実施 2025.04 ・ 更新 2026.08.15
農林中央金庫が回答精度8〜9割を確認、複数文書を横断するAI検索の試み
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 必要な情報が複数のファイルに散らばっている
- 規定やマニュアルを探すのに時間を取られている
- 同じ内容の問い合わせが何度も来る
どのようなAIの取り組み?
図表を含む社内文書を横断して回答するRAGを採用し、検証で回答精度8〜9割を確認した金融機関のAI取り組み
業種
全国金融機関(金融・保険)
取り組み領域
社内の照会応答/社内情報検索
使ったAI
Super RAG(生成AI・RAG)
主な成果
検証で回答精度8〜9割を確認
農林水産業者の協同組織を基盤とする全国金融機関、農林中央金庫が、シナモンAIの独自RAGシステム「Super RAG」の提供を受けています。RAGは、社内にある文書をAIが検索し、その内容をもとに回答を作る仕組みです。狙いは、図や表を含む複雑で膨大な社内データを高い精度で取り込み、検索力とLLM(大規模言語モデル)による回答の信頼性を同時に引き上げること。適用先として想定されているのは、業務所管部と職員の間で発生するQA対応、投融資領域の業務、本店と営業店の情報連携という3つの領域で、いずれも導入に向けた検討と機能実装が進む段階にあります。実際の展開は、育産休など人事関連の照会応答を対象にしたPoC(小規模な試験導入)から始まっています。
出典:農林中央金庫 | Super RAG | すべての企業に、業務で使えるRAGを 発行元:シナモンAI
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
生成AIの検討が本格化したのは2023年11月頃で、社内専用ツール「Seed AI」の初期導入により、アイデアの壁打ちや、1つのファイルを対象にした質問応答はできるようになりました。ところが全社PoCで浮かび上がった本命のニーズは、複数のファイルを参照しなければ終わらない負荷の高い業務であり、当時のRAGでは回答精度が上がらない状態が続いていました。育産休のような手続きひとつを取っても、規定と操作マニュアルが別々の資料にまたがるため、所管部への問い合わせが積み上がっていきます。
編集部の見立てでは、ここでの本質的な困りごとは資料が不足していることではなく、人が読むために最適化された文書が業務単位で分散し、探す負荷が担当者個人に押し付けられていた点にあります。もう一段深刻だったのは、精度の低さそのものより、精度が低いまま使わせると「生成AIは業務では使えない」という評価が社内に固定されてしまうこと。自前の生成AIをリリースした後に利用者の二極化が起きていた事実を踏まえると、これは技術課題であると同時に、社内の期待値をどう扱うかという問題でもあったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
RAGシステムの選定基準を「回答精度」と「運用コスト」の2点に絞り込んだことが、この取り組みの出発点になっています。精度が落ちれば利用者の期待値が下がり、利活用そのものが縮んでいく——という逆算から精度を最上位に置き、同時に、業務やドキュメントの性質ごとにRAGを自前で作り込む方式は開発とメンテナンスの人的負担が重く、拡張性の担保が難しいと判断されました。評価軸を先に固定した進め方は、機能の比較検討が際限なく膨らむのを防ぐという意味でも効いています。
次の要点は、既存の文書をAI向けに作り変えないという方針です。人が読みやすい形式を保ったまま、図表を含む複雑な資料は取り込む側で吸収する構成にしたことで、現場に「AIのための資料整備」という新しい作業を発生させずに済みます。ここには、AI-OCRなど図表の読み取りで培われたドキュメント解析技術を前提に置けるという条件も絡んでいます。導入の負荷は実のところ前処理工程に潜みやすく、その負荷を製品側へ寄せた切り分けが、他業務への横展開のしやすさを左右したと考えられます。
使い手側の設計に踏み込んでいる点も見逃せません。個別業務ごとにRAGが増えれば「どれを使えばいいのか」という迷いが生まれるため、AIオーケストレーションのような機能で入口を一つにまとめ、利用者が意識しないまま適切なRAGへ振り分けられる状態が構想されています。プロンプトの巧拙に依存せず、直感的な聞き方でも答えが返る状態を目標に据えたのは、リテラシー差による二極化を繰り返さないためでしょう。あわせて、ハルシネーション(AIがもっともらしい誤りを答える現象)は起きる前提とし、最終的な判断は人間が行うと社内に周知する運用方針も置かれています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2023年末に開始した検証では回答精度が3割程度にとどまり、RAGの導入自体を断念しかけていましたが、同じユースケースをSuper RAGで試したところ8〜9割という結果が得られています。現在は育産休など人事関連の照会応答を対象にPoCが始まった段階で、規定やマニュアルを探す時間の削減や、所管部への問い合わせ件数そのものの減少が見込まれています。確定した業務削減量ではなく、検証で確認された精度と、そこから予想される効果という位置づけです。
うちでも使える?
応用できるかどうかを分けるのは、探している答えが文書の中に確かに存在しているかという一点です。規定やマニュアル、過去資料が複数ファイルに分かれ、必要な数字が図や表の中に埋まっているような業務であれば、この事例と同じ構図が成り立ちます。反対に、判断の根拠が文書化されておらず担当者の経験の中にしかない業務や、返ってきた回答が正しいかどうかを利用者自身では判定できない業務では、精度が高くても実務には乗りません。最終的な確認を人が引き受けられない領域も同様です。
試すなら、直近ひと月に所管部門へ寄せられた問い合わせを見返し、「どの資料のどこに書いてあるか」を尋ねただけのものがどれだけあったかを数えるところから。その比率が高いほど、文書を横断して答える仕組みが効く余地は大きくなります。
この事例は2025年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
シナモンAI
独自RAGシステム「Super RAG」を提供するAI企業。AI-OCRなど図表の読み取り・ドキュメント解析技術に強みを持つ。
農林中央金庫
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