実施 2025.04 ・ 更新 2026.08.16
あおぞら銀行の行内特化LLM、応答精度が従来比130%に向上した検証事例
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 社外にデータを出せず生成AIを使えない
- 社内だけで通じる用語をAIが理解しない
- 社内規定の確認に手間がかかる
どのようなAIの取り組み?
オープンソースのLLMに行内データを追加学習させ、社内ベンチマークでの応答精度を従来比130%まで高めた検証に取り組んだ事例
業種
銀行(金融・保険)
取り組み領域
事務規定の管理業務/行内向けAI基盤
使ったAI
行内データを追加学習したオープンソースLLM(オンプレミス)とRAG
主な成果
社内ベンチマークで応答精度が従来比130%に向上
株式会社neoAIと株式会社あおぞら銀行は、2024年から行内のオンプレミス環境で動く次期AI基盤の構築プロジェクトを進めてきました。その一環として、行内データで学習させた大規模言語モデル(LLM)「あおぞらLLM」(仮称)を開発しています。題材となったのは、法人・リテール業務の事務規定管理業務です。実際の応対シナリオをもとに、行内に関する深い知識とRAG(社内の文書を検索してAIの回答に使う仕組み)の正確な処理を同時に求める、難易度の高い内部ベンチマークを作成。これを指針としてLLMへの継続事前学習を行った結果、難しい問いに対する応答精度が従来比130%となりました。
出典:あおぞら銀行 x neoAI オンプレミス型次世代AI基盤構築に向けて、 金融・行内特化LLMを開発 プロジェクトのベンチマークでの応答精度が大幅に向上 |株式会社neoAI 発行元:株式会社neoAI
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
金融機関にとって、行内の情報は外に出せない前提のものです。あおぞら銀行はセキュリティを最優先しながら業務効率の向上と顧客サービスの革新を目指してきましたが、クラウドを介して提供されるAPI型のLLMでは、機密性の担保と行内情報の学習を両立させることが難しい状況が続いていました。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は「AIが賢いかどうか」ではなく、行内固有の言葉づかいや業務の構造を学ばせる余地そのものが、セキュリティ要件によって最初から塞がれていた点にあります。汎用の生成AIは一般的な金融知識なら答えられますが、その銀行でしか通じない用語や、当座貸越・証書貸付・手形貸付といった融資業務どうしの関係性までは知りません。かといって、それを教えるために行内データを外部へ預けるわけにもいかない。AIが使えないのではなく、使えるようにするための入口が閉じていた。そこが出発点だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
精度を測るものさしを、汎用的なテストではなく実際の応対シナリオから起こした内部ベンチマークに置いたことが、この取り組みの起点になっています。対象は法人・リテール業務の事務規定管理業務で、行内に関する深い知識を前提としながら、参照した文書を正しく扱ってRAGを機能させる必要のある設問群です。何ができるようになったら合格なのかを業務の実態から先に定義したため、学習の方向がぶれにくくなったと考えられます。
金融領域の知識を足すだけで終わらせず、行員が実際に直面するタスクや運用フローを踏まえてモデルを調整した点も見逃せません。追加学習では、新しい知識を入れると以前できていたことが崩れる破滅的忘却(新しい学習によって既存の能力が失われる現象)が起こりがちですが、それを防ぐ学習手法を組み合わせることで、渡されるコンテキストが銀行独自の情報であっても崩れずに応答できる状態をつくっています。ドメイン知識の追加とRAGの読み取り精度を別々の課題として切り分けず、一体で設計したことが効いたのではないでしょうか。
オンプレミス環境にオープンソースのLLMを置くという構成の選択も、単なるセキュリティ対策にとどまりません。モデルの中身に手を入れられる形で持つからこそ、ファインチューニングに限らない幅広い追加学習を試せる余地が生まれます。制約への対処として選んだ環境が、そのまま精度を伸ばすための手段にもなっているわけです。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
内部ベンチマークでは、難易度の高い問いに対する応答精度が従来比130%となりました。回答の正確性・網羅性・再現性が向上し、学習前は正しく認識できていなかった行内固有用語について、その意味や関連性を捉えたうえで応答できるようになっています。融資業務についても、当座貸越などを個別の業務として扱う段階から、証書貸付・手形貸付を含む全体の構造を踏まえた応答へと変化しました。継続事前学習によって行内知識をLLMに獲得させられること自体が確かめられた段階であり、今後は事務規定管理業務にとどまらず、法人業務への応用も進められる予定です。
うちでも使える?
応用しやすいのは、外へ出せない情報を大量に抱え、かつ社内でしか通じない用語や手続きの体系が固まっている組織でしょう。金融に限らず、規定文書が整備されていて、実際の照会対応の記録が残っている業務であれば、何をもって正解とするかを定義しやすく、この事例と同じ順序をたどれます。
一方で、そのまま真似しにくい条件もはっきりしています。オンプレミスでLLMを動かし継続事前学習まで行うには相応の計算資源と技術力が要り、この取り組みも生成AIを専門とする開発パートナーとの協業で成り立っています。正解が文書として定まっていない業務や、担当者ごとに判断の割れる領域では、そもそも学習の指針となるベンチマークを作れません。
手をつけるなら、自社の照会対応のやり取りを10件ほど拾い、汎用の生成AIに同じ問いを投げて、どこで答えを外すかを見てみる。用語を取り違えるのか、業務どうしの関係を取り違えるのか。外し方が分かれば、追加学習まで踏み込む話なのか、手元の文書を参照させれば足りる話なのかの見当がつきます。
この事例は2025年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社neoAI
生成AIに特化したソリューションを提供する、東京大学松尾研究室発のスタートアップ。独自のLLM追加学習およびRAG技術を強みに、企業向けのカスタマイズ可能なAIソリューションを提供している。
株式会社あおぞら銀行
出典・参考情報
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