実施 2024.11 ・ 更新 2026.08.15
スルガ銀行が社内規程AI検索を全社展開、2か月で正答率9割に到達した進め方
プロジェクト期間:半年未満
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 生成AIを入れたが使う人が限られている
- 社内規程を探すのに時間がかかる
- 社内文書をAIに答えさせる知見がない
どのようなAIの取り組み?
社内規程や業務手続をAIに参照させる仕組みを整え、全社の文書業務に生成AIを行き渡らせたAI取り組み
業種
銀行業(金融・保険)
取り組み領域
社内規程・業務手続の検索/全社の文書業務
使ったAI
生成AIソリューション「Know Narrator」(RAG)
主な成果
約2か月で社内文書への回答の正答率9割程度を達成
静岡県沼津市に本店を置き全国約100店舗を展開するスルガ銀行は、2024年の夏から秋にかけて、電通総研の企業向け生成AIソリューション「Know Narrator」を使った業務改革に着手しました。社内規程や業務手続を読み込ませ、RAG(社内の文書を検索してAIの回答に反映させる仕組み)の精度を高める作業を約2か月続け、目標としていた正答率に到達したうえで2024年11月に全社へ展開しています。同じ時期に市場ファイナンス本部では電通総研が講師を務める研修が開かれ、約40名の職員が実務に近い演習に取り組みました。現在は社内規程の確認や業務上の疑問の解決に加え、資料作成、複数の契約書の差分確認、データ分析といった幅広い用途で使われています。
出典:生成AIソリューション「Know Narrator」と伴走サポートで、業務効率化を推進 | 事例 | インサイト | 電通総研 発行元:電通総研
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
スルガ銀行が全社員向けの生成AI環境を整えたのは2023年10月頃で、Know Narratorを選ぶ前からツール自体は手元にありました。ただし利用は、使いたい社員が使いたいときに触れるという状態にとどまっていました。次の一歩として求められていたのは社内にある情報をAIに参照させて業務そのものを改善することでしたが、行内にRAGの知見はまったくない状況でした。
編集部の見立てでは、困りごとの本質はツールの不足ではなく、自社の文書とAIをつなぐ設計と、社員が使い方を思い描ける型が欠けていた点にあったのではないでしょうか。研修前の現場から、具体的な使い方がわからず気持ちが晴れなかった、部署内で使っているメンバーはごく一部だった、という振り返りが出ていることも、その裏づけになります。
どうやって、うまくいったのか
社内規程や業務手続を読み込ませ、プロンプトを投げて正答率を測る。この地味な往復を約2か月繰り返した進め方が、取り組み全体の土台になっています。誤った回答が出るたびに、何が原因なのか、どこを直せば正しい答えにたどり着くのかを考え、仮説を立てて検証する。あらかじめ9割という合格ラインを置いたことで、精度づくりが「なんとなく良くなった」で終わらず、達成と未達を判定できる作業へと変わりました。ここに、どこを疑いどのプロンプトを調整すべきかという当たりの付け方が、プロンプトエンジニアリング(AIへの指示文の設計)に慣れたベンダー側から持ち込まれています。
精度づくりの場に、Know Narratorを管理するシステム部だけでなく、社内規程や業務手続を管理する業務企画部を同席させた体制も見逃せません。AIが参照する文書の中身と、その文書が現場でどう使われているかを最もよく知るのは、システム側ではなく文書の管理部署です。回答の誤りを技術だけの問題として扱わず、元の文書や業務の側からも見直せる状態にしたことが、短期間での精度向上を支えたと考えられます。開発を担った電通総研は、セキュアな環境構築とRAGの助言に加え、研修開発と導入後の伴走まで受け持ちました。
使い方を広げる側では、2時間の研修を前半の講義と後半の演習に割った構成が効いています。グループワークで扱われたのは、自動車メーカーの格付けレポートをその場で取り込み、その企業への融資を判断するという、参加者が日々向き合う判断そのもの。汎用的な操作説明ではなく自分の業務の題材で手を動かす設計だからこそ、短時間でも自分に使えそうだという感触が生まれたのでしょう。最初から100%の結果を期待せず使い続けてほしいという伝え方も、精度への失望で離脱することを防ぐ現実的な期待値の置き方です。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
約2か月の作り込みで目標としていた9割程度の正答率に到達し、2024年11月にKnow Narratorが全社へ展開されました。現在は社内規程や業務上の疑問の解決のほか、資料作成、複数契約書の差分確認、データ分析などに使われています。法人融資を担当する職員からは、財務分析や資料づくりといった細かな作業の時間が体感で1/10ほどになったという実感も語られました。今後は融資審査業務やコールセンター業務への活用も検討されています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、答えが文書として確定している問い合わせが社内に溜まっている組織です。規程・手続・マニュアルのように正解が書面で決まっている領域なら、回答の当たり外れを人が判定でき、正答率という共通のものさしを置けます。逆に、判断が担当者の経験や個別の交渉の経緯に左右され、何をもって正解とするかを関係者の間で決められない業務では、同じ進め方は成立しにくいでしょう。文書を管理する部署を精度づくりの議論に引き込めるかどうかも、成否を分ける条件です。センシティブな情報を扱うなら、入力した内容がAIの学習に使われない条件を満たせるかは、着手前に確かめておきたいところ。
はじめの一歩としては、社内で最も問い合わせの多い規程を1つ選び、それに対する質問を20問ほど集めて、手元の生成AIに答えさせてみる。何割当たったかを数えるところから始めてはいかがでしょうか。
この事例は2024年11月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
電通総研
これまでのAIプロジェクトの遂行実績を基に独自開発したエンタープライズ向け生成AIソリューション「Know Narrator」(Chat/Insight/Search)を提供。社内に生成AI活用のプロフェッショナルチームを持ち、RAG構築の実績・ノウハウ、オリジナル研修の開発、導入後の伴走支援まで総合的にサポートする。
スルガ銀行株式会社
出典・参考情報
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