実施 2025.04 ・ 更新 2026.09.29
西濃運輸、ドライブレコーダー映像のAI解析で危険運転を自動検知し約1万台へ展開
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 録画映像のチェックに時間を取られている
- 確認する人によって判断がばらつく
- 目視の見落としが不安
どのようなAIの取り組み?
ドライブレコーダーに記録された映像をAIで解析し、危険運転の自動検知によって安全運転指導の確認作業を効率化したAI取り組み
業種
貨物運送(運輸・物流)
取り組み領域
安全運転管理/ドライブレコーダー映像の確認
使ったAI
ドラレコAI解析システム「アクレス」(独自VLMによる動画解析AI)
主な成果
トライアルでドライバー1人あたり月30分以上の時間短縮
西濃運輸は、車両に搭載したドライブレコーダーの映像を安全管理担当者が目視で確認し、ドライバーへの運転指導に生かす運用を続けてきました。この確認作業にAIを組み合わせたのが今回の取り組みです。米国デラウェア州に本社を置くティーティスが開発したAI「アクレス」に録画映像を解析させ、シートベルトの着用状況、わき見、居眠り運転、姿勢の乱れといった危険な運転を自動で拾い上げる仕組みを取り入れました。まず2店所でトライアルを行い、解析の質と現場での使い勝手を確かめたうえで、国内全拠点・約1万台規模への展開へ進んでいます。4月から順次導入が始まり、6月に全188拠点で完了する計画です。
出典:西濃運輸がAIを活用し、安全運転管理の高度化と効率化を推進 | ティーティス合同会社のプレスリリース 発行元:ティーティス合同会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
運転実績のチェックは、これまで人の目に委ねられてきました。映像を一本ずつ確認する作業には相当な労力がかかり、しかもチェックの精度をどう平準化するかという課題が残っていた、というのが導入前の状況です。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は作業量の多さそのものではなく、指導の土台となる判断基準が担当者ごとに揺れてしまう点にあったのではないでしょうか。安全指導は、指摘された側が納得して初めて行動が変わります。誰が見ても同じ基準で拾われるという担保がなければ、指摘の重みは人によって変わり、指導そのものの説得力が弱まります。労力の問題と精度の問題が同じ文脈で語られているのは、この二つが表裏一体だったからでしょう。見る量が増えるほど集中力は続かず、基準は緩みやすくなる。
どうやって、うまくいったのか
注目したいのは、すでに走っている車両の記録環境に手を入れない設計です。ドライブレコーダーを入れ替えず、システムのインストールも前提とせず、記録済みの映像を解析する側で受け止める構成がとられています。多数の車両を抱える事業者にとって、機器の交換は費用も工数も現場の混乱も一度に発生させる重い作業であり、そこを避けられるかどうかは導入の可否そのものを左右します。映像という既存の資産を起点に組み立てたこの切り分けが、全国規模の横展開を現実的な選択肢にしたと考えられます。
解析の土台には、独自に構築したVLM(大規模視覚言語モデル。映像の内容を言葉の意味と結び付けて理解するAI)と、2000時間分の商業車両の運転映像が据えられています。一般的な走行シーンではなく商用車の運転を集めた映像で学習させている点は、業務の文脈によって判断の当たり外れが変わる領域では効き方が違ってきます。検知の対象も、シートベルトの着用状況、わき見、居眠り、姿勢制御といった、映像に映る具体的な行動に置かれました。運転の巧拙という曖昧な評価には踏み込まず、観察できる事実の検出に役割を限定したことが、現場が結果を受け入れやすい構図をつくったのではないでしょうか。
進め方も、いきなり全社に広げるのではなく2店所での試行から入り、解析の質と担当者の評価を確かめる順序を踏んでいます。さらに、発進時の5点確認や後退時の6点確認といった自社の安全指導の型を学習させ、機能を強化していく方針が示されています。汎用の危険検知で止めず、その会社が積み上げてきた指導基準の側にAIを寄せていく発想は、現場の言葉と検知結果のずれを埋める手立てとして筋が通っています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
2店所でのトライアルでは、ドライバー1人あたり月間で少なくとも30分の時間短縮につながりました。安全管理担当者からは、取りこぼしや誤検知が発生していないこと、人手では気づかない点の指摘があったことなど、精度面を評価する声も出ています。これを受けて国内全拠点・約1万台への導入計画が進み、4月から順次開始、6月に全188拠点で完了する見通しです。今後はセイノー輸送グループ全体への拡大に加え、オープン・パブリック・プラットフォーム(O.P.P.)の考え方を取り入れ、物流業界全体で使える仕組みへ育てることも検討されています。
うちでも使える?
応用が利きそうなのは、映像や音声といった記録がすでに残っていて、その確認を人の目や耳に頼っている業務です。記録機器を入れ替えずに解析だけを後から足せる形なら、対象の台数や拠点が多い組織ほど、確認の負担が減る余地は大きくなります。判断の対象が「映っているかどうか」で言い切れる行動であることも、相性を左右する条件です。
反対に難しいのは、見極めたい事象が映像に形として現れない場合でしょう。たとえば同じ行動でも、その日の道路事情や積荷の状況を踏まえて是非が変わるような判断は、映像の検出だけでは結論が出ません。検知した先に、誰がどう伝えて行動を変えてもらうのかという指導の流れが用意されていなければ、検知件数が増えるだけで終わる懸念もあります。まずは、毎月必ず誰かが目を通している記録を一つ選び、その人が何を見て良し悪しを判断しているのかを、確認の場に同席して書き留めてみてはいかがでしょうか。AIに任せられる線引きは、そこから見えてきます。
この事例は2025年4月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:画像・動画・3D
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:動画AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
ティーティス合同会社(Teatis Inc.)
「人命を救うAIで人が傷つかない交通を実現する」をミッションに、AI技術を活用して日米で事業を展開。NVIDIA Inception Programの認定パートナーであり、Samsara Inc.との業務提携等を通じて、実際の運転学習データを用いた高精度な自動検知を実現している。ドラレコAI解析システム「アクレス」を開発・提供。
西濃運輸株式会社
出典・参考情報
西濃運輸がAIを活用し、安全運転管理の高度化と効率化を推進 | ティーティス合同会社のプレスリリース
発行元:ティーティス合同会社
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