実施 2025.09 ・ 更新 2026.08.13
ソニー銀行の基幹システム開発に生成AI、開発期間20%短縮を目指す取り組み
プロジェクト期間:半年〜 1年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- システム開発の工数と期間を削れない
- 設計書や仕様の情報が散らばっている
- 生成AIの回答精度が業務で使えない
どのようなAIの取り組み?
銀行の勘定系システムの機能開発に、ナレッジグラフで入力データを高度化した生成AIの適用を開始したAI取り組み
業種
インターネット銀行(金融・保険)
取り組み領域
勘定系システムの開発・テスト工程
使ったAI
生成AI+ナレッジグラフ拡張RAG
主な成果
2026年4月までに全機能開発へ適用拡大予定、開発期間20%短縮を目標
ソニー銀行と富士通は、富士通の勘定系ソリューション「Fujitsu Core Banking xBank」を採用したソニー銀行の新勘定系システムについて、機能開発への生成AI適用を2025年9月から始めました。まず着手したのは開発・テストの領域で、富士通独自のナレッジグラフ拡張RAGを用い、保有する大規模データの関係性をナレッジグラフで結びつけて生成AIへ渡す入力データを高度化し、これを繰り返して知見を蓄積しながら精度を高めていく進め方をとっています。2026年4月までにすべての勘定系システムの機能開発へ適用範囲を広げる予定で、将来的には管理・要件定義・運用保守を含む全工程を生成AIで一貫させ、開発期間20%短縮を狙います。すべてのプロセスはAWS上で完結する構成です。
出典:ソニー銀行と富士通、AIドリブンなシステム設計開発を目指し、勘定系システムの機能開発に生成AIを適用開始|プレスリリース|ディスクロージャー|企業情報|ソニー銀行(ネット銀行) 発行元:ソニー銀行株式会社/富士通株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
ソニー銀行は2025年5月にクラウドネイティブな勘定系システムを導入し、全システムのクラウドシフトを完了させています。今回の生成AI適用は、その環境を前提としたAIドリブンな開発エコシステム構築の第一歩と位置づけられています。
ここで注目したいのは、両社が最初に手を付けたのが「生成AIをどれだけ広く使うか」ではなく「AI適用水準をどう上げるか」だった点です。勘定系は預金や決済といった銀行業務の根幹を担う領域で、出力の誤りが許容されにくい。編集部の見立てでは、困りごとの本質は開発人員の不足そのものではなく、汎用の生成AIに設計や仕様を尋ねても、その銀行固有の業務ルールやシステム構造を踏まえた答えが返ってこない、という精度の壁にあったのではないでしょうか。つまり、AIを入れるかどうかではなく、入れたAIを基幹系の品質基準に耐えるところまで引き上げられるかが起点になっていると読めます。
どうやって、うまくいったのか
最初の適用先を開発・テスト領域に限定した進め方が、この取り組みの骨格になっていると考えられます。要件定義や運用保守まで一気に広げるのではなく、成果物の正しさを検証しやすい工程から入ることで、生成AIの出力が使い物になるかどうかを実務の中で判定できます。管理・要件定義・運用保守を含む全工程での一貫適用は将来像として明示されており、到達点を掲げつつ入口を絞る、という段取りの設計になっています。
精度向上の手立てとして、単純な文書検索ではなくナレッジグラフ拡張RAGを選んだ点も、この領域ならではの判断でしょう。RAG(外部データを検索してAIの回答に活用する仕組み)は参照する情報の質に結果が左右されますが、勘定系の設計情報は仕様書・コード・業務ルールが相互に絡み合っており、文書を断片的に引くだけでは関係性が抜け落ちます。保有する大規模データの関係性をナレッジグラフで紐づけてから生成AIへ入力するという設計は、この「つながりの情報」を落とさないための工夫と読み取れます。さらに、その適用を繰り返して知見を蓄積し精度を上げていくとされており、一度作って終わりではなく、使うほど改善が回る前提で組まれています。
土台となる環境の整備が先行していたことも見逃せません。クラウドネイティブな勘定系ソリューションへの移行を2025年5月に完了させ、そのうえで開発プロセス全体をAWS上で完結させる構成をとっています。AIを既存の複雑な環境に後付けするのではなく、AIが動きやすい土台を整えてから載せるという順序が、適用範囲を段階的に広げる計画を現実的なものにしていると考えられます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
現時点で公表されているのは、2025年9月に開発・テスト領域での生成AI適用が始まったという事実と、2026年4月までにすべての勘定系システム機能開発へ適用を広げる計画です。開発期間20%短縮は将来的に見込む目標として掲げられており、達成済みの実績ではありません。両社はこの取り組みを、日本の金融業界におけるAI活用の先進モデルとして確立することを目指すとしています。基幹系という慎重さが求められる領域で、適用開始と全面展開の時期を明示した点自体が、この段階での意味のある一歩と言えるでしょう。
うちでも使える?
参考になるのは、生成AIを開発業務に組み込む際の順序です。適用工程を検証しやすいところから始め、参照させる社内情報の質を先に整える、という流れは、規模を問わず応用が利きます。設計書やコード、業務ルールが文書としてまとまっていて、かつそれらの関係性を人が説明できる状態にある組織であれば、検索対象を整理するだけでも回答精度は変わってきます。
一方で、そのまま真似しにくい条件もあります。今回はクラウドネイティブな基幹システムへの移行を終えたうえでの取り組みであり、古い環境に密結合したシステムや、仕様が担当者の頭の中にしかない業務では、AIに渡せる材料そのものが足りません。ナレッジグラフのような関係性の整備には、元データの棚卸しと継続的なメンテナンスも必要になります。まずは、自社の開発でAIに聞きたい質問を数個書き出し、その答えの根拠となる資料が社内のどこにあるのか、実際に辿れるかを試してみる。辿れない質問が多いなら、優先すべきはAI導入より参照先の整備のほうかもしれません。
この事例は2025年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:情シス・社内DX
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
富士通株式会社
代表取締役社長は時田隆仁。クラウドネイティブなアプリケーション構造を持つ銀行勘定系ソリューション「Fujitsu Core Banking xBank」を2025年6月より提供。ナレッジグラフ拡張RAGなど独自のAI技術を保有し、金融ビジネスの知見と「Uvance」の先進的なオファリングを提供するUvance for Financeの取組を推進している。
ソニー銀行株式会社
出典・参考情報
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