実施 2026.07 ・ 更新 2026.10.10
重機の位置で木材の産地を追跡、開けた伐採地で位置認証100%の実証
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 木材がどこで伐られたか示せない
- 山の現場で記録を手入力する負担が重い
- 記録の改ざんを防ぐ手立てがない
どのようなAIの取り組み?
重機に載せた衛星測位の受信機で、伐採から出荷までの木材の動きと位置情報の真正性を検証した実証実験の事例
業種
林業(農業・林業・漁業)
取り組み領域
木材トレーサビリティ/伐採・運搬情報の記録
使ったAI
みちびきの高精度測位・信号認証、回転センサー、ブロックチェーン、生成AI(位置情報の可視化)
主な成果
重機の位置情報で伐採から出荷までの木材の動きを追跡できることを実証で確認
株式会社コア 中四国カンパニーが、NECソリューションイノベータ株式会社、山口県産業技術センター、森林CO2クレジット協会と共同で、2025年度に内閣府の実証事業として取り組んだ事例です。宮城県南三陸町、山口県長門市、和歌山県かつらぎ町の山林で、林業事業者や森林組合の協力を得て行われました。狙いは、これまで市場への入庫時からしか記録されていなかった木材の流通履歴を、伐採段階までさかのぼらせること。木材そのものにタグを付けるのではなく、伐採や運搬に使う重機に日本の衛星測位システム「みちびき」の受信機を載せ、重機の軌跡から木材の動きを追いました。あわせて、位置情報のなりすましを防ぐ信号認証の効き具合や、作業員の位置把握による境界確認・安全確保も検証しています。取得した位置データは生成AIも使って地図上にすばやく可視化し、その場で作業員に示しました。
出典:[実証2025-1] コア:木材トレーサビリティ効率化と伐採情報真正性の実証|利活用事例集|みちびき(準天頂衛星システム:QZSS)公式サイト - 内閣府 発行元:内閣府
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
2025年施行の改正クリーンウッド法で木材関連事業者に合法性の確認や報告が義務付けられた一方、どこで伐採された木材かを明確にするトレーサビリティは確立していませんでした。NECソリューションイノベータがすでに開発していたブロックチェーンによる追跡システムも、伐採現場での入力負荷の高さ、森林内での測位精度の低さ、測位信号の改ざんリスクという3つの理由から、伐採情報を対象外にしていました。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は「記録の仕組みがない」ことではなく、「最初の一歩の記録を誰も信用できる形で残せない」ことにありました。流通の途中をいくら堅牢に記録しても、起点である伐採地の情報が人の手入力や改ざん可能な信号に頼るなら、合法性の証明としては穴が残ります。今回の実証は、その起点を人の手から切り離すことに焦点を当てたものと読めます。
どうやって、うまくいったのか
木材ではなく重機を追跡対象にした発想の転換が、この実証の土台です。丸太は重機なしでは動かせないという林業ならではの事情を逆手に取り、木材一本ごとにタグを付ける手間とコストを避けながら、伐採地から山土場、トラック積み込みまでを連続した軌跡として捉える設計になっています。さらに位置だけでは不正な積み下ろしを見分けにくいと見て、グラップルローダーに回転センサーを付け、トラックとの距離と向きから積込回数を数える工夫を重ねた点に、測位を「記録」から「状況の推定」へ引き上げようとする意図が読み取れます。
測位の精度と信頼性を、別々の技術で段階的に確かめたことも見逃せません。サブメータ級のSLASとセンチメータ級のCLASを比べ、さらに信号認証サービスで改ざん防止を検証しました。皆伐地、間伐地、作業道と環境を変えて弱点を洗い出したことで、「どこなら使え、どこで補完が必要か」という実装に向けた地図が得られています。受信機の価格と安定性からSLASで足りるという判断に至ったのも、高精度を追うより現場で回る仕様を優先した現実的な見極めと考えられます。
もう一つは、データを現場の人にその場で見せたことです。林業には位置情報を可視化する仕組みがなかったなかで、生成AIも使って軌跡をすぐ地図に落とし、作業員に示しました。監視されるための記録ではなく、自分たちの仕事が見える道具として受け止められたことが、積極的な協力を引き出したのではないでしょうか。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
検証の結果、重機の位置情報を連続して取得することで、生産林からの搬出、山土場での巻き立て、トラックでの市場・製材所への運搬までをトレースできることが確認されました。信号認証は開けた皆伐地で成功率100%となった一方、間伐地では失敗率が70%を超える場所があり、作業道でも成功率80%台が多く、3分以上連続で失敗するケースもありました。枝葉による測位の欠落や、重機停止の理由を区別する必要性、積込本数のばらつきといった課題も明らかになっています。作業員の位置取得ではSLASでほぼエラーが出ず、約1mの精度で隣地境界の確認に使えると判断されました。今後はIMU(慣性計測装置)による補完や認証状態の一時保持を検討し、2027年度に伐採位置を自動取得できる林業向けソリューションの提供開始を目指しています。
うちでも使える?
「モノに印を付けられないなら、モノを動かす道具を追う」という考え方は、林業以外にも応用の余地があります。砕石や土砂、農産物など、重機や専用車両でしか運べず、一つひとつにタグを付けるのが割に合わない品目を扱う現場なら、運搬機の軌跡と積み込み動作の計測で流れを推定するアプローチは検討に値するでしょう。
一方で、この事例でも山林の枝葉が測位や認証を途切れさせたように、屋根の下や谷間、建物の密集地など上空が開けていない場所が作業の中心なら、衛星測位だけでは記録に穴が空きます。また、1回あたりの積載量が荷の大きさや運転手によって変わる品目では、回数から量を推定する部分に係数の調整が欠かせません。まずは自社の運搬ルートのうち、空が見えない区間がどれくらいあるかを地図に塗り分けてみるところから始めてはいかがでしょうか。
この事例は2026年7月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:画像・動画・3D
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社コア 中四国カンパニー
みちびき対応受信機「Cohac∞」シリーズを手がけ、スマート林業分野でドローンによる森林資源調査のソリューションなども提供している。2020年度のみちびき実証事業にも石灰石の採掘支援で参加。
出典・参考情報
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