実施 2026.04 ・ 更新 2026.10.07
病害虫を1週間前に予報するAI、JA豊橋で害虫調査の作業を約9割削減
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 害虫の発生時期が年々読めない
- いつもの散布日程では被害が防げない
- 現地調査に時間を取られ訪問が減る
どのようなAIの取り組み?
気象データと病害虫の発生履歴を学習した予測AIにより、JA豊橋の防除指導でフェロモントラップ関連の作業時間を約9割削減したAI取り組み
業種
農業協同組合(農業)
取り組み領域
病害虫の防除指導/発生予測
使ったAI
病害虫予測アプリ「TENRYO」(機械学習による予測AI)
主な成果
フェロモントラップ関連の作業時間を約9割削減
筑波大学発のスタートアップであるミライ菜園は、病害虫の発生リスクを1週間前に知らせるアプリ「TENRYO」を開発・提供しています。20年分の気象データと病害虫の発生履歴を学習した独自のAIが直近の気象データなどを分析し、被害が出る前の防除を促す仕組みです。
愛知県のJA豊橋では、2025年から全ての営農相談員がTENRYOを使って農家への防除指導を行っており、AI予報への全面的な切り替えはJAグループ初の事例とされています。その結果、フェロモントラップ(害虫を誘引して捕獲し、発生状況を調べる装置)関連の作業時間が約9割減りました。対応作物は2026年春に23品目まで広がり、愛知・愛媛・群馬・北海道・京都のJAや農業法人でも試験運用を含めて使われています。
出典:農作物の4分の1は、収穫前に失われている。「見えないフードロス」をAIでゼロにしたい | 株式会社ミライ菜園のプレスリリース 発行元:株式会社ミライ菜園
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
病害虫による被害は、目に見えてから農薬を散布しても商品価値が戻りません。ところが気候変動で発生時期がずれ、アブラムシが例年より1か月早く大発生したり、愛媛県でカメムシが例年の80倍規模で発生したりと、慣行的な散布スケジュール(防除暦)では追いつかない事態が起きていました。
編集部の見立てでは、困りごとの核心は「病害虫がいること」よりも「いつ手を打てばよいかの判断材料が過去の暦と人手の調査に頼っていたこと」にあります。暦は平年を前提にした目安にすぎず、トラップによる実地調査は発生を確認してからの後追いになりがちです。例年どおりが通用しなくなったとき、その両方が同時に効かなくなる構造だったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
予測の対象を「今いるかどうか」ではなく「1週間後に発生しそうか」に置いた設計が、この取り組みの要と考えられます。20年分の気象データと発生履歴を突き合わせることで、病害虫が増えやすい気象条件の傾向をつかみ、直近の天候からその条件に近づく兆しを拾う形です。1週間という先読みの幅は、農家が薬剤を準備して散布するまでの段取りに収まる長さであり、「早すぎず遅すぎない」防除の判断を現場で実行できる情報に落とし込んでいます。
平年の常識を当てにしない判定も効いています。開発中の2023〜2024年の冬、低温期には活動が止まるとされるブロッコリーの黒すす病について、AIは局所的な気温上昇を捉えてリスク上昇を知らせました。季節の常識ではなく、その時々の気象から判断する仕組みだからこそ、異常気象で暦が崩れる状況に強いのではないでしょうか。
もう一つは、営農相談員の指導という既存の業務の流れにAI予報を組み込んだ点です。農家一軒一軒にアプリを使いこなしてもらうのではなく、指導する側が予報を根拠に助言する形をとったことで、AIの判断が地域の防除に届く経路がはっきりしました。対応作物を9品目から23品目へ広げたことも、「自分の作物には使えない」という導入時のためらいを取り除き、相談員が扱う作物全体に予報を当てはめやすくしたと考えられます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
JA豊橋では、TENRYOを使った防除指導への切り替えによって、フェロモントラップ関連の作業時間が約9割削減されました。浮いた時間は、農家への個別訪問など対面でのやり取りが必要な業務に振り向けられています。開発段階の冬には、AIのアラートに従って防除した農家で被害がほぼ出ず、ある若手農家は収量を前年比15%増やしました。熟練の農家から「AIに負けた」という声が上がるほど精度が高まった点も、予報が指導の根拠として受け入れられる下地になっていると読めます。今後は、どの農薬をいつ散布するかまで具体的に提案する「AI指導員」のような役割を目指しています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、被害や不具合が「気象や季節の条件」に左右され、しかも対策に準備期間が必要な業務です。長期の気象データと過去の発生記録がそろっていれば、発生そのものではなく発生しやすさを前もって示す仕組みが考えられます。また、JA豊橋のように、予報を受け取って現場に助言する立場の人がいる組織では、予報を指導の根拠として流し込みやすいでしょう。
反対に、過去の発生記録が残っていない作物や地域、あるいは発生が気象よりも圃場ごとの管理状態に強く左右される問題では、同じ精度は期待しにくいと考えられます。予報と実地調査のどちらを優先するかの線引きも、組織ごとに検討が必要な部分です。まずは自分たちが毎年悩む病害虫について、発生を確認した日付とその前の天候を並べ、どれほど前から兆しが読めそうかを確かめてみてはどうでしょうか。
この事例は2026年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
株式会社ミライ菜園
筑波大学発のアグリテックスタートアップ。AIを活用した防除DXサービスの開発及び販売を行い、病害虫予測アプリ「TENRYO」を提供している。
JA豊橋
出典・参考情報
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