実施 2025.07 ・ 更新 2026.10.03
パプリカ出荷量倍増の見込み、センサーとAIで栽培判断を共有する町ぐるみ農業
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテランの勘頼みで収量がばらつく
- 新しく入った人に栽培のコツを伝えにくい
- 天候次第で出来が大きく変わって困る
どのようなAIの取り組み?
圃場の環境データをクラウドで解析する農業AI/IoTソリューションで、町内30戸の栽培管理をデータに基づく形へ移行させた取り組み
業種
施設・露地園芸農業(農業)
取り組み領域
栽培管理/生産現場
使ったAI
e-kakashi(農業AI/IoTソリューション)
主な成果
導入先ファームでパプリカの年間出荷量が約4トンから約8トンへ倍増する見込み
鹿児島県南種子町では、農業の担い手の高齢化や人手不足に加え、経験や勘に頼った栽培管理が収量と品質のばらつきを生んでいました。そこで採用されたのが、グリーン株式会社が開発・提供する農業AI/IoTソリューション「e-kakashi」です。圃場に置いたセンサーで温度・湿度・日射量などを測り、クラウド上で解析して栽培判断を支えます。データを畑からクラウドへ送るIoTゲートウェイは東京エレクトロン デバイス(TED)が提供しており、同社のパートナーであるシーズテクノロジーが運営する「シーズファーム」での導入が町への展開のきっかけとなりました。2025年7月に24戸、同年9月にカボチャ農家6戸が加わり、計30台が稼働しています。シーズファームではパプリカの年間出荷量が約4トンから約8トンへ倍増する見込みです。
出典:e-kakashi 発行元:グリーン株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
南種子町が抱えていたのは、高齢化と人手不足、そして経験や勘に依存した栽培管理による収量・品質のばらつきでした。気象条件の変化も、その振れ幅をさらに大きくしていました。
編集部の見立てでは、困りごとの核心は「人が足りない」ことそのものより、栽培の判断基準が個々の農家の頭の中にしかなく、他の人と比べたり引き継いだりできない状態にあったのではないでしょうか。判断の根拠が言葉やデータになっていなければ、ベテランが減るほど地域全体の収量が不安定になり、新しく就農した人も手探りを続けるしかありません。天候が例年どおりに動かなくなると、過去の経験則そのものが当てにしにくくなる点も、問題を深くしていたと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
一つめの要因は、圃場の温度・湿度・日射量といった環境データを共通の「ものさし」として置いたことにあります。経験の差がある人同士でも、同じ数値を見ながら話せば判断のすり合わせが可能になります。シーズファームで経験値の異なるメンバー間でも判断基準を共有できるようになったという点は、AIの予測精度以上に、判断の土台をそろえる設計が効いたことを示していると編集部は読みます。
二つめは、データを確実に届ける足回りを別の専門企業が担う役割分担です。畑という電源や通信が不安定になりがちな環境では、センサーが止まればクラウドの解析は成り立ちません。IoTゲートウェイを提供するTEDが、製品化の段階からグリーンと共同で検証・技術支援を重ねてきた構図は、解析と通信の信頼性を切り分けて磨いた例と見ることができます。
三つめは、1か所の成功を起点に地域へ広げた段階的な進め方です。シーズファームという身近な実例があったからこそ、行政・企業・生産者が同じ方向を向きやすくなったのではないでしょうか。24戸から始め、2か月後にカボチャ農家を加えた順序も、作物の違いを見ながら範囲を広げる慎重さの表れと考えられます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
導入先のシーズファームでは、パプリカの年間出荷量が栽培初年度(2024年度)の約4トンから、2025年度には約8トンへ倍増する見込みです。気象の影響を抑えた収量の安定や品質の向上、熟練農家と新規就農者の栽培結果の平準化も成果として挙げられています。町の担当課長は、一部の圃場ですでに収量や品質の改善が確認されているとしたうえで、町全体でのデータ共有による生産性向上と若い担い手の育成に期待を寄せています。さらに平山小学校では環境データを題材にしたICT学習が行われ、地域の栽培知見を学びの場へ還元する動きも生まれています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、成果が温度や湿度、時間といった測れる環境条件に左右されやすく、しかも同じ作業を複数の人や拠点が担っている現場です。農業に限らず、発酵や乾燥のように環境が品質を決める工程では、数値で判断をそろえる発想がそのまま生きるかもしれません。今回のように、まず1か所で成果を示してから周囲へ広げる順番も参考になります。
一方で、品質を左右する要因が環境データでは捉えにくい場合、たとえば作業の手つきや素材の見極めが中心の工程では、センサーを置いても判断の共有にはつながりにくいでしょう。また、現場に安定した通信や設置スペースを確保できなければ、データが途切れて比較の土台が崩れます。今回の事例で通信機器の信頼性に専門企業が関わっている点は、軽く見ないほうがよい部分です。
まずは、自分たちの現場で「出来がよかった日」と「悪かった日」に、気温や湿度などの条件がどう違ったかを一度記録して並べてみてはどうでしょうか。
この事例は2025年7月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:機械・設備・位置
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
グリーン株式会社
「科学とイノベーションの力で自然とヒトをつなぎ笑顔を創造する」を掲げ、農業AI/IoTソリューション「e-kakashi」を開発・提供。圃場の環境データと栽培知見を組み合わせたクラウドサービスで、科学的根拠に基づく栽培を支援している。IoTゲートウェイは東京エレクトロン デバイス株式会社が提供。
鹿児島県南種子町
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