更新 2026.08.13
東京海上日動あんしん生命、年1.8万件の顧客の声分類で75%時短を実証
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 顧客の声の仕分けに時間がかかる
- 担当者ごとに分類基準がばらつく
- 集めた声を分析に活かせていない
どのようなAIの取り組み?
生成AIとRAGを組み合わせ、年間1万8000件の「お客様の声」の分類と分析を支援する仕組みを構築し、1件あたりの処理時間の約75%短縮を実証したAI取り組み
業種
生命保険(金融・保険)
取り組み領域
お客様の声(VOC)の分類・分析
使ったAI
IBM watsonx.ai(生成AI+RAG)
主な成果
1件あたりの処理時間を約75%短縮、年間500時間を創出
東京海上日動あんしん生命保険は、電話やホームページ、アンケートなど複数の顧客接点から年間1万8000件寄せられる「お客様の声」の分類・分析に、IBMのwatsonx.aiを用いた仕組みを構築しました。第一段階では業界共通の約40種のコードへの自動分類で作業負荷を下げ、第二段階では自社で定めた重要キーワードをハッシュタグとして抽出し、クラスター分析にかけることでテキストデータから傾向を読み取れるようにしています。開発はIBMとの共創体制で、ビジネス部門が要件定義とユーザーテスト、IT部門がプロジェクト管理とアーキテクチャー設計、IBMが実装案の提示と生成AIの知見提供を担い、週次サイクルのアジャイル開発で進行しました。実証実験では1件あたりの処理時間が7〜8分から2〜3分に短縮されています。
出典:東京海上日動あんしん生命保険株式会社 | IBM 発行元:IBM
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
年間1万8000件という「お客様の声」を、最近まで一件一件目視で読み込み、分類していました。1件に7〜8分かかるうえ、人が判断するために分類のばらつきも生じていました。過去には生成系ではないAIによる分類も検討されたものの、大量の学習データの準備や再学習の負担が重く、狙った精度を保ち続けることが難しいと判断されています。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとは「作業が多い」という量の問題にとどまりません。分類が終わらなければ分析にも改善にも進めず、声が業務に反映されるまでの時間が延びていく。しかも分類軸が担当者によって揺れれば、蓄積された1万8000件は分析に耐えるデータ資産になりません。つまり、入口の仕分けが詰まることで、顧客の声を経営や商品づくりに循環させる回路そのものが止まっていた、という構造ではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
効率化と分析高度化を切り分け、二段階で組み立てた進め方が、この取り組みの骨格になっています。第一段階では業界共通の約40種というすでに存在する分類コードにAIを当てはめることに絞り、まず読み込み・分類の負荷を下げる。そのうえで第二段階として、自社で設定した重要キーワードをハッシュタグとして抽出し、クラスター分析で傾向を掘る。最初から「分析まで全部AIに」と広げず、判断基準が既に定まっている工程から手をつけた順序設計が、成果を出しやすい形につながったと考えられます。
再学習に頼らない構成を選んだことも要点です。watsonx.aiの自然言語処理に検索拡張生成(RAG/外部データを検索してAIの回答に反映させる仕組み)を組み合わせ、システムプロンプトとRAGで振る舞いを調整する設計にしたことで、新商品の投入や情報更新のたびにファインチューニング(業務向けにモデルを再学習させる作業)を回す必要がなくなりました。従来型の機械学習で壁になった再学習の重さに、技術選定の段階で正面から答えを出した格好です。個人情報を扱う前提に対しては、IBM Cloud上で稼働させる構成で応じています。
精度を最初から完璧に求めず、70〜80%を目安に「まず動かす」姿勢を共有した点も見逃せません。ビジネス部門とIT部門が組む「アプリケーションオーナー制度」のもとで役割を分け、PoC(小規模な試験導入)からスモールスタートで本格開発へ移すことで、必要な機能の見極めと資源配分を段階的に判断できるようにしています。週次のアジャイル開発で実際に動くものを見せながら検証を重ねる進め方は、生成AIを万能視も過小評価もさせない期待値の調整として機能したと読めます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
実証実験では、手作業で7〜8分かかっていた分類・承認作業が2〜3分となり、約75%の効率化を確認。年間では500時間、約20営業日に相当する時間が創出されました。AIが判断根拠を示すことで分類の根拠が見えるようになり、担当者ごとのばらつきも解消されています。キーワード抽出によるクラスター分析からは、従来の分析では捉えられなかった声の傾向が浮かび上がり、仮説立案や施策検討の精度向上につながっています。本番運用後は、PoC段階で使っていた200種類以上のコードを使わないスリムな運用も検討されており、分類に追われて手が回らなかったプロセス見直しに着手できる状態が生まれています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、分類先の体系がすでに世の中や社内で決まっている業務です。この事例で最初に狙われたのが業界共通の約40種のコードだったように、正解の枠組みが定義済みであれば、AIの出力を人が承認する形で回せます。逆に、分類軸そのものが未整備で「何に分けるべきか」から議論が必要な場合、AIを入れても判断の揺れは残ります。また、顧客の声には個人情報が含まれるため、データをどの環境で処理するかの設計は避けて通れません。判断根拠が妥当かどうかを評価できる業務側の担当者がいるかどうかも、実運用に乗るかの分かれ目になりそうです。
参考になるのは、精度の目標を70〜80%に置いて先に動かした割り切りでしょう。100%を前提にすると、検証だけで時間が過ぎていきます。まずは手元にある問い合わせ記録を十数件ほど選び、既存の分類コードに沿って生成AIに仕分けさせたうえで、その判断根拠を人の分類と突き合わせてみる。どこで食い違うかが見えれば、自社の業務で使えるかどうかの見当がつきます。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
IBM
watsonx.ai、IBM Client Engineering、IBM Consulting を提供し、本事例では実装案の提示と生成AIに関するナレッジ提供を担当。
東京海上日動あんしん生命保険株式会社
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