実施 2025.01 ・ 更新 2026.08.15
社員によるアプリ自作を半年で開発者4倍へ、商工中金のガバナンス設計
プロジェクト期間:1年 〜 2年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 現場の困りごとがIT部門まで届かない
- 社員が勝手にツールを使うのが不安
- アプリを自作できる社員を増やしたい
どのようなAIの取り組み?
ローコード開発基盤の導入と公開後に点検する統制の仕組みづくりで、社内のアプリ開発者を半年で約4倍に広げた取り組み
業種
中小企業専門の金融機関(金融・保険)
取り組み領域
社内DX/社員によるアプリ内製
使ったAI
Microsoft Power Platform(ローコード開発基盤・AI Builder)
主な成果
社内開発者が半年で128名から502名へ約4倍に増加
中小企業を支える金融機関である商工組合中央金庫は、社員が自分の業務用アプリを自作する市民開発を、Microsoft Power Platform を使って本格化させました。管理する側としてどこまで統制が利くのかが見えず、以前のRPAツール活用でのつまずきもあって社内には慎重な声があったことから、外部パートナーとしてSCSKを選定しています。2025年1月に始まった支援は、ガバナンス方針の策定、ユーザー育成の研修、ガイドラインによる標準化、運用・監視体制の確立という4つの柱で土台を整えるものでした。途中でアプリの事前検閲をやめ、公開は自由に行って公開後に点検する方式へ方針を転換。2025年5月には4日間の初回研修が行われ、社員19名がチームに分かれてアプリ開発に取り組んでいます。
出典:株式会社商工組合中央金庫 様|お客様事例|SCSK株式会社 発行元:SCSK株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
管理者としてPower Platformを扱うのは初めてで、どういったガバナンスが利かせられるかが見えない手探りの状態でした。加えて、RPAツールの活用でつまずいた経験から、社内には市民開発の有効性を疑う声やセキュリティリスクを心配する声があり、「ガバナンスをしっかりと利かせられるのか」「問題が起きたらどう対処するのか」という議論がたびたび起きていました。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は、社員に開発を任せてよいかどうかという是非の問題ではなく、作られたものを後から把握し、必要なら止められるかどうかが誰にも分からない点にありました。反対や懸念の正体は開発そのものへの拒否感というより、事故が起きたときの打ち手を説明できない状態への不安です。だからこそ、ルールの中身を細かく決める前に、統制の材料が手元にあるかを確かめる必要があった。
どうやって、うまくいったのか
転換点になったのは、アプリの公開前に検閲をかけるという当初の設計を捨て、公開は自由に行ったうえで公開後に点検する形へ切り替えた判断です。この切り替えを支えたのは、管理ツールを使うと社員が開発したアプリの中身が可視化され、使用されているコネクタ類も一覧で見えるという事実の確認でした。問題を内包したアプリを見つけ次第、停止や権限変更で対処できると分かれば、入り口ですべてをせき止める理由はなくなります。事前審査を残したままなら申請待ちの列ができ、思いついたときに作れるという市民開発の速さそのものが損なわれていたはずです。
研修の組み立て方にも、受講して終わりにしない仕掛けがありました。初日はPower Platformの基礎講座にあて、続く3日間は6チームに分かれての開発演習とし、各チームには必ず動くアプリを作ること、発表ではデモを見せることを課しています。動かして人前で見せるという条件は、分かったつもりを許さない装置として働きます。参加者の多くは営業部門や管理部門で働き、Power Platformに初めて触れる社員であり、演習には日本マイクロソフト社の技術支援も入りました。
土台整備を、ガバナンス方針の策定・ユーザー育成・標準化・運用監視体制の確立という4つの柱で並行して進めた設計も効いています。ルールだけ作れば使いこなす人が育たず、研修だけ行えば無秩序が広がる。4つが揃って初めて、自由に作ってよいという状態を組織として説明できるようになります。さらに社内にPower Platform利用者のコミュニティが生まれ、活用ノウハウや創意工夫の交換が進んだことで、担当部署が一人ひとりに教え続ける構造から抜け出しつつあります。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2025年7月から2026年1月末までの半年間で、社内開発者は128名から502名へ約4倍に増え、稼働中のアプリ(フロー数)も399から1,832へと約5倍に拡大しました。初回研修では6チームのうち3チームのアプリが完成度の高さから行内業務での実活用につながっています。社内コミュニティを通じた知見共有も活発になり、現場の担当者が自ら課題解決のアプリを作って共有する流れが生まれました。なお、AI Builderを使った請求書処理の自動化は、現在つくっている途中の段階です。
うちでも使える?
応用しやすいのは、使っている業務基盤に管理画面があり、誰が何を作り、どの外部サービスにつないでいるかを後から一覧できる場合です。可視化と停止の手段が揃っているなら、事前審査を薄くして公開後に点検する運用へ寄せる余地があります。逆に、顧客の資産や個人情報を直接扱う処理、基幹システムのデータを書き換える処理は、いったん動いてしまえば取り消しが難しく、後からの点検では間に合いません。この種の処理は社員による自作の対象から外し、扱ってよいデータと接続先の線引きを先に決めておくことが前提になります。
まず試すなら、自社で使っている業務ツールの管理画面を開き、社員が作った自動化やアプリの一覧と、その接続先が管理者側から見えるかどうかを確かめてみてはどうでしょうか。そこが見えるなら、公開後に点検する運用は現実的な選択肢に入ります。
この事例は2025年1月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:帳票・紙の資料
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
SCSK株式会社
「Power Platform導入・活用支援サービス」を提供するIT企業。Microsoftソリューションとその周辺知見を活かし、ガバナンス設計・環境構築・運用・開発手順の整備や市民開発者育成を支援する。
株式会社商工組合中央金庫
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