実施 2025.01 ・ 更新 2026.10.10
水中映像AIでウニの生息域をヒートマップ化、五島市の磯焼け対策の実証実験
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 潜ってみないと海の中が分からない
- 駆除や見回りに回せる人手が足りない
- 現場へ行かずに状況を把握したい
どのようなAIの取り組み?
水中カメラの映像と画像認識AIで、ウニの一種ガンガゼの生息域をヒートマップ化し、藻場を遠隔で確認する実証実験に取り組んだ事例
業種
沿岸漁業(農業・林業・漁業)
取り組み領域
海中の生物・藻場のモニタリング
使ったAI
画像認識AI「LA-Eye」(動画像解析)
主な成果
ガンガゼ生息域のヒートマップ化と藻場の遠隔確認の実証に成功(潜水回数の削減を見込む)
長崎県五島市の沿岸では、海藻を食べるガンガゼなどによって藻場が失われる磯焼けが進み、漁獲量が落ち込んでいます。これに対し、MizLinx、LAplust、ながさき地域政策研究所、NTTコミュニケーションズの4者が五島市と連携し、水中映像を軸にした洋上IoT/AIプラットフォームの実証実験を行いました。船上から撮影した海底映像をLAplustの画像認識AI「LA-Eye」で解析してガンガゼの分布をヒートマップとして示す検証と、海底に固定したカメラの映像を定期的にクラウドへ送り、藻場の様子を遠隔で確かめる検証の2つが、いずれも成功しています。総務省「令和6年度 地域デジタル基盤活用推進事業(実証事業)」に採択された取り組みです。
出典:2025年1月29日:ガンガゼの生息域ヒートマップおよび藻場の生育状況確認の実証実験に成功|地域からの発表(九州)|NTTドコモビジネス 企業情報 発行元:NTTコミュニケーションズ株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
五島市では、磯焼けを食い止めるためにガンガゼなどの植食動物を取り除く必要がある一方、潜水して駆除する人手が足りず、潜る回数そのものを増やせない状況にありました。定置網漁でも、網の中の様子が出漁するまで分からず、出漁の効率化や高単価魚種の漁獲を伸ばす手が打てていません。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は「人が足りない」ことそのものより、限られた潜水を「どこに、いつ」振り向けるかを決める判断材料が海の上に届いていなかった点にあります。海の中は見えないため、潜ってみるまで成果の出る場所か分からない。その不確かさが、少ない人手をさらに目減りさせていたと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
ガンガゼの有無を「点」ではなく「分布」として地図に落とした設計が、この検証の核だと考えられます。ダイバーを入れずに船上から撮れる360度の海底映像をAIに読ませ、結果をヒートマップにまとめることで、次にどこへ潜るべきかという現場の意思決定にそのまま使える形になっています。AIの出力を個体数のような数字で終わらせず、行動につながる表現まで落とし込んだ点に、実用を見据えた意図が読み取れます。
少ない学習データで目的特化の解析モデルを作れる「LA-Eye」を使った判断も、効いていると見ています。ガンガゼのように対象が限られ、学習用の水中映像を大量に集めにくい領域では、汎用モデルを一から鍛えるより現実的な選択です。今後は魚種や海藻の判定へ広げる構想も示されており、対象を一つに絞って始めたことが拡張の足がかりにもなっています。
撮影機材・AI解析・通信・地域課題の整理を別々の担い手が受け持った分担も見逃せません。MizLinxが機材開発と実証の実施、LAplustが動画像解析とヒートマップ作成、NTTコミュニケーションズが通信環境と実証環境の構築、ながさき地域政策研究所が磯焼けに関する課題整理を担っています。洋上という通信も電源も厳しい場所で、撮る・送る・解析するの一連を途切れさせない体制が、ワンパッケージの検証を成立させたのではないでしょうか。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2つの実証はいずれも成功しています。ヒートマップによって潜水場所を絞り込めるようになり、潜水回数の削減とガンガゼを探す時間の短縮が見込まれるほか、磯焼け対策を施せる面積を広げられるとされています。ブイ型の観測では藻場を常時見守れるようになり、食害の兆しを見つけて手を打てる状態が確認されました。今後は機材の商品・サービス化と全国への展開、AIの認識精度を高めて魚種や海藻も判定できるようにする「うみうみプロジェクト」の始動が計画されています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、現場へ行くこと自体に手間や危険が伴い、しかも見たい対象が「特定の生き物」「特定の異常」のように絞り込める業務です。広い範囲をカメラで撮り、AIに目当てのものを探させて分布図にするという流れは、海に限らず、人が巡回して目視で確かめている点検や見回りにも通じる考え方でしょう。
一方で、この事例は水中カメラやスマートブイといった専用機材と、洋上の通信環境があってはじめて成り立っています。映像を撮る手段が確保できない現場や、見つけたい対象の見た目が季節や個体で大きく変わり判別しにくい場合は、同じ精度を得るまでに時間がかかると考えられます。また、ここで示されている削減効果はあくまで見込みの段階であり、実運用での効果は今後の検証を待つ必要があります。
まずは、自社の巡回や目視確認のうち「どこを見に行けばよいか分かれば回数を減らせる」ものがどれか、担当者と一度話してみてはいかがでしょうか。
この事例は2025年1月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:画像・動画・3D
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社MizLinx
水中カメラ等をIoT化した海洋観測システム「MizLinx Monitor」を開発する企業
長崎県五島市
出典・参考情報
2025年1月29日:ガンガゼの生息域ヒートマップおよび藻場の生育状況確認の実証実験に成功|地域からの発表(九州)|NTTドコモビジネス 企業情報
発行元:NTTコミュニケーションズ株式会社
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