実施 2025.09 ・ 更新 2026.08.14
Gemini利用急増に備え、金融研究機関がクラウド運用ルールを明文化
プロジェクト期間:半年未満
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 試験的に入れたツールが社内で広がった
- クラウドの権限設定が担当者任せ
- 生成AIの利用ルールが決まっていない
どのようなAIの取り組み?
Google Cloudの管理マニュアルを策定し、研究員が生成AIを安心して使えるマルチクラウド基盤の整備に取り組んだ事例
業種
投資工学の研究機関・シンクタンク(金融・保険)
取り組み領域
クラウド基盤のガバナンス・セキュリティ運用
使ったAI
Gemini API・Vertex AI(Google Cloudの生成AI基盤)
主な成果
Google Cloud運用の判断基準を1本化し、最小権限方針によるリスク低減を見込む
三菱UFJトラスト投資工学研究所(MTEC)は、三菱UFJ信託銀行グループに属する研究機関で、金融の知識・理論に数理科学や情報科学を組み合わせた調査・研究・分析支援を手がけています。従来はAWSを主軸に据えてきましたが、社内でGemini APIの利用が急拡大し、2023年頃に試験的な位置づけで使い始めたGoogle Cloudの利用者が一気に増えました。試験利用として始まった経緯から、権限管理や監視についての運用ルールは整っていない状態です。そこでクラスメソッドをパートナーに迎え、2025年9月から管理マニュアルの策定に着手。「セキュリティとリスク対策」「認証・認可」「セキュリティ監視」「ログ管理」の4章からなるマニュアルを2026年1月に完成させ、現在はその内容を既存システムの設定へ反映する作業が進められています。
出典:三菱UFJトラスト投資工学研究所様事例|Google Cloudの管理マニュアルを策定|クラスメソッド 発行元:クラスメソッド
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
金融機関に属する組織として、クラウド利用にも厳しいセキュリティ統制が求められます。長年運用してきたAWSには運用ルールもセキュリティ基準も整っていた一方、Google Cloudは試験的な導入から始まった経緯があり、ガバナンス面の整備は追いついていませんでした。思想や設計哲学が異なるためAWSの管理方針をそのまま移し替えることもできず、かといって管理体制をゼロから自力で組み上げるにはマンパワーが足りない状況です。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は技術力の不足ではなく、利用が広がる速さに判断の拠り所づくりが追いつかなかったことにあります。少人数で試しているあいだは、設定の可否をその都度考えても大きな問題にはなりません。ところがプロジェクト報告会でGeminiという言葉が頻繁に飛び交うほど利用が浸透すると、同じやり方が一転してリスクの温床に変わる。人数が増えたこと自体よりも、試験利用の前提のまま本番相当の使われ方が始まっていたという、前提のずれが表面化した場面だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
既存のAWS管理マニュアルを下敷きにしながら、それをそのまま移植せず章立ての目次案から作り直した進め方が、この取り組みの土台になっています。パートナーとして参画したクラスメソッドが必要な章の構成案を用意し、そこにAWSとGoogle Cloudの思想の違いを反映させながら、1章ずつ順を追って中身を書き起こす手順が取られました。流用できない前提に立って骨格から組み直す設計は、遠回りに見えて、後工程で例外や矛盾が噴き出すのを防ぐ形で効いたと考えられます。
成果物を作り込みすぎないという方針を先に置き、Wiki形式で要点をまとめる形にした点も見逃せません。予算に制約がある中で、体裁の整ったドキュメントを仕上げることよりも、書かれた内容を実際の管理マニュアルの設計・設定へ反映するフェーズへ早く移ることを優先した判断です。文書は読まれて設定に落ちてはじめて機能するものであり、完成度と着手の速さのどちらを取るかを最初に決めておいた設計が、実務への接続を確保したと見ています。
知識の差を埋める説明の組み立てにも、実務的な工夫が表れています。Google Cloud固有の用語や設定については、すでに使い慣れたAWSの類似サービスと対比させる形で説明が重ねられ、金融機関特有のセキュリティ要件も設計に汲み取られました。さらにVertex AIのデータ保持仕様のように、クラウドベンダーへ直接確認しなければ判断できない事項は、Google Cloudへ問い合わせて回答を得るところまで踏み込んでいます。既知の枠組みに接続して理解を運び、曖昧なまま残せない仕様は外部に当てて潰すという二段構えが、マニュアルの記述を推測ではなく根拠のあるものに保つ働きをしたのではないでしょうか。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2026年1月に完成したマニュアルは4章構成で、新しいアプリケーションの開発や設定変更の際に属人的な判断へ流れず、常に同じ基準で判断できる「1本の軸」が定まりました。IAMについては最小権限の原則に基づく方針が明示され、これを徹底することでセキュリティリスクの大幅な低減が見込まれています。設定の反映自体は道半ばで、2026年5月末を目途に適用を完了する計画です。監査やリスクの取りまとめに自信を持って臨めるようになり、分析サービスを提供する金融機関に対して、安心してデータを預けられる環境であることを訴求できる状態にもつながっています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、特定のクラウドやAIサービスを試験的に使い始め、気づけば利用者が増えていたというケースです。この事例で効いたのは高度なAI技術ではなく、権限・監視・ログという運用の要点について判断の拠り所を文章にしておく、という地味な作業でした。すでに別の環境で運用ルールを持っている組織なら、その章立てを参照点として使えるぶん、着手のハードルは下がります。
一方で、そのまま真似しにくい面もあります。参照できる既存基準がまったくない状態では比較の軸がなく、何を書くべきかの見当をつけるところから始めることになります。外部に支援を求める場合も、自社が守るべき統制要件を言葉にできる担当者が社内にいなければ、出来上がったルールは実務と噛み合いません。この事例でも、基盤管理を担うグループとインフラ整備を担うグループが連携して主導する体制が前提にありました。
まずは、ここ一年で増えたクラウドやAIサービスについて、権限を誰がどんな基準で付与しているのかを一つ確かめてみる。そこから始めるだけでも、抜けの位置は見えてきます。
この事例は2025年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
クラスメソッド株式会社
AWS・Google Cloud・Microsoft Azure などのクラウド総合支援、生成AI総合支援、データ活用基盤、アプリ開発、セキュリティ・ガバナンス支援を提供する企業。今回はGoogle Cloud管理マニュアルの策定支援を担当。
株式会社三菱UFJトラスト投資工学研究所
出典・参考情報
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