実施 2025.02 ・ 更新 2026.08.14
全社員向け生成AI研修で利用率40%へ、三井住友トラストクラブの社内浸透の進め方
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- AIツールを入れたのに使われない
- 社内文書が多すぎて目当ての一件が探せない
- 社員ごとのAIスキル差が広がっている
どのようなAIの取り組み?
生成AIチャットツールの全社定着に向け、自社業務を題材にしたハンズオン研修を延べ400名に実施したAI取り組み
業種
クレジットカード発行(金融・保険)
取り組み領域
全社の生成AI活用・社内研修
使ったAI
生成AIチャットパッケージ「AI-Starter」(RAG搭載)
主な成果
延べ400名が受講し、ツール利用率が40%に到達
ダイナースクラブカードなどを発行する三井住友トラストクラブは、社内に散在する規程類を探しやすくする狙いから、2023年上期に生成AIの検討を始めました。まずSaaS型のツールを業務企画部で小さく試し、その後、自社専用の環境を構築できる点を重視してクラスメソッドの生成AIチャットパッケージ「AI-Starter」を採用、2024年12月に全社員が使える状態を整えます。ところが利用状況には差が出たため、次の一手として全社員向けのワークショップを企画しました。開発元であるクラスメソッドに企画・教材制作・講師を依頼し、2025年2月に汎用版とExcel版あわせて6回を、対面とオンラインの併用で開催しています。
出典:三井住友トラストクラブ様事例| 生成AI活用ワークショップで基礎知識を習得し、チャットアプリ「AI-Starter」の活用を推進|クラスメソッド 発行元:クラスメソッド
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
幅広い事業を手がける同社には、業務の遂行に必要な規程類の文書ファイルが大量にあり、社内ポータルに格納されてはいるものの、通常のファイル検索では目的の一件にたどり着きにくい状態が続いていました。RAG(社内の文書を検索してAIの回答に使う仕組み)の導入が検討された出発点は、この探しにくさにあります。
ただ、この事例の困りごとは一段階では終わっていません。AI-Starterが全社に開放されてから約1カ月の時点で、使いこなす社員と使い方がわからず手が止まる社員に分かれていきました。当初の課題が「探せる道具がない」ことだったのに対し、導入直後に立ち上がった課題は「道具はあるが、自分の仕事のどこに当てはめればよいかが見えない」という別種のものへ質を変えていた、というのが編集部の見立てです。全社展開の成否を分けたのは、この二つ目の課題を導入の副産物として流さず、独立した施策として設計し直した判断にあったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
設計で最初に目を引くのは、受講対象を「使いこなせていないユーザー」に定めた点です。導入から1カ月というタイミングは、社員が一度は画面に触れ、できることとできないことの感触をおぼろげに持ち始めた頃合いにあたります。全員へ同じ入門講座を配るのでも、先行して使える一部の層を伸ばすのでもなく、つまずいている側に照準を合わせたことで、講座の中身を「まず何に使うか」という具体へ引き寄せられました。
次に効いたのは、教材の題材を自社の日常業務から取り出す組み立てです。汎用版ではチャットによる社内Q&Aを、Excel版ではマクロの自動作成を扱う二本立てとし、Excelを選んだ根拠は事前の社員アンケートに寄せられた改善要望でした。演習には「ダイナースクラブカードの新規入会キャンペーンの企画案を作ってみる」といった、受講者が自分の職場を思い浮かべられる課題も組み込まれています。学びたい内容を先に聞いてから教材を作るという順序そのものが、受講後に業務へ持ち帰れるかどうかを左右した部分でしょう。
三つ目は、90分のうち半分以上を実際に手を動かす時間へ充てた構成と、それを支えた作り込みの過程です。受講者には新入社員からベテランまで、ITに明るくない層も含まれるため、専門用語は平易な表現へ置き換える、ログインやサインインの手順から説明を足す、不要な部分は削るといった要望が開発元へ細かく投げ返されました。ツールを作った側が教材制作と講義に加わり、開催直前まで内容を調整できる体制が、ハンズオンを見学で終わらせない条件になったと考えられます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
ワークショップは対面とオンラインを合わせて延べ400名が受講し、重複を除いたユニーク参加者は250名に達しました。事後アンケートでは92.6%が「研修に満足」、91.5%が「AI-Starterの操作方法を習得できた」と回答し、98.4%からは今後職場で生成AIを活用したいという声が寄せられています。実施後のAI-Starterの利用率は40%となり、一定の層で日常業務への定着が進みました。経営層や部長クラスのマネジメント層も同じ内容を体験しており、活用を現場だけの話に閉じ込めなかった点も特徴です。
うちでも使える?
応用しやすいのは、参照すべき社内文書が多く、かつ表計算ソフトのように全社員が共通して使う道具がある組織です。この事例の要点は高度なモデル開発ではなく、すでに配ったツールをどう使ってもらうかという運用側にあるため、生成AIを導入したものの利用が伸び悩んでいる段階の企業ほど、手順をなぞりやすいはずです。
一方、そのまま持ち込みにくい条件もあります。教材の作り込みには開発元との複数回のやり取りが要り、既製の研修動画を流すだけでは、自社の題材に置き換える工程がまるごと抜け落ちます。参加枠が短時間で埋まった背景には経営層の高い関心もあり、現場任せの告知で同じ集まり方になるとは限りません。利用率40%という数字は、裏を返せば残りが動いていないことも示しており、一度の研修で全社が切り替わるわけではない点は織り込んでおきたいところ。
小さく始めるなら、自社ツールの利用状況からまだ触れていない部署をひとつ選び、そこの担当者に「先週いちばん面倒だった作業」を一件だけ挙げてもらう。教材の題材は、その一件から決めても遅くありません。
この事例は2025年2月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
クラスメソッド株式会社
生成AIチャットパッケージ「AI-Starter」を開発・提供する企業。AWSに関する高度な技術力を持ち、ChatGPTやAmazon Bedrockなどの各種生成AIサービスの選定からインフラ構築、アプリ開発まで幅広く支援する。今回は三井住友トラストクラブへのAI-Starter提供に加え、全社員向け生成AI活用ワークショップの企画・コンテンツ作成・講義を支援した。
三井住友トラストクラブ株式会社
出典・参考情報
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