実施 2025.05 ・ 更新 2026.08.13
生成AIが聞き返して正答率58%→86%、日立と京葉銀行のコールセンター検証
プロジェクト期間:半年未満
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 問い合わせの電話がさばききれない
- 答える人によって回答の質が違う
- AIの回答が的外れで使えない
どのようなAIの取り組み?
生成AIが足りない情報を聞き返す独自技術を使い、コールセンターの回答正答率が58%から86%へ変化することを確かめたAI技術検証の取り組み
業種
地方銀行(金融・保険)
取り組み領域
コールセンター/問い合わせ対応
使ったAI
生成AI+RAG(日立「ユーザー確認技術」)
主な成果
技術検証で回答正答率が58%から86%へ向上
千葉県を地盤とする京葉銀行のコールセンターを舞台に、日立製作所が生成AIの回答精度を確かめる技術検証を2025年5月から9月にかけて実施しました。対象にしたのは、京葉銀行のWebサイトで公開されている情報に関する問い合わせです。この種の質問は同行のコールセンターに寄せられる問い合わせのうち相当数を占めており、精度改善の効果が出やすい領域と位置づけられていました。検証の中心にあるのは、日立が独自に持つ「ユーザー確認技術」です。質問に含まれる情報が足りない場合、生成AIが回答を作る前に確認の質問を提示して意図を絞り込み、そのうえでWebサイト上の該当情報を引用して回答を組み立てます。RAG(外部データを検索してAIの回答に活用する仕組み)に公開情報を学習させただけの状態と比べ、オペレーターが使える回答をどれだけ正しく作れるかを評価しました。
出典:1021a.pdf 発行元:株式会社日立製作所
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
金融機関のコールセンターでは、非対面の問い合わせが増える一方でオペレーターの確保が難しく、経験やスキルの差が対応品質のばらつきとして表れます。待ち時間の長さや不適切な回答は、そのまま利用者の不満につながります。事前に大量のFAQを用意するチャットボットは、複雑な言い回しに弱いという弱点も抱えていました。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は「AIが賢いかどうか」ではなく、質問が曖昧なまま回答生成へ流れ込んでしまう入口の構造にあります。人のオペレーターは「ATMのほうですか、それとも振込のほうですか」と自然に聞き返し、答える前に的を定めています。その確認工程を持たないまま回答作成だけをAIに任せれば、文章としては整った答えが返ってきても、質問者が知りたかったこととは別のことを説明してしまう。ハルシネーションの懸念も、この入口の欠落と地続きだったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
精度を上げる仕掛けを、回答を作る側ではなく質問を受け取る側に置いたことが、この検証の設計上の要点です。「ユーザー確認技術」は、質問に含まれる情報が不十分だと判断した時点で処理をいったん止め、確認のための質問を途中段階で提示します。手数料についての問い合わせであれば、ATM利用手数料か振込手数料かという選択肢を示し、質問者自身に的を絞ってもらう。AIに推測させて埋めるのではなく、足りない情報を対話で補ってから回答工程に進ませる切り分けです。
答えの根拠をWebサイトの公開情報に限定した点も、検証を成立させています。参照先が公開情報であれば、質問に対する正解が第三者にも判定でき、精度を数字で比較する土台が作れます。しかも公開情報に関する問い合わせは同行のコールセンターで相当数を占めるため、狭く絞ったにもかかわらず現場への影響が小さくならない。効果測定のしやすさと業務上の重みが両立する領域を選んだ、狙いの定め方だと考えられます。
いきなり無人応答に踏み込まず、オペレーターが回答内容を作る場面に当てはめた進め方も見逃せません。人が最終的に目を通す形であれば、AIが的を外した場合の影響を現場が吸収でき、その状態のまま精度を測って改善余地を確かめられます。想定問答を事前に大量に作り込む方式と違い、公開情報を参照して答えを組み立てる方式は、情報の更新が回答にそのまま反映されるという運用上の身軽さも備えています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
検証の結果、RAGにWebサイトの公開情報を学習させただけの状態では正答率が58%にとどまったのに対し、「ユーザー確認技術」を用いた場合は86%となり、28ポイントの改善が確認されました。これを踏まえ、オペレーターの負荷軽減と業務効率の向上、待ち時間の短縮による利用者の満足度向上が見込まれています。いずれもまだ実業務での実績ではなく期待される効果であり、日立は今後、この技術を京葉銀行のコールセンターの実業務へ適用することをめざしています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、答えが公開資料や社内規定にすでに書かれていて、なおかつ問い合わせの言葉が短くなりがちな窓口です。料金、手続き、受付時間といった問い合わせは、聞き返し一つで参照すべき箇所が一意に定まることが多く、確認質問をはさむ効果が出やすいと考えられます。
一方で、顧客ごとの契約内容や取引履歴を踏まえないと答えが決まらない相談では、参照先を公開情報にそろえるだけでは足りません。確認質問を重ねること自体が相手の負担になり、かえって満足度を下げる場面もあります。また今回の検証は、正解と誤答を判定できる質問群を用意できたからこそ効果を数字で示せた面があり、正解が一つに定まらない領域では同じ測り方は使えません。
手はじめに、自社のFAQや料金表を読み込ませたAIへ、あえて言葉足らずな質問を投げてみてはどうでしょうか。答えが的を外した瞬間こそ、聞き返しを設計すべき地点です。
この事例は2025年5月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:顧客対応・サポート
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
株式会社日立製作所
IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用した社会イノベーション事業(SIB)を展開する企業。デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズの4セクターに加え、戦略SIBビジネスユニットの事業体制でグローバルに事業を展開し、Lumadaをコアにデータから価値を創出する。2024年度(2025年3月期)売上収益は9兆7,833億円、2025年3月末時点で連結子会社は618社。
株式会社京葉銀行
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