実施 2025.09 ・ 更新 2026.08.15
ATM詐欺を生成AIで検知、運用費を1台1日27円に抑えた地銀の内製化試行
プロジェクト期間:半年〜 1年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 現場の目視だけで異常に気づけない
- 外注頼みで社内に技術が残らない
- カメラAIの運用コストが心配
どのようなAIの取り組み?
ATMコーナーのカメラ映像を生成AIで判定し、振り込め詐欺が疑われる動作の検知から行員への通報までを1店舗で試行したAI取り組み
業種
地方銀行(金融・保険)
取り組み領域
店舗ATMの防犯・振り込め詐欺検知
使ったAI
Amazon Bedrock(生成AIによる画像分析)
主な成果
1店舗の試行で誤検知率・未検知率ともに0%、運用費はATM1台1日あたり27円に低減
高知県に本店を置く四国銀行は、行内の生成AI活用アイデアコンテストで特別賞に選ばれた「ATM振り込め詐欺対策」を、システム部の行員自身の手で形にする取り組みを進めました。開発を外部に任せるのではなく、SCSKの伴走型内製化支援サービス「テクニカルエスコート」を利用しながら内製で構築する形をとり、9カ月間にわたって2つのフェーズで検証しています。前半はAWSの画像分析サービスと生成AIサービスを比較して判定方式を絞り込む概念実証、後半は実際の支店のATMコーナーにカメラを設置し、詐欺が疑われる動作を検知して行員へ通報し、利用者へ声を掛けるまでを通しで試す試行運用です。検知精度とコストの両面が、この2段階を通じて評価されました。
出典:株式会社四国銀行 様|お客様事例|SCSK株式会社 発行元:SCSK株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
四国銀行が向き合っていたのは、地域で深刻さを増す特殊詐欺です。高知県警察の資料では、2024年の県内の特殊詐欺被害は認知件数54件、被害総額2億3,000万円に達しており、なかでもATMやインターネットバンキングといった非対面取引が悪用される形が最も多くなっています。窓口を通さない取引が狙われる以上、行員の目が直接届かない場所でどう異変に気づくかが問われる状況でした。
もう一つ、社内の側にも壁がありました。2023年の開発案件でAWS上のシステムと行内環境をつなぐ要件が生じた際、条件に合うベンダーが見つからず、委託先の選定が難航していたのです。編集部の見立てでは、この二つは無関係な話ではありません。行員発のアイデアを積極的に実用化する風土がありながら、それを形にする手段が外部委託しかなければ、適した相手に出会えるかどうかで取り組みの成否が左右されてしまう。困りごとの本質は詐欺を検知する技術がないことではなく、現場の気づきが実装に届くまでの経路が一本しかなかったことにあったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
検知精度を引き上げた主役は、モデルそのものよりも問いかけ方の設計でした。同じプロンプトのままモデルだけを入れ替えて性能を比較し、システムプロンプトには役割と出力フォーマットの指示を置き、それ以外をユーザープロンプトへ振り分けるという配置の整理が行われています。なかでも「〜ですか?」ではなく「〜のように見えますか?」と尋ねる形に変えた工夫は、この判定の性質をよく表しています。断定を求める問いは白黒のつかない映像に対しても無理に答えを出させますが、見え方を尋ねる問いであれば回答は観察の報告に近づくはずで、その差を精度の違いとして拾い上げたところに検証の丁寧さがうかがえます。
常時動き続ける仕組みであることを前提に、費用の構造そのものを組み替えた点も見逃せません。当初は高性能な生成AIモデルだけで判定していたものを、安価な画像判定モデルと組み合わせた複合評価に変え、生成AIを呼び出す頻度自体を下げる設計へ切り替えています。処理基盤にもAWS LambdaやAmazon DynamoDB、Amazon SQSといった、使った分だけ課金されるサーバレスの構成が選ばれました。映像を見続ける用途では1回あたりの単価が費用全体を支配するため、すべてを生成AIに任せず、安いモデルで足りる部分は安いモデルに任せる切り分けが、実運用に載せられるかどうかを分けたと考えられます。
内製化の進め方にも、いきなり本丸へ挑まない順序が見て取れます。まずAWSの基礎講座で知識を固め、最初の内製案件として中継ゲートウェイの構築をやり切ったうえで、詐欺検知という難度の高いテーマへ進みました。支援側も答えを渡す立場ではなく、顧客の一員となって一緒に考えるという活動コンセプトのもと、サーバレス実装の実践面で助言する役回りに徹しています。小さく確実な成功を先に一つ作ってから応用へ移る運び方は、技術の習得だけでなく、経営層を含む行内の後押しを保ちながら進むうえでも効いたのではないでしょうか。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
フェーズ2を終えた段階で、誤検知率と未検知率がいずれも0%、つまり試行の範囲では取りこぼしも誤報もない検知精度が確認されています。ランニングコストは、フェーズ1でATM1台1日あたり3,000円かかっていたものがフェーズ2では27円まで下がり、全店舗展開を見据えられる水準に届きました。ただし現時点はある支店での試行運用であり、本格展開に向けて導入店舗を広げながら試行を継続していく段階にあります。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、検知したい状況を「ATMの前で通話している」のように、映像から見て取れる具体的な動作として言い切れる場合です。加えて、検知した後に誰が何をするかが決まっていることも条件になります。この事例では警告音と警告画面で営業店の行員に知らせ、行員が利用者に声を掛けるところまでが一つの流れとして設計されており、AIは気づく役、判断と対応は人という分担がはっきりしています。
逆に、有人の時間帯・有人の拠点という前提が外れると、同じ形はそのままでは成り立ちません。実際この取り組みでも、無人ATMや営業時間外の通報方法は今後の課題として残されています。人物が写る映像を扱う以上、画像を低解像度にするといったプライバシーへの配慮を先に決めておく必要もあるでしょう。手元で試すなら、判定させたい場面の画像を1枚用意し、「〜ですか?」と「〜のように見えますか?」の2通りで同じAIに尋ね、答えがどう変わるかを見比べてみるところから。
この事例は2025年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:情シス・社内DX
活用したデータ:画像・動画・3D
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社四国銀行
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