実施 2025.02 ・ 更新 2026.09.29
シフト作成の自動化と人員計画の平準化を担うAI、花王の物流センター全44拠点へ
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- シフト作成に毎回まる一日かかる
- ベテランの勘に頼った人員配置
- 忙しい日と暇な日の人数差が大きい
どのようなAIの取り組み?
数理最適化のAIで勤務シフトを自動作成し、倉庫の人員計画の平準化に取り組んだ事例
業種
物流センター運営(運輸・物流)
取り組み領域
倉庫の人員計画・勤務シフト作成
使ったAI
数理最適化AI(SaaS型シフト最適化)
主な成果
全44拠点に導入完了、1日あたり最大70時間の人時削減を試算
パナソニック コネクトは、倉庫業務の標準化と人員計画の最適化を狙うSaaS型の業務アプリケーション「CYTIS Shift for Logistics」の提供を開始し、花王のロジスティクスセンター全44拠点への導入が完了しました。この仕組みでは、数理最適化と呼ばれる手法のAIが、計画された入出荷物量の予測データ、作業ごとの生産性や順序性、作業にあてられる最大・最小人数といった業務上の制約、さらに従業員一人ひとりの勤務条件や保有スキルまでを同時に踏まえ、人員配置と勤務シフトを自動で組み立てます。導入に際しては、提供側が現場の作業の種類と内容を定義し可視化する形で、倉庫業務の標準化を支援しました。人時やシフト作成時間に関する効果は、実証結果をもとにした試算・見込みとして示されている段階です。
出典:シフト最適化ソリューション「CYTIS Shift for Logistics」を提供開始 | 企業・法人向けソリューション | 製品・サービス | プレスリリース | Panasonic Newsroom Japan : パナソニック ニュースルーム ジャパン 発行元:パナソニック コネクト株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
物流業界では慢性的な人手不足に加えて人件費や物流コストの高騰が進み、倉庫運営をどう効率化するかが共通の課題になっています。花王のロジスティクスセンターでも、ベテラン社員に頼ることなく現場を効率的に運営できるインフラを整え、運営を安定させることが急務でした。従業員ごとにスキルも担当業務も勤務条件も異なるため、複雑化する現場の状況を正確に把握すること自体が難しく、作業計画やシフト作成といった間接的な業務に時間が取られる状態が、生産性や利益率を押し下げる要因になっていました。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は、シフト表を作る手間の大きさそのものではなく、現場の状態を誰もが同じ基準で測れる「ものさし」が置かれていなかった点にあります。どの作業にどれだけの人と時間が必要かという基準が特定の社員の経験の中にしか存在しなければ、計画は毎回その人の判断へ戻り、他の人が検証することも引き継ぐこともできません。
どうやって、うまくいったのか
作業を定義して可視化し、標準値を置いてから自動化へ進むという順序の立て方が、この取り組みの土台になっています。パナソニック コネクトは、現場の作業を可視化して作業ごとの標準値をものさしとして設定し、実作業とのギャップの原因を特定して改善を繰り返すインダストリアル・エンジニアリング(IE、生産や事務作業の計画・仕組みを科学的に組み立てる工程管理の技術)を強みとしており、導入にあたってはこの知見を用いて作業の種類や内容を明確に定義し、倉庫業務の標準化を支援しました。最適化の計算は、作業量と必要人数を数値で言い表せて初めて動くものですから、標準化を先に片づける段取りが、AIを使える状態そのものを作ったと考えられます。
条件を削らずに抱え込んだ設計も、実運用に耐えるための要でしょう。入出荷物量の予測データと作業の生産性から必要人員を算出したうえで、作業の順序性や人数の上限・下限といった業務上の制約を反映し、さらに出勤可能な日時や曜日、希望休暇日、雇用区分、作業可能な業務、熟練レベルまでを同時に満たす配置を探しています。現場のシフトが崩れるのは、たいてい「例外的な事情」が計算の外に置かれるからで、それらを制約として最初から式の中に入れてしまう割り切りが、机上の計画で終わらせない鍵になったのではないでしょうか。
目的を「シフト表を早く作ること」ではなく「業務量の平準化」に据えた点も見逃せません。過剰なバッファを持たずに平準化された人数で作業を回し、最大ピーク時の人員を抑えることに狙いを置いているため、自動化のゴールが作成工数の削減だけに閉じず、人員計画そのものの質に向かっています。そしてこの仕組みをSaaS型のアプリケーションとして提供する形にしたことで、拠点ごとに個別のシステムを組み上げずとも、多数の拠点へ同じ運営の型を広げられる構造になっています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
花王のロジスティクスセンターでは全44拠点への導入が完了し、シフト作成時間の短縮に加えて、最大ピーク人員を抑えた人員計画によって倉庫業務に必要な人時の削減に貢献できる見込みとされています。想定効果としては、100人規模の倉庫で省人化を前提とした人数をもとに試算した場合、倉庫全体の人時で1日あたり最大70時間の削減が可能という結果が示されました。シフト作成についても、1チーム30名あたりで従来1日かかっていた作業を7時間に短縮し、約70%削減が可能との試算が出ています(小売業における実績に基づく)。導入前の実証では、約10人規模のエリア作業員に対して約11〜18%の人時削減の見通しが得られており、いずれも実績確定ではなく試算・見込みの段階です。
うちでも使える?
この型が効きやすいのは、作業の種類をはっきり切り分けられて、日々の作業量を事前にある程度読める職場です。入出荷物量のように先に数字が立つ指標があり、一人ひとりの勤務条件やできる作業を一覧にできるなら、倉庫に限らず店舗や工場、コールセンターの人員計画にも考え方を移しやすいでしょう。
逆に、当日の飛び込み対応が業務の大半を占めて作業量が事前に読めない職場や、作業の切れ目が曖昧で「一人がなんとなく全部を見る」形になっている職場では、標準値を置く段階で手が止まります。長年の人間関係や口約束で成り立っているシフトを、条件として書き出せるかどうかも分かれ目になります。まずは直近1か月のシフト表と実際の作業実績を並べ、誰がどの作業に何時間ついたのかを一度突き合わせてみてはいかがでしょうか。ここで数字が合わないなら、その差こそが最初に手をつける場所です。
この事例は2025年2月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
パナソニック コネクト株式会社
2022年4月1日、パナソニックグループの事業会社制への移行に伴い発足したB2Bソリューションの中核を担う事業会社。売上高は1兆2,028億円(2023年度)。製造業100年の知見とソフトウェアを組み合わせたソリューションや、差別化されたハードウェアの提供を通じて、サプライチェーン、公共サービス、生活インフラ、エンターテインメント分野の顧客の「現場」をイノベートすることに取り組む。
花王株式会社
出典・参考情報
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