実施 2024.06 ・ 更新 2026.08.16
SOMPOホールディングスがRAGで社内情報検索、グループ各社に安全な体験環境
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 社内規定やマニュアルが探せない
- 会社ごとに見せる情報を分けたい
- 生成AIを安全に試す場がない
どのようなAIの取り組み?
AWSの生成AIサービスとRAGを用い、グループ各社の情報を混ぜずに社内情報検索を試せる環境を、グループ社員向けに公開したAI取り組み
業種
保険持株会社(金融・保険)
取り組み領域
社内情報検索/グループ共通のIT基盤
使ったAI
AWSの生成AIサービスとRAG(検索拡張生成)
主な成果
着手から3か月弱でリリースし、登録ユーザー約100名・14チャンネルで運用
SOMPOホールディングスのIT企画部は、グループ各社のクラウド活用を進めるCCoE(クラウド活用推進の中核組織)として、生成AIを安全に試せる社内情報検索の仕組みを2024年2月に自前で用意していました。社内規定などを読み込ませ、質問に対する回答を生成する仕組みです。ただし利用を広げるには回答精度と画面の使い勝手を高め、上位のLLM(大規模言語モデル)へ移行する必要があり、社内のリソースとノウハウだけでは手が足りませんでした。そこで過去にセキュリティガードレールの構築・運用を担ったNRIネットコムに声をかけ、2024年4月から検索部分を新規に構築。既存のチャットツールへ組み込み、6月にグループ社員向けに公開しています。
出典:AWS生成AIサービスを活用し、RAGによるセキュアな社内情報検索を体験できる環境をグループ社員向けに提供 | 事例 | NRIネットコム(野村総合研究所グループ) 発行元:NRIネットコム
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
2023年の初め頃から生成AIへの関心がグループ内でも高まり、規模の大きなグループ会社は一部の業務で活用を始めていました。一方、中小規模の会社では導入そのものに壁がありました。IT企画部が選んだのは、各社に任せるのではなく、CCoEからお試し環境を配るという道筋です。
自前で立ち上げた2024年2月の仕組みは、AWSのマネージドサービスで検索拡張生成を組み立てるハンズオンを社内向けにカスタマイズしたもので、回答精度と画面の作り込みが利用拡大の足かせになっていました。短期間でLLMが更新され、初期モデルでは機能が足りないという事情も重なります。編集部の見立てでは、困りごとの本質は生成AIの技術的な難しさではなく、グループ内に「試せる会社」と「試せない会社」の落差が生まれていたことにあります。持株会社が試作までは自力で到達できたからこそ、次の壁が「作れるか」ではなく「数十社に配れる品質にできるか」に移った、という順番の問題でした。
どうやって、うまくいったのか
既存の仕組みを作り込むのではなく、生成AIの中核部分を新しく作って既存のチャットツールに組み込むという切り分けが、短い期間で実用の水準へ届かせた要因と考えられます。土台になっていたのはハンズオン向けのシステムで、一般利用向けに機能を広げるにはソースへ大きく手を入れる必要がありました。使える機能は残し、鍵となる部分だけを新規に作る判断は、目先の工数よりも公開後の運用のしやすさを重く見たものです。限られた期間と工数の中で「やったほうが良いこと」と「やらなくてよいこと」を仕分ける役割を外部の技術者が担った点も、社内だけでは踏み切りにくかった選択を可能にしたのではないでしょうか。
情報の出し分けを設計の中心に置いたことも大きいでしょう。グループ企業は数十社あり、他社に見えてはいけない固有情報をそれぞれが抱えています。この事例では、検索サービスAmazon KendraのAccess Control List(誰が何を見られるかを定めた一覧)で制御し、別の会社の情報がRAGの検索対象に入らない構造にしました。全社共通の基盤は、権限の線引きを後回しにするほど載せられる情報が減っていきますが、会社単位の境界を最初から組み込んだ設計が、グループ全体への公開を現実的な選択肢に変えたと見ています。
移り変わりを前提に置いた作りも見逃せません。プロジェクトの最中にも生成AIの大きな更新が2回あり、使用するモデルはパラメータの変更で差し替えられるようにしています。AWS CloudFormationを用いたIaC(インフラの構成をコードで管理する手法)化は依頼にはなかったものの、後の管理しやすさを見越して組み込まれました。リリースの10日ほど前に、非公開チャンネルが使えないという基盤構成の問題が判明した際も、報告の翌日にはAmazon ECSを使う解決策が示され、基盤の変更とアプリケーションの作り直しが並行して進んでいます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
4月に着手し、完成したのは6月24日。終盤に基盤構成の問題が見つかりながらも、3か月かからずリリースに到達しています。公開したチャットツールは登録ユーザーが100名ほど、チャンネルは14という規模で運用されており、IT企画部は今後さらに認知を広げて利用者を増やす考えです。依頼の範囲外だったIaC化やドキュメントの整備も伴い、モデルの差し替えを含む今後の更新に対応できる状態で引き渡された点も、この取り組みの成果に数えてよいはずです。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、複数の会社や部署が同じ基盤に相乗りする形で社内検索を用意したい場合です。すでに使っているチャットツールがあり、そこに検索の入口を置けるなら、利用者に新しい画面を覚えてもらう必要がなく、立ち上げの負担は軽くなります。クラウドの統制を担う部門が社内にあるなら、この事例のように「共通の仕組みを一括で用意し、各社は使うだけ」という配り方も選べます。
反対に、どの文書を誰に見せるかの線引きが決まっていない組織では、この方式はそのまま持ち込めません。アクセス権の一覧で出し分ける仕組みは、権限の定義が先にあってはじめて機能するためです。参照させたい規定やマニュアルが個人の手元に散っている状態も、検索対象として束ねるまでに時間を要します。また、モデルを差し替えられる作りは、その後も更新を追い続ける前提とセットです。まず着手するなら、全社に配る前に一つの部署の規定類だけで、誰に見せて誰に見せないかを一枚の表にしてみる。そこで線が引けるかどうかが、この方式に進めるかの分かれ目になります。
この事例は2024年6月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
NRIネットコム
野村総合研究所グループの企業。インフラからアプリケーションまで一気通貫での支援を強みとし、クラウド事業推進部ではAWSやGoogle Cloudを中心とするパブリッククラウドの活用、データ分析基盤の構築、Webアプリケーション開発、スマートフォンアプリ開発まで幅広い案件に対応する。AWSの認定資格者が多数在籍し、生成AI活用にも注力している。
SOMPOホールディングス株式会社
出典・参考情報
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