実施 2026.03 ・ 更新 2026.08.15
AIにコード生成を任せる前提のAWS基盤、金融水準の統制と開発速度を両立させた設計
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- AIにコードを書かせても品質が安定しない
- 最新のクラウド構成を社内だけで組めない
- セキュリティ要件が厳しくて開発が遅い
どのようなAIの取り組み?
イベントドリブンの設計を軸に次世代のAWSインフラ基盤を構築し、AIを使った開発の土台を整えた事例
業種
不動産セキュリティ・トークン運用(金融・保険)
取り組み領域
システム開発基盤/クラウドインフラ
使ったAI
生成AIによるコード作成を前提としたAWS基盤
主な成果
難易度の高い基盤構築をオンスケジュールで完遂し、開発リードタイムを短縮
ケネディクスグループで不動産セキュリティ・トークン(不動産ST)のアセットマネジメントを手がけるKDX ST パートナーズが、アプリケーション開発にAIを本格的に使うための土台として、AWS上に新しいインフラ基盤「KNA(KST New Architecture)」を構築しました。設計の軸に据えたのは、処理の受け渡しをイベント単位で疎結合につなぐイベントドリブンアーキテクチャ(EDA)です。複数アカウントの統制にAWS Control Tower、ネットワーク制御にAWS Transit Gateway、イベントの中継役にAmazon EventBridgeを置き、バックエンドはAWS LambdaやAWS Fargateといったサーバーレスで構成しています。AWSインフラに精通した株式会社SHIFTのエンジニアが技術リードと進行役を兼ねて参画し、プロジェクトはオンスケジュールで完了、本番運用の開始を控える段階に入っています。
出典:KDX ST パートナーズ株式会社様 導入事例 | 株式会社SHIFT 発行元:株式会社SHIFT
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
AIにコードを書かせること自体は、もはや珍しい話ではありません。KDX ST パートナーズが引っかかっていたのは、その先にある品質の安定性でした。AIに渡すコンテキストが広すぎたり、任せるタスクの粒度が粗かったりすると、返ってくるコードの品質は揺れます。加えて、内製メンバーの技術力には自信があったものの、AWSの最新サービスや複雑なトラフィック制御、高度なセキュリティ設計を横断する構成を本番環境レベルで組み上げるには専門家の視点が要る、という声が現場から挙がっていました。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質はAIの賢さではなく、AIに渡す仕事の境目が引けていなかったことにあります。境目を引く作業は、プロンプトの工夫ではなくシステムの構造そのものを決める話です。AI活用の課題が、いつのまにかインフラとアーキテクチャの設計課題として立ち上がってくる。ここを取り違えずに済むかどうかが、最初の分かれ道だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
「AIに任せる領域を適切な粒度で分割し、品質を制御できる構造をつくる」というテーマを、そのままインフラの設計思想に翻訳したのがイベントドリブンアーキテクチャの採用でした。サービス同士を疎結合にすれば、やり取りの約束事(コントラクト)を明確に定義でき、ひとつのタスクが参照すべき情報の範囲は自然と狭まります。AIに与える情報を絞るために人間が毎回気を配るのではなく、絞られた状態が構造として保たれる設計です。この順序の逆転こそが、AI活用を実運用に乗せる現実的な道筋になったと考えられます。
金融機関レベルの厳格なセキュリティと、迅速にリリースできる利便性という、通常はどちらかを削りがちな要件を、構成の工夫で同時に満たそうとした点も見逃せません。通信経路を特定のポイントに集約して外部からの攻撃面を最小化しながら、バックエンドはAWS LambdaやAWS Fargateといったサーバーレスで組む。この要求に応えたAmazon CloudFront VPC originsの構成や、Lambda@Edge関数によるドメイン遷移時のパラメータ書き換えは、運用の使い勝手を損なわずに統制を効かせるための細工です。土台には複数アカウントを統制するAWS Control TowerとAWS Transit Gatewayを据え、イベントの中継にはAmazon EventBridgeを全面的に採用しています。
外部の専門家を、技術的な設計をリードする役と、議論を前に進める伴走役の二役で置いた体制も、進行を支えた要因でしょう。日々の業務と並行して動く内製チームにとって、詰まりかけた論点を整理し「この進め方でいきましょう」と決める存在は、意思決定の待ち時間をそのまま削ります。課題はチャットで共有された時点で議論が始まり、文字でのやり取りが難しいと見ればすぐオンライン会議とオンラインホワイトボードに切り替える。検証して最適でなければ即座に次案へ移るこの進め方は、採用事例の少ないAmazon VPC Latticeが話題に出た翌日には検証結果とともに提案されるほどの速さで回っていました。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
技術的な難易度が高いプロジェクトでありながら、一切の遅延なくオンスケジュールで完了し、仕様の大きな手戻りも発生していません。この進行の確かさは、社内の開発リードタイムの短縮という生産性の面にもつながっています。基盤そのものはこれから本番運用に入る段階で、今後はこの土台の上でAIをフル活用しながらアプリケーションを展開していくフェーズが始まります。SHIFTとの協業も、グループ全体の生成AI活用ガイドライン策定や脆弱性診断など、インフラ以外の領域へ広がっています。
うちでも使える?
この事例の考え方が効きやすいのは、これから基盤をつくる、あるいはつくり直す余地がある組織です。AIに任せられる仕事の単位は、プロンプトの書き方よりも、システムがどう分割されているかで決まります。逆に、機能同士が密に絡み合った既存システムを抱えていて、当面その構造に手を入れられない場合、同じやり方をそのまま持ち込むのは難しいでしょう。最新のクラウドサービスを自分たちで検証し、短期間で動くものを出せる内製チームがいるかどうかも、進み方を大きく左右します。専門家の伴走が効いたのも、それを受け止めて走れる相手がいたからだと考えられます。
まず試すなら、次にAIへ任せようとしている改修を一件だけ取り上げ、それを仕上げるためにAIへ読ませる必要のある範囲がどこまで広がるかを、チームで具体的に指してみることです。その範囲が想像以上に広いなら、それはAIの側ではなく設計の側の宿題かもしれません。
この事例は2026年3月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社SHIFT
ソフトウェアテスト・品質保証を中心に、AIソリューション、セキュリティ、UI/UX、DX、カスタマーサクセス、コンサルティングなどのサービスを提供。本事例ではAWSインフラの設計・構築支援を担当した。
KDX ST パートナーズ株式会社
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