実施 2024.12 ・ 更新 2026.09.27
ピッキング生産性2.3倍、自律走行ロボットを選んだアパレル物流センターの判断
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 倉庫内の歩き回りに時間を取られている
- 小ロット出荷が増えて出荷が追いつかない
- 人を増やしても教育が追いつかない
どのようなAIの取り組み?
自律走行する協働ロボット(AMR)の活用で、物流センターのピッキング生産性を約2.3倍に高めた取り組み
業種
3PL・物流受託(運輸・物流)
取り組み領域
物流センターのピッキング作業
使ったAI
自律型協働ロボット「PEER 100」(AMR)
主な成果
ピッキング生産性が約2.3倍(62.5行/h→145行/h)に向上
千葉県成田市を拠点にアパレル向けの物流受託を手がける株式会社ファインプラスが、プロロジスパーク成田内の物流センターに、GROUND株式会社の自律型協働ロボット(AMR)「PEER 100」を20台入れました。国の物流効率化先進的実証事業費補助金を使い、2024年12月にテスト運用を開始、2025年1月から本格稼働へ移しています。狙いは、キャップアパレルの少量多品種化と高頻度出荷で膨らんだピッカーの歩行を減らすこと。数億円規模の自動倉庫や棚搬送型ロボット(GTP)ではなく、既存の現場をそのまま使える方式を選んだ点が特徴です。オンプレミスの買い取りモデルと既設Wi-Fiの活用でコストを抑え、稼働開始後も現場の声を反映したシステム開発と設定調整を重ねています。
出典:ファインプラス、AMR「PEER 100」導入でピッキング生産性が約2.3倍に向上 | GROUND株式会社のプレスリリース 発行元:GROUND株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
取り扱うキャップアパレルの商品構成が少量多品種へ振れ、店舗向けの出荷もEC運用に近い小ロット・高頻度へと変わったことで、作業者のピッキング歩行数が大きく増え、出荷がひっ迫していました。空港近隣という立地も効いていて、コロナ禍には確保できていた労働力が空港の活気の回復とともに流出し、優秀な人材ほど採りにくくなっています。繁忙期には時間雇用のサービスも使いましたが、膨大な商品と配置場所を覚えてもらう教育コストが膨らみ、人を増やしても生産性が安定しないという状態に陥っていました。
編集部の見立てでは、この現場の詰まりは人数の不足そのものではなく、生産性が「どれだけ現場に習熟しているか」に強く縛られていたことにあります。商品点数が増えるほど覚えるべきロケーションも増え、新しい人が戦力になるまでの時間が延びる。そこに人を足せば足すほど、教育の負荷が先に立ちはだかる構造です。
どうやって、うまくいったのか
投資の上限を先に決め、そこから実現手段を逆算した絞り込みが、この取り組みの起点になっています。数億円規模の投資を要する自動倉庫やGTPは、コスト面でも柔軟性の面でも早い段階で候補から外され、費用対効果を最優先する「実効性の高い投資」という基準でAMRが選ばれました。誘導体や専用棚を必要とせず、SLAMと呼ばれる自己位置推定の技術に、カメラとレーザーによる障害物回避を組み合わせて走るAMRは、既存の保管レイアウトを組み替えずに導入できます。理想形から降りてきて手段を選ぶのではなく、今日の現場に置けるかどうかを先に問う設計が、着手のハードルを下げたと考えられます。
選定の決め手が、現場で使う75Lオリコンを載せて運用できる筐体サイズだったという点も見逃せません。機械に合わせて容器や作業手順を作り替えるのではなく、すでに回っている運用の側に機械を合わせる発想です。ここが合わないと、導入と同時に容器の入れ替えや保管方法の見直しまで連鎖し、投資額も現場の負担も膨らみます。
稼働後の作り込みを前提に置いた進め方も、短期で成果が出た理由に数えられるでしょう。運用開始後に現場管理者やスタッフの意見を吸い上げ、使いやすさに直結するシステム開発や設定調整を素早く繰り返す体制が組まれています。ランニングコストを抑えるオンプレミス・買い取りモデルを選び、他社製品では難しかった既設Wi-Fi環境を生かせたことも、追加投資を最小限にとどめる方向に働いています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
ピッカーの生産性は、導入前のKPI値である62.5行/hに対し、2025年2月時点で平均145行/hに達し、目標値の100行/hを大きく上回って約2.3倍となりました。ピッキング作業の総労働時間も、従来の月4,800時間に対して2025年1月実績で月2,685.3時間となり、約44%削減されています(PEER 100の使用を前提とした人員計画の見直しを含む数値です)。ピッキングから梱包までの作業終了時刻は17時30分から16時へ1時間30分早まり、トラックへの貨物引渡し完了も平均18時から17時30分へ繰り上がって、荷待ち・荷役時間の短縮にもつながりました。ファインプラスは稼働エリアを1フロア全体へ広げる検討や、他拠点での活用・追加購入の検討を進めています。
うちでも使える?
参考になりやすいのは、出荷が小ロット・高頻度で、作業者が広い保管エリアを歩き回っている現場です。とくに、保管レイアウトを変えずに済み、現場で使っている容器がそのまま載る機種を選べるなら、初期投資を抑えたまま歩行時間だけを削りにいけます。今回のように、習熟度が生産性を左右していた現場ほど、移動という誰がやっても同じ作業を機械側へ寄せる効果は出やすいでしょう。
一方で、1日の出荷行数が少なく歩行距離も短い現場では、20台規模の設備投資を回収しきれない可能性があります。通路幅や床の状態、無線環境が走行に向かない場合は付帯工事が発生しますし、大型品や重量物が中心でオリコン運用に乗らない商品構成も、そのままでは当てはまりません。稼働後に設定を詰めていく余地を残せるか、現場の意見を出せる担当者がいるかも、成果の出方を分ける条件になります。
判断材料を得る最初の一歩としては、繁忙日の1時間だけ、ピッカー1人の歩数と実際に拾った行数を並べて記録してみる。移動が何割を占めているかが見えれば、機械に任せる価値があるかの見当がつきます。
この事例は2024年12月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
GROUND株式会社
AIやロボットなどの先端技術を活用した物流ソリューションを開発・提供するLogiTech企業。自社開発の物流施設統合管理・最適化システム「GWES」や、自律型協働ロボット「PEER」シリーズをはじめとするロボティクスソリューションを提供し、大手物流事業者や製造業の物流施設での導入が進んでいる。資本金1億円(2024年6月末)。
株式会社ファインプラス
出典・参考情報
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