実施 2024.04 ・ 更新 2026.08.13
住宅ローンの不正申込をAIが100段階で採点、静銀信用保証が6か月で運用開始
プロジェクト期間:半年〜 1年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 審査の目利きがベテラン頼み
- 担当者ごとに判断がぶれる
- 不正や異常の見落としが怖い
どのようなAIの取り組み?
住宅ローンの申し込みが不正に該当する可能性を100段階のスコアで示すAIを開発し、2024年4月から審査業務での運用を始めた取り組み
業種
信用保証業(金融・保険)
取り組み領域
住宅ローンの保証審査・不正検知
使ったAI
過去の審査データを学習した不正検知AI(機械学習によるスコアリング)
主な成果
不正該当の可能性を100段階で可視化し、年間損失額20%削減を目標に運用中
しずおかフィナンシャルグループで住宅関連資金の保証業務を担う静銀信用保証は、住宅ローンを装って賃貸用不動産を購入する不正利用への対応を、担当者の目視確認に頼っていました。この判断のばらつきを埋めるため、HEROZと共同で不正検知AIシステムを開発。過去の申し込みデータから不正の特徴を学習したAIが、新規案件の不正該当可能性を100段階のスコアで示し、審査画面上に表示する仕組みです。HEROZがAIモデルと審査システム連携用のAPIを担当し、静銀信用保証側は学習データや特徴量の選定に審査の観点から助言し、出力結果へのフィードバックを担いました。モデル開発と精度検証に2か月、審査システムとの連携実装に4か月、計6か月で完成し、2024年4月に運用を開始しています。
出典:静銀信用保証株式会社 - HEROZ株式会社(ヒーローズ) 発行元:HEROZ株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
住宅ローンは、自ら住む家を買うという資金使途を前提に、長期・低金利で借りられる融資です。その条件を悪用し、賃貸用不動産の購入資金に充てる申し込みが問題化しており、悪質な不動産業者が審査資料の改ざんや価格の水増しに関与するケースもあります。同社では事前審査の段階で全件を担当者が目視で確認していましたが、経験の差がそのまま精度の差になっていました。実際、実行後に不正が判明して代位弁済に至る案件が短期間に続いたことが、開発着手の直接のきっかけになっています。
編集部の見立てでは、この困りごとの核心は「不正が見抜けない」ことそのものではなく、ベテランが抱く違和感が暗黙知のまま組織に共有されていなかった点にあります。違和感は言語化されないため、研修やチェックリストでは伝わりにくい。だからこそ、判断そのものを置き換えるのではなく、違和感の存在を全員に見える形で示す手段が求められたのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
学習データに何を「不正」として含めるかを、思い込みではなく検証で決めた点が、この開発の勘所だったと考えられます。住宅ローンの不正は実行から発覚までに時間差があり、発覚件数自体も多くありません。データの偏りを補う狙いで、事後的に不正と判明した案件に加え、審査時に不正の疑いが強いと判断して融資を断った案件も学習させる案が検討されました。ところが最後まで並行して精度を検証した結果、後者を学習させないほうが判別力が高いと分かり、最終的には事後判明分のみを採用しています。人の判断を混ぜたデータは一見量を稼げますが、それは「人が疑ったパターン」の再現になりかねない。検証で切り分けたことが、ベテランの目とは別軸の判断材料を作ることにつながったと読み解けます。
役割分担の切り方も、短期開発を支えた要素です。HEROZ側がAIモデルと審査システム連携に必要なAPIの開発を担い、静銀信用保証側は特徴量や学習データを決める際の審査観点からの助言と、出力結果へのフィードバックに集中しました。HEROZには住宅ローンの不正検知システムを開発・運用した経験があり、データ項目の意味や業務フローを一から説明せずに済んだことが、コミュニケーションの短縮に効いています。当初1年以上と見込んでいた開発が半分の期間で済んだ背景には、この前提共有の省略があったと見てよいでしょう。
現場への出し方を最小限にとどめた設計も見逃せません。導入時点では審査フロー自体を変えず、審査システムの画面にスコアを表示して参考情報として使う形に絞っています。運用しながら新規データに対する出力精度を確認し、その結果を踏まえてフロー見直しを検討する段取りです。判定をいきなり業務ルールに組み込まず、まず見える化から始める順序が、現場の抵抗を抑えつつ精度検証を続けられる状態を作っています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2024年4月の運用開始から約3か月の時点で、20名の審査担当者がスコアを審査の参考に使っています。スコアが高い案件には担当者が見ても違和感のある案件が含まれており、不正の特徴を捉えられているという手応えが得られている一方、担当者が疑っていない案件に高スコアが出る場合もあり、原因の追及が続いています。変化として挙げられているのが担当者の意識面で、不正が多発した時期を経験していない担当者でも、必ずスコアが目に入ることで意識して審査に臨めるようになりました。コスト面では、不正利用を未然に防ぐことで年間の損失額を20%程度削減することを目標に掲げている段階です。
うちでも使える?
応用しやすいのは、判断そのものを自動化するのではなく、ベテランの違和感を数値として全員の画面に出す、という使い方の部分です。審査、与信、検品、クレーム対応など、経験者と新人で見落としの量が変わる業務なら、同じ発想は成り立ちます。既存の業務フローを変えずに参考スコアを添えるだけなら、現場の負担も限定的です。
一方で、そのまま真似しにくい条件もはっきりしています。この事例で扱う不正は発覚までに時間差があり、件数も多くありません。つまり正解ラベルが少なく偏りやすいデータで、何を正解とみなすかの検証に手間がかかります。しかも、審査を通さなかった案件は本当に不正だったのか永久に確かめられないという構造的な難しさが残ります。効果の測定が難しい領域だという前提を、経営側が共有できているかどうかが分かれ目になるでしょう。加えて手口は年々巧妙化するため、定期的なモデル更新と特徴量の見直しを続ける体制も要ります。
まず着手するなら、自社で「あとから間違いだったと確定した案件」がどれだけ記録に残っているかを確認するところから。正解が確定した履歴が積み上がっていない業務では、スコア化の前にその記録の取り方を整える必要があります。
この事例は2024年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
HEROZ株式会社
AIモデル開発を手がける企業。過去にディープラーニングを活用した住宅ローンの不正利用検知システム「ARUHI ホークアイ」を開発・運用した実績を持ち、多くのプロ棋士が将棋の練習で活用するAIモデルも開発している。本事例では住宅ローン不正検知AIシステムのAIモデル開発と、審査システムとの連携に必要なAPI開発を担当した。
静銀信用保証株式会社
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