実施 2025.08 ・ 更新 2026.09.02
生成AI基盤の月間利用率3割、信用金庫が取引先同士をつなぐマッチングAI
プロジェクト期間:1年 〜 2年
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 社内文書を探すのに時間がかかる
- AIを入れても現場で使われない
- 取引先の紹介が担当者頼み
どのようなAIの取り組み?
閉域環境の生成AIプラットフォームを全職員へ広げ、取引先同士のビジネスマッチングを支えるAIも個別開発した、二段構えのAI取り組み
業種
信用金庫(金融・保険)
取り組み領域
全職員の業務支援/ビジネスマッチング
使ったAI
neoAI Chat(生成AIプラットフォーム)、neoAI Enterpriseで構築したマッチングAI
主な成果
全職員向け生成AIの月間利用率が約3割
東京・多摩地域を地盤とする多摩信用金庫が、株式会社neoAIとともに二段構えで生成AIの活用を進めています。一つは全職員向けの生成AIプラットフォーム「neoAI Chat」。2024年にPoC(小規模な試験導入)を意思決定し、同年6月から10月にかけて営業店14店舗・216名で試行、アンケートで見えた課題を踏まえて同年12月に本番導入を決め、2025年3月からの構築を経て同年8月に全職員が使える環境を公開しました。閉域内で使えること、回答文の直後に参照リンクが出ること、現場が自らアシスタントを作れることが選定の軸になっています。もう一つは、個別開発サービス「neoAI Enterprise」で構築した、取引先同士のビジネスマッチングを支えるAI。PoC・要件定義・本番開発を合わせて約9ヶ月をかけ、ニーズ情報の入力そのものを支援する機能まで組み込みました。
出典:全職員の業務を支えるneoAI Chatと、お客さまの本業を支えるビジネスマッチングAIを活用した、多摩信用金庫の生成AI活用 |株式会社neoAI 発行元:株式会社neoAI
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
本格的な調査が始まったのは2023年9月。当時の試行はインターネット環境で行っていたため、業務で使う環境とAIを使える環境が分断され、結果としてあまり利用されませんでした。業務で使う以上、AIが何を参照して答えたのかを確かめられなければ安心して使えないという懸念もあり、さらにプロンプト次第で出力の差が大きい一方、職員一人ひとりの書き方の腕を上げていくのは現実的ではない、という壁もありました。
一方のビジネスマッチング業務では、営業店が面談で拾ったニーズを社内掲示板で共有していたものの、検索機能が弱く、データが溜まるほどかえって探しにくくなる状態に陥っていました。成立するのは担当者が過去にいた店舗の顧客同士など、記憶と人脈の届く範囲にとどまりがちだったとされています。
編集部の見立てでは、この二つの困りごとは同じ輪郭をしています。道具も情報も庫内にあるのに、職員が日常の業務動線の上で手を伸ばせる位置には置かれていなかった。性能や量の問題というより、置き場所と使い口の問題だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
閉域内での構築と、回答文の直後にその都度参照リンクを出す表示方式を組み合わせた設計が、金融業務にAIを載せる前提を整えました。参照元を示す仕組み自体は珍しくありませんが、ファイル名だけを返したり、回答の前後にまとめて並べたりする形では、どの一文がどの文書に基づくのかを読み手が突き合わせる手間が残ります。表示位置を回答文の直後に寄せたことで、融資や預金の規程をRAG(社内文書を検索してAIの回答に活用する仕組み)で参照する使い方でも、回答だけで判断せず提示された規程を自分で読んで確かめる、という運用ルールが実務として成立しました。
良い使い方を個人の技量に委ねず、配れる部品の形にしたことも効いています。面談記録の校閲、年金業務のナレッジ応答、訪問前のヒアリングポイント作成といったアシスタントを営業店向けに優先して用意し、簡単なカタログを添えて公開時に周知する。さらに、条件をプロンプトに書き込んでもらう方式では入力漏れが避けられなかった部分を、直感的に埋められるカスタムフォームに置き換えました。作り手の意図どおりに動かす仕掛けを画面側に持たせた点が、普及と品質の両方に働いています。
ビジネスマッチングAIでは、似た者同士を返す類似度検索ではなく、探している側と提供できる側という相互補完性——「凹凸」を見つけにいく設計が採られました。加えて、表記ゆれや言い回しの差を吸収する検索の仕組みと、入力時に必要な情報が欠けていればやり直しを促すニーズ入力支援を、当初から一体で構想しています。検索精度だけを磨いても、元の情報が薄ければ答えは出ない——その順序を取り違えなかったことが要点でしょう。人事異動への対応のように、長く運用し続けられるかという論点を要件定義で最後まで詰めた進め方も、週次で認識を合わせ続けた体制があって初めて可能になっています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
neoAI Chatは、月間アクティブユーザーで測った利用率が直近で約3割まで来ています。数字以上に変化として語られているのは、職員から「世間で話題のあのAIはどうなのか」といった相談が寄せられるようになったという、庫内のリテラシーの変わり方です。ビジネスマッチングAIは本番稼働から間もなく正確な把握はこれからとしつつ、情報入力の時間短縮とマッチング精度の向上が実感され、直近5月には約500件のニーズ入力とマッチング成果が生まれています。現場からは、条件に合う相手がすぐ見つかったという声も出ています。なお、入力支援による活動意識の変化は、現時点では期待として語られている段階です。
うちでも使える?
応用しやすいのは、判断の根拠となる規程やマニュアルが文書として揃っていて、担当者が原典を確認しながら進める慣習のある業務です。回答の直後に参照元が出る形は、そうした確認行為をそのままなぞれるため、業務手順を大きく変えずに導入できます。案件やニーズの情報を組織として蓄えているものの、検索が弱くて活かしきれていないという状態も、この事例と重なる出発点です。
一方で、そのまま持ち込みにくい条件もあります。マッチング側の要になったのは、探している側と提供できる側という補い合いの関係を業務の言葉で定義できたことで、何と何が噛み合えば価値になるのかを自組織で言語化できなければ、検索を強化しても似た情報が並ぶだけになります。顧客情報を扱うための閉域構築や、人事異動を織り込んだ運用設計にも相応の作り込みが必要です。
まずは、社内に溜まっている案件情報を数十件そのまま読み返し、相手先に何を求めているのかが書かれている件がどれくらいあるかを数えてみる。検索を変えるより先に、入力欄の設計を疑ってみる価値があります。
この事例は2025年8月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社neoAI
AI技術の研究・開発およびソリューション提供を行う企業。法人向けAIエージェントプラットフォーム「neoAI Chat」と、業務特化型AI・ソフトウェアをPoCから要件定義・本番開発まで一気通貫で構築する個別開発サービス「neoAI Enterprise」を提供。代表者は代表取締役CEO 千葉駿介。
多摩信用金庫
出典・参考情報
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
