更新 2026.10.08
森林調査の工数を10分の1以下に、ドローン点群で木を1本ずつ数える北海道の林業
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 山林の現地調査に人手と日数がかかる
- 抜き取り調査の推定値が実態とずれる
- 在庫の棚卸しを手作業で数えている
どのようなAIの取り組み?
ドローンで取得した点群データを樹木解析ツールで処理し、森林調査の工数を10分の1以下に抑えたAI取り組み
業種
林業(農業・林業・漁業)
取り組み領域
森林資源調査/木材の在庫棚卸し
使ったAI
ScanX(クラウド型点群処理・樹木解析)
主な成果
20ヘクタールの森林調査を延べ11人日から1人日に短縮
北海道釧路市で森林整備と木材生産を営む株式会社大澤木材は、ドローン(DJI Matrice 300 RTKとレーザー計測機DJI L1)で山林の点群データを取得し、クラウド型の点群処理サービス「ScanX」で解析する業務フローを組み立てました。当初は地形データ(DEM)の作成が目的でしたが、現在は樹木解析機能で木1本ごとの位置・樹高・樹冠面積を自動で出力し、針葉樹の本数や材積の推定に使っています。出力データはGISソフトのQGISに取り込んで作業計画に生かし、丸太の月次棚卸しや発注者とのデータ共有にも用途を広げています。結果として、森林調査と棚卸しの双方で作業時間が大きく縮みました。
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
出発点は、ヒグマの出没リスクがある国有林での現地調査という、安全面の切実な課題でした。加えて従来の森林資源調査は、調査区(プロット)を設けて木を数え、そこから山全体を推し量る方式で、推定値が実態から離れやすいという弱点を抱えていました。
編集部の見立てでは、困りごとの根は「人が山に入らないと数字が得られない」という一点に集約されます。危険も、手間も、推定のあいまいさも、限られた人数で広い山を歩いて測るしかない構造から生じていたのではないでしょうか。だからこそ、上空から山全体を丸ごと測る手段が、安全と精度の両方に効く打ち手になり得たと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
木を「抜き取りで推定する」のではなく「1本ずつ全数で捉える」方式へ切り替えたことが、最大の転換点です。点群データから単木ごとの位置・樹高・樹冠面積が自動で出てくるため、材積の計算が推定の積み重ねではなく実測に近い集計に変わりました。さらに解析パラメーターで広葉樹を除き、針葉樹だけを取り出せる点も効いています。業務で本当に必要な対象に絞って数えられることが、精度を実務水準に引き上げたのでしょう。
次に、解析結果を「閉じたツールの中の数字」で終わらせず、シェープファイルとしてQGISに持ち出した運用も見逃せません。地表面データや過去の間伐エリア、既存の道と重ねることで、材積の多いエリア選定や作業道の設計といった判断に直結させています。解析と計画を別々のソフトでつなぐこの組み立ては、林業の現場で既にGISを扱う人が多いという事情に素直に沿ったものといえます。
もう一つの要因は、同じ点群基盤を複数の業務へ横展開したことです。地形データの作成から始まり、樹木解析、丸太の体積計算による棚卸し、URLでの関係者共有へと、一度整えたデータ取得の流れを使い回しています。クラウド型で共有しやすく、買い切りではない契約形態を選んだ判断も、小さく始めて用途を足していく進め方と相性がよかったと考えられます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
20ヘクタールの毎木調査は、従来の延べ11人日から1人日で完了するようになり、工数は10分の1以下になりました。実際に伐採した木の本数と解析結果を突き合わせたところ、約97%の精度が得られています。月次の丸太棚卸しも、3ヘクタールの敷地で数日かかることもあった作業が約1時間に短縮されました。URLで発注者や林業事業体と実データを見ながら話せるようになり、説明の信頼性も高まっています。今後の要望としては、胸高直径の計測や、必要なファイルだけを選んで出力できる機能が挙がっています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、屋外の広い範囲に散らばる「数えるもの」「量るもの」を、人が歩いて確認している業務です。山林に限らず、敷地に積まれた資材の体積把握のように、上空から形状を取れば数値化できる対象なら同じ発想が当てはまります。解析結果を既存のGISや図面ソフトへ持ち出せるかどうかも、計画業務まで効果を広げられるかの分かれ目になりそうです。
一方で、この事例の解析は樹頂点や樹冠といった上から見える情報に基づいています。幹の太さ(胸高直径)のように樹冠の下にある情報は、当事者自身も今後の要望に挙げているとおり、現時点では取りにくい領域です。上空から見えない指標が意思決定の中心にある業務では、現地計測を完全には置き換えられない可能性があります。ドローンの機材と操縦体制を用意できるかも、事前に確かめておきたい条件です。
まずは直近の調査や棚卸しで、1回あたり何人が何日かけているかを記録し、実測結果と照合できる区画を一つ決めておく。導入効果を測る物差しは、それだけで手に入ります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社大澤木材
支援ベンダーについて
本事例の開発・支援を担当した企業名は公開されていません。
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