実施 2026.06 ・ 更新 2026.09.29
手入力の負担をAIへ、運送業の書類処理で年7,680時間の削減を見込む実証実験
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 紙やFAXの書類の転記に追われている
- 取引先ごとに書式が違い手入力が大変
- 入力ミスや確認漏れをなくしたい
どのようなAIの取り組み?
大規模言語モデルを使った文字読み取り(LLM-OCR)で、運送業の書式がそろわない帳票の自動データ化を検証し、本開発へ進んだAI取り組み
業種
貨物運送業(運輸・物流)
取り組み領域
帳票処理・データ入力(事務・配車業務)
使ったAI
LLM-OCR(大規模言語モデルを使った帳票読み取り)
主な成果
年間7,680時間・4名分の省人化を見込む(PoC試算)
大阪市に本社を置くMarkDoorは、愛媛県伊予郡松前町の神山運輸に対し、大規模言語モデルを組み合わせた文字読み取りの仕組み(LLM-OCR)による帳票の自動データ化に取り組んでいます。対象となったのは、注文書、配車依頼書、請求書といった、取引先ごとに書式のそろわない書類です。紙やPDFで受け取った書類を自動で読み取り、そのまま業務で使えるデータへ変換できるかどうかを、神山運輸の実業務で扱う帳票を使った実証(PoC、小規模な試験導入)で検証しました。読み取りと項目整備の精度、削減できる工数の年間試算が得られたことを受け、2026年6月時点では実運用に向けた本開発の段階へ移っています。
出典:株式会社Markdoorの自動化システム(LLM-OCR)、省人化・工数削減を見込み、神山運輸へ本導入開始 | 株式会社Mark Doorのプレスリリース 発行元:株式会社MarkDoor
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
運輸・物流の現場では、請求書や見積書、注文書、配車依頼書が紙やFAX、PDFで届き、その中身を人が目で確かめて転記し、照合する運用が残っています。取引先ごとに書式が違い、項目の位置や言葉の表記もそろわないため、数百件から数千件の書類を扱う現場では、入力そのものが担当者の重荷になり、入力ミスや確認漏れ、処理の遅れを招く要因になっていました。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は書類の量ではなく、書式が取引先の数だけ存在するという不揃いさのほうにあったのではないでしょうか。純粋に量の問題であれば、人を増やすか入力の型を決めれば対処できます。しかし相手の書式に合わせて毎回読み解く作業は、担当者の慣れに寄りかかるしかなく、そこが詰まりの正体だったと考えられます。神山運輸が、お客様によって異なる不定形な帳票にも対応できる仕組みを探していた点にも、その事情がにじんでいます。
どうやって、うまくいったのか
まず効いているのは、読み取りの難所を「文字を当てること」ではなく「レイアウトの違いと表記ゆれを解釈すること」に置き直した設計です。従来のOCRは、決まった位置に決まった項目がある前提で精度が出る一方、取引先ごとに様式が変わる帳票では途端に手が止まります。そこへ文脈を読める大規模言語モデルを組み合わせ、レイアウトが異なる帳票や表記の揺れた書類にも柔軟に対応させる、という技術選択が取られています。不定形であることを例外として扱わず、最初から前提に据えた点が分かれ目だったと見ています。
次に、出口を「読み取れたかどうか」ではなく「業務データとして使えるか」に置いた線引きが、実務との距離を縮めています。読み取った情報を業務で活用しやすい形に整備する工程、すなわち取引先ごとにばらついた表記を社内の呼び方へそろえるマスタ正規化までを、仕組みの守備範囲に含めている点です。ここを人に残せば、結局は担当者が画面を見比べる作業が残ります。精度の指標を読み取りと正規化の二つに分けて測っている姿勢からも、この工程を独立した課題として扱っていることが読み取れます。
三つめは、各企業の業務フローや業界特有の帳票運用に合わせて最適化するという作り込み方と、実業務の帳票で検証してから本開発へ進む段取りの組み合わせです。汎用の読み取り機能をそのまま当てるのではなく、その会社の運用に寄せて調整する前提であれば、現場の書式が特殊であることは障害になりません。加えて、検証を実データで行っておけば、本開発で初めて例外的な帳票に出くわす事態を減らせます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
PoCでは、データの読み取り精度が約95%、取引先ごとの表記をそろえるマスタ正規化の精度が90%以上という結果になりました。これを年間に置き換えた試算では、4名分・7,680時間の省人化が見込める水準です。あわせて、手入力作業の削減にともなうヒューマンエラーの抑制と処理スピードの向上も確認されています。神山運輸の担当者は、事務作業の負担が軽くなることで、配車を担う社員が配車や営業といった本来の業務へ時間を割けるようにしたいという考えを示しています。数値はいずれも試算段階のものであり、現在は実運用に向けた本開発が進行中です。
うちでも使える?
応用が効きやすいのは、取引先ごとに様式の違う書類が紙・FAX・PDFで日々届き、その中身を決まったシステムへ打ち直している業務です。運送業に限らず、卸売の受発注や建設の見積・注文、製造の検収書類など、書式の統一を取引先に強いることが難しい関係性のところほど、この考え方は当てはまります。
一方で、読み取った後に照合する先が社内に整っていない場合は、期待した効果が出にくくなります。取引先名や品目名の正式な一覧が部署ごとにばらばらのままだと、AIが文字を正しく読めても、どの呼び方へそろえるかを決められず、結局は人の確認が残るためです。また、書類の内容そのものに担当者の裁量(この依頼は例外扱いにする、といった判断)が絡む業務では、読み取りだけを置き換えても工数は思ったほど減りません。
小さく試すなら、直近に届いた注文書を数枚そのまま生成AIに読み取らせ、どの項目で間違えるかを見てみてはいかがでしょうか。つまずいた項目こそが、自社の帳票の癖そのものです。
この事例は2026年6月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:帳票・紙の資料
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
株式会社MarkDoor
東京大学・海外大学のPh.D取得者や国家研究機関の助教経験者等で構成される、AI・数理最適化のシステム開発会社。AI/数理最適化を活用した受託開発業と、製造業特化のロールアップM&A事業の二事業を軸とする。代表取締役は松田光弘氏。
神山運輸株式会社
出典・参考情報
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