実施 2025.10 ・ 更新 2026.09.09
横浜銀行の証明書受付、生成AIの電話応対で折り返しが約9割不要に
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 特定の時期だけ電話が集中して回らない
- 自動受付の内容を結局すべて人が確認している
- 書類のやり取りが郵送で何日もかかる
どのようなAIの取り組み?
生成AIを使ったAIエージェント型の電話自動応答で、ローン関連の証明書発行受付の一部について折り返し電話の約9割を不要にしたAI取り組み
業種
銀行業(金融・保険)
取り組み領域
証明書発行の電話受付
使ったAI
AIエージェント型ボイスボット(生成AI・音声AI)
主な成果
一部の証明書で約9割が折り返し電話不要に
横浜銀行は2025年10月、ローンに関する証明書の発行申請を電話で自動受け付けするサービスを新設しました。受付を担うのは、モビルスが提供するボイスボット「MOBI VOICE(モビボイス®)」の新機能で、生成AIが対話を組み立てるAIエージェント型の仕組みです。当初は5つの証明書を対象とし、同年11月に1つを加えて6つの証明書で運用しています。同行は2023年2月から融資・外国送金の問い合わせ窓口でボイスボットを使っていましたが、より人に近い自然な応対と顧客の状況に応じた正確な聞き取りを求め、2025年6月から3カ月の実証実験(PoC。小規模な試験導入)を経て正式導入に踏み切りました。金融機関特有の要件に対しては、業務外の応答を防ぐ設定とセキュアな環境が用意されています。
出典:株式会社横浜銀行|AIエージェント型ボイスボット導入で住宅ローン年末残高証明書の再発行などの受付のうち約9割について折り返し電話が不要に | モビルス株式会社 発行元:モビルス株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
導入前の負荷は、時期による偏りに強く表れていました。年末調整や確定申告で使う住宅ローン年末残高証明書は、年末に向けて再発行の問い合わせが集中し、月間で最大約1,600件、1日あたり最大約150件が発生します。すでにボイスボットで一次受付は自動化していたものの、記録された支店名や口座番号に誤りが見られ、行員が全件を目視で顧客データと照合して折り返す必要がありました。一部の証明書では発行依頼書を郵送でやり取りしており、発行までに数日を要していました。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は電話の本数ではなく、受け付けた内容がそのまま次の事務に渡らないことにあったのではないでしょうか。入口だけを自動化しても、出てくるデータが確認を要する品質であれば、照合と折り返しという工程は丸ごと人手に残ります。自動化したはずの窓口が、かえって確認作業を生んでいた構図です。
どうやって、うまくいったのか
受付の到達点を「電話を受けること」ではなく「申請を完了させること」に置いた設計が、まず効いています。顧客が口にした店舗名を登録済みの店舗情報や既存データと突き合わせ、候補を示しながら確定させる。住所の言い間違いや答えが不完全な場合は、その場で自然に問い返して足りない情報を取り切る。人の代わりに話す仕組みではなく、後続の事務がそのまま使える情報を集め切る仕組みとして組み立てられている点が、従来の自動応答との分かれ目です。
郵送で回していた発行依頼書のやり取りを、通話の中での承諾取得に置き換えた点も見逃せません。AIを既存の手順の上に乗せるのではなく、手順そのものを電話一本で閉じる形に組み替えたことになります。対象をローン関連の証明書発行という定型の受付に絞り込んだ判断も、この組み替えを現実的にしました。聞き取る項目があらかじめ決まっている業務だからこそ、通話内で完結させる設計が成立したと考えられます。
金融機関が顧客向けサービスで生成AIを使うための条件を、技術と体制の両面から満たした過程も重要です。誤った回答が生成されるハルシネーションや、悪意ある入力への懸念に対しては、AIの入出力を監視・制御するガードレールをモビルス側が導入前に構築し、業務外のことを行わないセキュアな環境が整えられました。加えて2025年6月からの3カ月間、支店名や住所の補正精度を現場レベルで検証する実証実験を挟み、小さく始めて効果を確かめながら広げる進め方がとられています。運用開始後もプロンプトの修正依頼にベンダー側が応じ、現場のニーズに即した微調整を続ける体制が敷かれました。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
住宅ローンの年末残高証明書といった一部の証明書発行手続きでは、問い合わせの約9割が折り返し電話なしで完結しています。6つの証明書全体では折り返しにかかる時間を4カ月で約65時間削減し、年間では約175時間の削減を見込みます。郵送作業に充てていた時間も4カ月で約90時間減り、年間約270時間の削減見込みです。承諾のための郵送がなくなったことで最短で受電当日の発行が可能になり、ヒアリング項目が固定されたことで無理な残業を避けて翌日に回す区切りもつけやすくなりました。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、電話で聞き取る項目があらかじめ決まっていて、聞き取った内容を社内の台帳やマスタと突き合わせれば正解を確定できる業務です。今回、曖昧な言い方の補正が効いたのは、支店名や住所のように候補が有限で、照合先のデータが手元にある情報だったという事情が大きいはずです。逆に、相談の中身が一件ごとに異なり、その場で判断や条件提示を求められる問い合わせでは、同じようには進みにくいでしょう。照合先のデータが整っていない場合も、受付は自動化できても後工程の確認は残ります。
金融ほど厳しい要件がない業種でも、AIに答えさせない範囲を先に決めてから公開するという順番は流用できます。まずは、直近で折り返しが必要になった通話を数件聞き直し、どの情報が取り切れていなかったのかを突き止めるところから。
この事例は2025年10月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:音声AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
モビルス株式会社
電話の問い合わせ対応をAIで自動化するボイスボット「MOBI VOICE(モビボイス®)」を提供する企業。AI連携による自動応答に加え、PBXやCRM、個別データベースとの連携など拡張性のある運用に対応し、生成AI活用の伴走支援やCX向上に関する情報発信も行う。
株式会社横浜銀行
出典・参考情報
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
