※イメージ画像です01 — Overview
総合建設会社の大豊建設は、社内規程の探しにくさ、文書作成の負担、中堅層の不足による相談のしづらさといった課題を抱えていました。そこでAWS上に生成AI基盤「大豊AI」を構築しています。2024年3月にLINE WORKS上のボットとして試行を始め、同年10月にWebでの提供へ切り替えました。各支店から集めた社員11名と協力会社ワンダーソフトの1名による計12名のワーキンググループで機能を詰め、2025年6月に全社へ展開しています。Amazon BedrockとRAGを中心に、社内規程や法令情報の検索、ファイルを読み込ませた議事録作成、自由対話、用途別テンプレートなどを提供しました。約8ヶ月で307名が累計32,709回以上利用し、規程検索だけで約250時間の業務時間削減につながっています。
出典:大豊建設が AWS で実現した大豊 AI:業務の様々な場面で活躍する生成 AI 活用事例 | Amazon Web Services ブログ(発行元:Amazon Web Services Japan 合同会社)
02 — Problem
大豊建設では、社内規程が月に数回のペースで更新されるにもかかわらず、複雑なフォルダ構成のために最新版がどこにあるのか分かりにくく、キーワード検索をかけても関係のない文書が混ざっていました。工事の完成資料は保管されたまま活用されず、現場では若手とベテラン所長のペアが多いため、若手は質問するタイミングを逃しがちでした。
これらを並べると、本質は情報が足りないことではなく、情報へ辿り着く経路が「人が整理する手間」と「人に聞ける機会」の両方に依存していた点にあると考えられます。実際、以前に取り組んだ竣工データの検索システムは、文書へのラベリングという運用の手間が重く、広く使われるまでには至っていません。整理を人に求める仕組みには限界がある。生成AIへの期待は、まさにこの手間と機会の制約を外すところにあったのでしょう。
03 — Key points
現場の業務に通じた社員を設計段階から巻き込み、小さく試して方針を切り替えていく進め方が、全社展開の土台になったと編集部は見ています。2024年3月のLINE WORKSボットでは、モバイルから手軽に引ける利便性と、長文の閲覧しづらさの両方が確認され、半年後にはWeb提供へ切り替えられました。その時点で本社と各支店から11名、開発を担う協力会社ワンダーソフトから1名を集めたワーキンググループが発足し、4回の会合で要件出しから機能説明、次の方向性までを議論しています。使う側と作る側が同じ席で判断を重ねたことで、全社に出す前に「現場で使われない機能」を減らせたのではないでしょうか。
入口を用途で縛らない自由対話と、初心者向けのテンプレートを併置した二層構造も効いています。フリートークの質問の約6割は翻訳やExcel関数といった日常的な内容ですが、こうした気軽な利用が習慣となり、規程検索や専門的な質問へ自然に手が伸びる下地になっていると考えられます。一方で、利用者が自分でプロンプトを書く当初の仕様は初心者の障壁になると分かり、管理者側で文書校正・議事録作成・メール作成など8種類の用途別プロンプトをあらかじめ用意し、選ぶだけで使える機能が2025年12月に追加されました。自由度を残しつつ、使い方に迷う人の足場も用意した設計といえます。
自社の要件に合わせて作り込める基盤を選び、検索精度を運用しながら改善し続けている点も見逃せません。既存の社内アプリがワンダーソフトの手でAWS上に構築されていたため、同じ基盤に生成AIを載せれば連携やセキュリティ面で無理が少なく、社内規程・e-Govから取得した法令・建築部門の配信資料といった多様な情報源の横断検索も実装しやすくなります。当初の検索サービスでは規程内の表の扱いに課題があり、PDFを丸ごと取り込めるAmazon Bedrock Knowledge BasesのAdvanced RAG機能へ移行した経緯は、精度の不満をそのままにしなかった判断として読めます。新しいモデルが追加されやすいリージョンから最新モデルを積極的に取り込む運用も、継続改善の仕組みとして機能しています。
04 — Results
2025年6月の全社展開から約8ヶ月で307名の社員が利用し、累計利用回数は32,709回を超えました。規程検索だけで約250時間の業務時間が削減されています。議事録は文字起こしを読み込ませて初稿を作らせ、担当者が手直しする流れに変わり、作成時間が大幅に短縮されました。この仕組みは現地語で会議を行う海外の現場でも使われています。若手が基礎知識を自分で調べてからベテランに相談できるようになり、双方の時間の使い方にも変化が生まれました。今後はAmazon Bedrock AgentCoreを使い、施工計画書や社内資料の作成支援を検討しています。この部分は効率化が期待されている段階です。
05 — For your company
応用しやすいのは、社内規程や過去資料がすでにデジタルで蓄積されているのに「探しにくい」ことが問題になっている会社です。既存の社内システムを特定のクラウド上で作ってきた開発パートナーがいるなら、同じ基盤に生成AIを足す選択肢は検討する価値があるでしょう。支店や現場から実務に通じた人を集め、小さな試作を見せながら意見を取れる体制があるかどうかも、この事例の進め方を真似るうえでの分かれ目になります。
難しいのは、規程が紙やスキャン画像のままで、表が多い文書を正確に引き当てる必要がある場合です。この事例でも、表の扱いのために検索の仕組みを途中で移行しています。また、自作の基盤はモデルの入れ替えや精度改善を誰かが担い続ける前提で成り立っており、改善の担い手を確保できないなら、既製のサービスと比べて得失を見極める必要があります。最初の一歩としては、直近で改定された規程を1つ選び、現場の人が実際に聞きそうな質問を3つ用意して、今の仕組みで答えに辿り着くまで何分かかるか計ってみてはどうでしょうか。
07 — Category
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