実施 2024.05 ・ 更新 2026.10.07
ピーマン収穫ロボットで作業時間約30%減、その効果を投資につなぐ実証実験
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 収穫の人手が年々足りなくなっている
- 機械化の効果をうまく説明できない
- 取り組みの価値を数字で伝えたい
どのようなAIの取り組み?
AI搭載の自動収穫ロボットで収穫作業時間を平均約30%削減し、その社会的・経済的な効果を可視化する実証実験に取り組んだ事例
業種
農業(農業・林業・漁業)
取り組み領域
収穫作業の自動化/事業インパクトの可視化
使ったAI
AI搭載型自動収穫ロボット「L」
主な成果
収穫作業時間を平均約30%削減(インパクト可視化は実証実験中)
スマート農業のスタートアップであるAGRIST株式会社は、AIを搭載した自動収穫ロボット「L」を開発・提供しており、2024年5月から宮崎県新富町の複数の農家でピーマンなどの収穫に使われ始めました。現場では収穫作業時間が平均で約30%短くなっています。ただ、こうした成果が社会や経済にどんな変化をもたらしているのかを、客観的・定量的に示す手段は十分ではありませんでした。そこで2025年6月、社会的インパクト評価を専門とするアンドパブリック株式会社と組み、ロジックモデルの策定、インパクト指標の設計、社内データによる暫定的なインパクトサマリーの作成という3段階の実証実験を始めています。狙いは、インパクト投資家に向けて農業分野への資金の流れをつくることです。
出典:農業にインパクト投資を。社会的インパクトの「専門家」アンドパブリックと事業創造の「実践者」AGRISTが実証実験で提携 | スマート農業DXのAGRIST株式会社 発行元:AGRIST株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
AGRISTの収穫ロボットは、すでに新富町の農家で使われ、収穫作業の短縮という手応えも出ていました。一方で、その成果が担い手不足の緩和や農家の所得、持続可能な農業にどうつながるのかを、第三者に客観的な数字で示す材料は足りていませんでした。
編集部の見立てでは、ここで欠けていたのは「成果」そのものではなく、現場の成果を投資家や社会が評価できる言葉へ置き換える「翻訳の仕組み」です。作業時間が何%減ったという数字は農家にとっては十分に意味がありますが、社会的な変化への投資を考える側から見ると、それだけでは判断の材料になりにくい。技術の手応えと資金の出し手の評価軸とのあいだにある溝こそが、困りごとの本体だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
出発点に、新富町の農家で実際に動いているロボットの運用実績と既存の社内データを置いている点が、この実証実験の土台になっています。インパクト評価は、理想の姿から逆算した架空の数字で組み立てると説得力を失いがちです。現場で得られたデータを使って暫定的なサマリーをつくる設計は、指標が机上の空論に流れるのを防ぐ効果があると考えられます。
次に効いているのが、指標づくりの前にロジックモデル(事業がどんな因果の連鎖で社会の変化を生むかを整理した設計図)を置いた順序です。先に測りやすい数字を集めてしまうと、ロボットの効果と社会的な価値の関係が曖昧なまま残ります。収穫の効率化が労働時間の削減や所得の向上、食料自給率への貢献へとどうつながるのかを先に描くことで、測るべき項目が因果の筋道から決まる構造になっています。
役割分担と「完成度65%程度」という目標設定も見逃せません。インパクト評価の方法論はアンドパブリック、農業DXの現場知見はAGRISTが持ち寄る形で、双方の不足を補っています。そのうえで6月の仮説づくりから8月のデータ集計までを短い周期で回し、最初から完璧を狙わない方針を明示したことが、評価の枠組みを実際に形にするための現実的な判断だったと編集部は見ています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
自動収穫ロボットについては、2024年5月に新富町の複数の農家で導入が始まり、収穫作業時間を平均で約30%削減しています。インパクト可視化の実証実験はまだ進行中の段階で、2025年8月30日に成果発表が予定されています。8月にはインパクト指標の方向性を共有し、可能であれば社内外への発信に使う「インパクトサマリー」の一部も示すことを目指しています。今後は、得られた知見を「農業インパクト投資パッケージ(仮)」として両社で共同展開し、他の農業従事者や農業関連企業が自らの事業の効果を示せるようにする計画です。現場の効率化という成果を、資金調達につながる説明材料へ変えられるかどうかが、この先の焦点になるでしょう。
うちでも使える?
自社でAIやロボットを導入し、作業時間の短縮といった手応えはあるものの、それを取引先や金融機関、自治体などに説明しきれていない企業にとっては、参考にしやすい進め方です。特に、すでに現場で使われていて社内に運用データが残っている場合は、それを起点に「この効果が誰の何を変えているのか」を順に整理するだけでも、説明の筋道が見えてくるはずです。65%程度の完成度で一度形にする考え方は、評価の専門部署を持たない中小企業でも取り入れやすいでしょう。
一方で、まだ導入前の段階でデータがない場合や、効果が作業時間のように数えやすい形で現れない取り組みでは、同じようには進めにくいと考えられます。また、この事例は評価の方法論を持つ専門家と組んでいる点が前提にあり、社内だけで因果の整理から指標設計までを担うのは負担が大きいかもしれません。
まずは、自社で導入したツールがもたらした変化を一つ選び、「作業時間が減った、その結果として何が起きたか」を三段階ほど矢印でつないで書いてみてはどうでしょうか。
この事例は2024年5月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
採用したAI技術・ツール
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
AGRIST株式会社
テクノロジーで農業課題の解決を目指すスタートアップ。AIを搭載した自動収穫ロボットを活用したスマート農業を全国で展開している。
宮崎県新富町内の複数農家
出典・参考情報
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