の約款を探し、該当箇所を直し、新旧対照表を作るまでを人手で担っていました。同社はneoAIと共同プロジェクトを組み、約款を条文単位に分解したうえでAIがタグを付与し、自然言語による検索、一括変更、新旧対照表の自動生成までを一つのプラットフォーム上でつなぐ基盤を構築しています。PoC(小規模な試験導入)で目標精度を満たせるかを先に検証し、そのうえで本番開発へ進む進め方が取られ、現在は本番稼働して現場での運用が始まっています。
出典:三井住友DSアセットマネジメントとneoAIが挑んだ、AIネイティブな約款管理プラットフォーム構築 |株式会社neoAI 発行元:株式会社neoAI
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
投資信託約款は、ファンドの運用方針や運用期間、組み入れる資産といった契約内容を定める法定文書で、わずかな文言の違いも許されません。三井住友DSアセットマネジメントでは約1,100本のファンドについて、約款本文も変更履歴も過去の修正方針も、個々のWordファイルと担当者の記憶に分かれて置かれていました。合併を重ねた経緯から、同じ趣旨でも表現の異なる7つほどの「流派」が併存していた点も、探索の難しさを押し上げていました。
編集部の見立てでは、困りごとの中心は作業量そのものではなく、「これとこれは同じことを書いた条文か」という判定ができるのが一部のベテランに限られていた点にあります。文言が完全に揃っているなら並べ替えるだけで管理できますが、書きぶりが違えば必ず人の解釈が挟まる。投資信託約款に特化した市販システムが世の中に存在しなかったという事情も、この判定を機械に委ねられないまま職人技が残り続けた背景として読めます。
どうやって、うまくいったのか
うまくいった要因の中心は、管理する単位をWordファイルから条文へ一段下げ、そこにタグを重ねるという構造の置き方にあります。用意されたタグは3種類で、単位型か追加型か、株式や外貨建資産に投資できるかといった商品タイプを示す約款タグ、タイトルや文言が違っても本質的に同じ内容の条文を結び直す条文タグ、TOPIXをベンチマークとするか、格付け制限があるかなど検索軸になる詳細タグが組み合わされました。表現の揺れを消しにかかるのではなく、揺れたまま同じ意味に束ねる層をデータベース側に作ったこと。ここがこの設計の勘所ではないでしょうか。約款の言葉を他部署にも通じる呼び名へ翻訳する役割をタグが兼ねている点も、社内での使われ方を広げる方向に働いています。
タグ付けの判断に業務上の慣例を持ち込んだ点も効いています。たとえば申込時に当日の基準価額を適用する条文は、本文に「当日」と書かれず「申込日の翌営業日の前日」といった表現になっていることがあり、実務のルールを知らなければ正しいタグは付きません。最初の1か月を業務理解のヒアリングに充て、意図と違うタグが出るたびに「なぜこの文面からこのタグになるのか」を一つずつ確認してプロンプトへ落とし込む手順が踏まれました。NISA対象を示すタグや、当初の抽出対象に入っていなかった条文のタグが途中で追加されたように、体系を作り切ってから開発するのではなく走りながら足す前提を置いたことが、この領域では現実的だったと考えられます。
華やかに見えるAIの手前に、1,100本のWordファイルを目視で確認し手で整える工程が置かれていたことも見逃せません。箇条書き設定やフィールド設定の残骸、スペースで揃えた文頭、罫線代わりに並んだ記号など、長年の運用で溜まった形式のばらつきを人が潰し、分割の基準づくりにエンジニアの工数を割いたうえで、最後にAIを動かす順序が取られています。加えて、変更内容の妥当性判断と最終承認は人が担い、AIは差分の検出と新旧対照表の生成を支えるという線引きが敷かれました。法定文書という制約を自動化の限界としてではなく、人が確認・承認しやすい形へ業務を組み直す設計条件として扱った判断が、実運用に耐える基盤につながっています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
PoCでは、自然言語で入力した内容から検索タグを抽出する精度が93.3%となり、両社が事前に決めていた90%の目標を上回りました。本番稼働後には、2026年4月に投資信託協会の名称が資産運用業協会へ変わることに伴い、ほぼすべての約款でキーワードを置換する必要が生じています。従来のやり方では130時間かかると試算されていたこの作業は、構築したプラットフォーム上の一括置換により数分で完了しました。日常業務でも、約款を修正する操作と同時に新旧対照表が出力されるようになり、担当者とダブルチェック担当者の双方から確認のしやすさを評価する声が挙がっています。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、同じ趣旨の文書が表現違いで大量に存在し、その差異を人の記憶で吸収している領域です。約款に限らず、商品概要書や運用基準書のように部門ごとにWordで管理されている資料、長年の合併や組織変更で書式が枝分かれした社内文書などは、条項の単位に割ってタグで束ね直す考え方が効く余地があります。
一方で前提条件もあります。1,100本のファイルを目視で点検して整えた工程が示すとおり、この方式の成否は前処理の手間を社内の誰が引き受けるかに大きく左右されます。また、文書をどの単位で切り、どんな記述にどのタグが付くのかを言語化できる担当者がいなければ、AI側の精度合わせは前に進みません。判断基準が担当者ごとに揺れていて、社内で統一の合意そのものが取れない業務では、同じ進め方は成立しにくいでしょう。
試すなら、手元の文書を一種類だけ選び、「書き方は違うが同じことを述べている箇所」を数件並べてみるところから。そこに共通の呼び名を付けられるかどうかが、この方式に踏み出せるかの見極めになります。
この事例は2026年7月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社neoAI
企業向けのAIサービス「neoAI Enterprise」や汎用の知能基盤「neoAI Chat」を提供し、顧客企業と共同でAIシステムの構築を手がける企業。Enterprise事業本部にAIエンジニアとソフトウェアエンジニアが在籍する。
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
出典・参考情報
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