実施 2026.04 ・ 更新 2026.08.13
第一生命が書類の認識精度2割向上、生成AIとクラウドでOCR基盤を刷新
プロジェクト期間:半年〜 1年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 紙の書類の入力に人手を取られている
- 読み取りAIの精度が足りず任せきれない
- 古い基幹の仕組みが保守切れを迎える
どのようなAIの取り組み?
生成AIを組み込んだクラウド基盤へAI-OCRを刷新し、本人確認書類の認識精度を約2割高めた基盤更改の事例
業種
生命保険(金融・保険)
取り組み領域
保険金・給付金支払いと契約手続きの書類処理
使ったAI
生成AIを活用したAI-OCR(Azure OpenAI/Azure Document Intelligence)
主な成果
帳票認識・文字認識の精度が従来比で約2割向上
生命保険の保険金・給付金の支払いや各種契約手続きでは、免許証などの本人確認書類を読み取る作業が事務の入口に位置します。第一生命保険はこの領域で2020年7月からAI-OCRを使ってきましたが、基盤を支えるハードウェアが保守期限を迎えることを機に、オンプレミス型の仕組みをMicrosoft Azure上のクラウド基盤へ移しました。新しい仕組みはAzure OpenAIとAzure Document Intelligenceを中核に据え、帳票の種類を見分ける処理から文字の読み取り、人による確認、結果の反映までを一続きにつないだ構成になっています。設計・開発を担当したのは株式会社ヘッドウォータースで、第一ライフテクノクロスと連携しながら約1年で構築し、2026年4月24日から本番稼働しています。認識精度は従来比で約2割向上し、ランニングコストは約2分の1になりました。
出典:第一生命の生成AI活用した新AI-OCRシステム設計・開発を担当し、読み取り精度20%向上と運用コスト約50%削減を実現 | 株式会社ヘッドウォータースのプレスリリース 発行元:株式会社ヘッドウォータース
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
第一生命保険がAI-OCRによる自動化を始めたのは2020年7月で、保険金・給付金の支払いや契約手続きの現場では、書類の読み取りはすでに日々動いている工程でした。今回の更改の直接の引き金は、その工程を支えるハードウェアが保守期限(EOS)を迎えることです。
ただし、期限が来たから同じものを作り直す、という進め方にはなっていません。編集部の見立てでは、ここでの本質的な難しさは「読み取りをAIに任せられるかどうか」ではなく、すでに事務に組み込まれた読み取り工程を止めないまま、処理量の増減にも将来の機能追加にも追随できる形へ作り替えられるかどうかにありました。物理サーバーを前提とした構成では、繁忙期に合わせて能力を伸ばすにも機器そのものの手当てが必要で、精度を高める手立ても基盤の世代に縛られます。設備の老朽化そのものより、業務が伸びる方向へ基盤が付いてこられない構造のほうが、重い制約だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
帳票の認識から文字の読み取り、人の確認、結果の反映までをEnd-to-End、つまり工程を分断せず一続きにつないだ設計が、この更改の芯にあります。生成AIやAzure Document Intelligenceといった技術要素を個別に置くのではなく、業務プロセスの流れの中で機能する形へつなぎ込むことが最初から目標に据えられていました。読み取り単体の性能がいくら高くても、前後の受け渡しが手作業のままでは事務全体の速さは変わりません。つなぎ方まで含めて設計対象にした判断が、膨大な処理量と高速処理を求められる実務に耐える構成を成り立たせたと考えられます。
判断が必要な場面には人が関与するHuman in the Loop(AIの自動処理の途中に人の確認を組み込む設計)を、後付けの例外処理ではなくインターフェースの一部として持たせた点も見逃せません。保険金の支払いや契約手続きに使う本人確認書類は、一文字の取り違えが手続きそのものの誤りに直結する性質を持ちます。AIが常に正しく読む前提を置かず、確認を工程として設計へ織り込む割り切りがあったからこそ、精度向上と実運用の安全性を同時に成立させられたのでしょう。
移行の進め方にも工夫が見えます。ヘッドウォータースは第一ライフテクノクロスと連携し、業務要件を起点にシステム構成とワークフローを設計するという順序を守りながら、物理サーバー中心の環境からクラウドへ移す作業を既存業務との連続性に配慮して進めました。稼働中の事務を抱えたまま土台を入れ替える種類の案件では、技術選定よりも、現行業務のどこを変えずに残すかという線引きが成否を分けます。その線引きを業務側の知見を持つ会社と分担した体制が、1年という期間で本番リリースまで到達できた条件になっていたと見ています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
新しいAI-OCRシステムは2026年4月24日から稼働しています。免許証などの本人確認書類について、帳票認識と文字認識の精度は従来比で約2割向上しました。クラウド化によって処理量に応じた柔軟な運用ができるようになり、ランニングコストは約2分の1に下がっています。第一生命保険は今回の更改を、業務品質のさらなる向上と、安定的で持続可能なサービス提供につなげていく方針です。
うちでも使える?
応用が効きやすいのは、決まった様式の書類が毎日まとまった量で流れ、しかも読み間違いが手続きの誤りに直結するような業務でしょう。すでに読み取りの仕組みを持っていて、機器の更新時期や処理量の増加に頭を悩ませている場合は、置き換えの検討材料として近い構図になります。逆に、書類の量が少なく人手で十分回る規模では、クラウド基盤を維持する手間と費用が見合いにくくなります。案件ごとに書式がばらばらで、何をもって正しい読み取りとするかの基準を決められない業務も、確認工程を設計できないため同じやり方はなじみません。
まず試すなら、直近の数日分でかまわないので、読み取り結果を人が直した箇所をたどってみてください。どの書類のどの項目で修正が集中しているかが見えれば、AIに任せる範囲と人が確認する範囲の境目を、自社の実務に即して引けるようになります。
この事例は2026年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:帳票・紙の資料
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社ヘッドウォータース
AIソリューション事業を手がける企業。業種は情報通信、東証グロースに上場、資本金3億8988万円、代表取締役は篠田庸介氏。
第一生命保険株式会社
出典・参考情報
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
