実施 2026.03 ・ 更新 2026.10.02
衛星データ×AIで作付け確認を絞り込み、時間外勤務を約7割削減した四日市市の運用
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 申請内容と現場の突き合わせが大変
- 炎天下の現地確認が負担
- 全件を見に行く確認作業を減らしたい
どのようなAIの取り組み?
衛星データとAIによる作付け判定で現地確認の対象を絞り込み、繁忙期の時間外勤務を約7割削減したAI取り組み
業種
地方自治体(公共・公益事業)
取り組み領域
農業行政/作付け確認業務
使ったAI
作付け調査支援システム「デタバ」(衛星データ×AI)
主な成果
繁忙期(6〜8月)の時間外勤務を導入前比で約7割削減
三重県四日市市の農水振興課は、農業者が毎年提出する営農計画書と、実際に水田で育っている作物が一致しているかを確かめる作付け確認業務に、サグリ株式会社が提供する衛星データ×AIの作付け調査支援システム「デタバ」を取り入れました。従来は立て札の発行や紙の地図を使った目視確認に頼っていましたが、導入後はデタバが算出する「乖離率」をもとに、申請と現地の食い違いが疑われる圃場だけを現地で確認する運用へ切り替えています。判定の目安とする「乖離率40%」は、前年度の実証実験で得た目視結果との比較から定めました。あわせて地元説明会などの関連業務も見直し、6月〜8月の繁忙期における時間外勤務は導入前より約7割減っています。
出典:衛星データ×AIで炎天下の目視確認をなくす ― 都市近郊農業のまち・四日市市の作付け確認DX – サグリ株式会社 発行元:サグリ株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
四日市市の作付け確認は国の交付金の元データになるため、正確さが欠かせない業務です。導入前は、転作作物の確認を地域の農業者に目視で依頼し、麦や大豆については市職員が紙の地図を持って一筆ごとに現地を回っていました。高齢化の進む農業者にとっては夏の炎天下での作業が重く、職員側も印刷物の準備や回収、聞き取り、データ入力に時間を取られていました。
編集部の見立てでは、負担の根っこは作業量の多さそのものより、「すべての圃場を同じ重さで確かめる」という前提にあったと考えられます。大半の圃場は申請どおりに作付けされているはずなのに、疑わしいものとそうでないものを見分ける手段がなかったため、全件を人の目で確認するしかなかった。解くべき課題は「確認の自動化」ではなく「確認すべき場所の見極め」だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
AIの判定結果を最終的な答えではなく、現地確認の優先順位をつけるための「ふるい」として位置づけた設計が、運用を成り立たせた最大の要因と考えられます。担当者自身が、AIの判定は必ずしも正しいとは限らないと明言し、乖離率の高い圃場だけを人が確かめる形にしています。交付金に関わる業務で精度の不安をゼロにするのは難しいものの、最終判断を人に残すことで、AIの誤りがそのまま結果に反映される事態を避けつつ、確認件数を減らす効果だけを取り出せる構造になっています。
もう一つ見逃せないのは、「乖離率40%」という線引きを、実証実験で得た農業者の目視結果とAI判定のズレを検証したうえで決めている点です。しきい値をベンダー任せや勘で決めず、自分たちの地域の実データに照らして設定したことで、現場が数字に納得したうえで運用に乗せられたと推察されます。実証の段階で目視との精度差が大きくないことを確かめていたことも、市内全域で見積もると費用が膨らんだドローン案から方針を切り替える判断を後押ししました。
さらに、ツールの導入に合わせて地元説明会の開催などの周辺業務まで見直したことが効いていると考えられます。確認方法だけを置き換えても、それを前提にした説明や段取りが旧来のままでは手間は残ります。業務プロセス全体を組み替える前提で臨んだことが、ツール単体の効果を超えた省力化につながったのではないでしょうか。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
現地確認を乖離率の高い圃場に絞ったことで、交付金対象の麦・大豆の作付圃場すべてを回っていた頃に比べ、業務は大きく省力化されています。説明会などの業務見直しと合わせ、繁忙期の6月〜8月の時間外勤務時間は導入前より約7割減りました。地域の農業者からも負担が減って助かったという声が寄せられています。今後については、既存の水田台帳システムとのデータ連携による照合作業の削減や、播種・収穫の時期に合わせた衛星データ取得時期の調整による精度向上が期待として挙がっており、サグリは台帳管理システム事業者との連携を進めています。
うちでも使える?
この取り組みが応用しやすいのは、「申請や計画の内容と、現場の実態が合っているか」を広い範囲で定期的に確かめる業務です。多くは問題がなく、一部だけに食い違いが潜んでいるという構造であれば、AIで疑わしいものを浮かび上がらせ、人は残りを確かめる分担が成り立ちやすいでしょう。上空から見て状態を判別できる対象であることも条件になります。
一方で、衛星から見分けにくい対象、たとえば屋根のあるハウス内の作物や、生育初期で判別が難しい時期の確認には、そのまま当てはめにくいと考えられます。四日市市でも取得時期の工夫で精度を上げる余地が語られており、対象の作物や季節によって精度が揺れる点は見込んでおく必要があります。また、過去に人が確認した結果がなければ、しきい値を自分たちで検証する手がかりがありません。
まずは昨年度の現地確認記録を開き、実際に申請と食い違っていた圃場が全体の何割だったかを数えてみてはどうでしょう。その割合が小さいほど、絞り込み型の運用に切り替える余地は大きいはずです。
この事例は2026年3月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:画像・動画・3D
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
サグリ株式会社
衛星データ×AIの作付け調査支援システム「デタバ」を提供する企業。台帳管理システム事業者との連携を進めている。
三重県四日市市
出典・参考情報
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