実施 2025.05 ・ 更新 2026.10.10
NTTグループ、遠隔イチゴ収穫の成功率を約80%に高めた通信遅延対策の実証
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 収穫の担い手が年々足りない
- 通信が不安定で遠隔操作が心配
- 遠くの現場作業を人手で支えたい
どのようなAIの取り組み?
通信遅延に合わせて画面表示とロボットアームの速度を変える仕組みで、約400km離れたイチゴの遠隔収穫の成功率を約80%に高めた実証実験
業種
イチゴ栽培(農業)
取り組み領域
収穫作業の遠隔操作
使ったAI
収穫適否を判定する画像処理AI(エッジコンピューティング)
主な成果
実証でアーム操作の成功率が約50%から約80%に向上
日本電信電話(NTT)、東日本電信電話(NTT東日本)、NTTアグリテクノロジーの3社は、東京の操作者が秋田県の圃場にある収穫ロボットをネットワーク越しに動かし、イチゴを収穫する実証実験を行いました。圃場に置いたサーバがロボットのカメラ映像から収穫に適したイチゴかどうかをAIの画像処理で判定し、その結果を重ねた映像を操作者に届けます。あわせて、通信とサーバ処理の遅れをリアルタイムに把握し、遅れの程度に応じて画面表示とアームの速度を切り替える機能を組み込みました。検証の結果、イチゴを傷つけずに収穫できることが確認され、アームを一度で正確に動かせた割合も向上しています。あくまで実証段階の取り組みで、実用化はこれからです。
出典:エッジコンピューティングの品質制御による遠隔収穫ロボット操作に成功〜ユーザビリティの高いスマート農業の促進に貢献〜 | お知らせ・報道発表 | 企業情報 | NTT東日本 発行元:東日本電信電話株式会社(NTT東日本)
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
農業では担い手の減少と高齢化が進み、水やりや追肥の最適化といった従来のスマート農業では、収穫のような作業の人手不足までは解消できていませんでした。一方で、生き物である作物の収穫は一律の自動化が難しく、人の判断を残した遠隔操作が現実的な選択肢になります。
ただ、遠隔操作を広く普及させようとすると、通信の遅れという避けられない揺らぎが壁になります。編集部の見立てでは、ここでの本質的な課題は「遅延をゼロにすること」ではなく、「遅延が起きたときに操作者がそれを知らないまま作業を続けてしまうこと」にあったのではないでしょうか。目に見えない通信の状態が、そのまま操作ミスや作物の傷みにつながる構造だったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
通信品質を3段階に分けて操作者とロボットの双方に伝える設計が、最も効いた要因だと考えられます。遅れが大きくなると映像上に品質が表示され、同時にアームが減速または停止します。人には「いまは慎重に」という判断材料を、機械には誤差を広げない動きを与える二重の手当てで、遅延そのものを消せなくても操作の精度を保てる形にしています。遅れを技術で完全に抑え込むのではなく、遅れを前提に人と機械のふるまいを合わせるという発想の転換が、この実証の核と言えそうです。
もう一つの工夫は、処理時間を画像処理アプリの外から測れるようにした点です。従来はアプリ側に専用機能を足して連携していましたが、汎用的な画像フレームのヘッダを手がかりに、データの通過時間から処理時間を割り出す方式に改めています。収穫適否を判定するAIに手を加えずに済むため、判定モデルを入れ替えたり別の用途に転用したりする際の負担が軽くなります。ネットワーク側の制御技術とアプリ側のAIを疎につなぐこの設計は、農業以外への展開を見据えた判断だと読めます。
役割分担が明確だったことも見逃せません。NTTが制御技術の実装と有用性検証、NTT東日本が通信環境の提供と遠隔営農支援のビジネス化の検討、NTTアグリテクノロジーが圃場の提供とスマート農業としての有用性検証を担っています。技術・通信・現場の3つの視点を最初から組み合わせたことで、実験室ではなく実際の圃場と実際の回線で検証できたのではないでしょうか。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
秋田と東京を光アクセス回線とインターネット回線で結んだ環境で、ロボットを精度高く操作し、イチゴを傷つけずに収穫できることが確認されました。アームをイチゴの位置へ1回の操作で正確に動かせた割合は、遅延が変動する環境で約50%だったものが、新機能の活用で約80%に向上しています。被験者5名全員が操作性の改善を実感したと評価しており、数値と体感の両面で効果が裏づけられた形です。今後は実用化に向けた取り組みを進めるとともに、農業以外の業界への展開もめざすとしています。
うちでも使える?
応用が考えやすいのは、現場に人を置くのは難しいものの、作業の判断そのものは人に残したい業務です。遠隔地の設備操作や点検のように、映像を見ながら人が機械を動かす形態であれば、「通信の状態を操作者に見せる」「状態に応じて機械の動きを抑える」という考え方はそのまま参考になります。すでに画像判定のAIを使っている場合でも、AIに手を入れずに外側で処理時間を測る設計なので、既存の仕組みを活かしやすい点も判断材料になるでしょう。
一方で、この実証は光回線を引いた圃場に画像処理用サーバを置く構成で行われており、回線やサーバを現場に用意しにくい環境では同じ前提が成り立ちません。また、今回の成果は1回の操作でアームを正確に動かせるかという指標で測られたもので、収穫量や作業時間の削減までは検証されていません。自社で検討するなら、まずは遠隔で動かしたい作業について、通信が遅れたときに何が起きると困るのかを一場面だけ具体的に想定してみてはどうでしょうか。
この事例は2025年5月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
東日本電信電話株式会社(NTT東日本)
NTTグループの通信事業者。本実証ではNTT、NTTアグリテクノロジーと共同で、実証の通信環境の提供とICTを活用した遠隔営農支援システムのビジネス化の検討を担当。
出典・参考情報
エッジコンピューティングの品質制御による遠隔収穫ロボット操作に成功〜ユーザビリティの高いスマート農業の促進に貢献〜 | お知らせ・報道発表 | 企業情報 | NTT東日本
発行元:東日本電信電話株式会社(NTT東日本)
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
