実施 2024.07 ・ 更新 2026.09.26
コープさっぽろ、AI需要予測で配送を1便に集約し積載率93%へ
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 特定の曜日だけ荷物が集中する
- トラックの積載率が上がらない
- ドライバー不足で配送が回らない
どのようなAIの取り組み?
小売側の需要予測データを使って曜日ごとの発注量をならし、賞味期限の短い食品の店舗配送を2便から1便へ集約したAI取り組み
業種
生活協同組合・食品小売(小売・流通)
取り組み領域
店舗発注・在庫管理/店舗配送
使ったAI
AI需要予測型の自動発注サービス「sinops-CLOUD」と平準化ロジック「DeCM-PF」
主な成果
積載率が93%へ向上(実施前比58ポイント改善)
北海道内で100以上の店舗と宅配を展開する生活協同組合コープさっぽろと、その物流を担う北海道ロジサービスが、納豆や豆腐、乳製品といった賞味期限の短い食品(日配品)の店舗配送を見直しました。軸になったのは、コープさっぽろが2021年から使っている需要予測型の自動発注サービス「sinops-CLOUD」と、シノプスと伊藤忠商事が共同展開する食品バリューチェーン最適化サービス「DeCM-PF」の平準化ロジックを組み合わせた発注の制御です。直近7日間の需要予測をもとに、商品の賞味期限と店舗の棚のキャパシティを踏まえながら、曜日ごとの納品量ができるだけ一定になるよう発注数を自動で調整しています。2024年7月から荷量の平準化が動き、日々の物量の山が抑えられた結果、2便制だった日配配送は1便へ集約されました。この一連の構造改革は、第1回日本物流大賞の大賞に選ばれています。
出典:コープさっぽろ、日本物流大賞受賞の「荷量の平準化」を支えた食品バリューチェーン最適化サービス「DeCM-PF」導入を正式発表 – 株式会社シノプス 発行元:株式会社シノプス
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
製造メーカー、物流センター、店舗という各工程がそれぞれの都合を優先して動いていたため、配送スケジュールは前工程の制約に縛られていました。そこに店舗の特売や曜日による需要の振れが重なって配送が特定の日に集中し、1便目に収まらない荷物を運ぶ2便目は、平均積載率35%という状態が常態化していました。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は「トラックやドライバーが足りない」という量の不足ではなく、需要の波が上流でそのまま作られ、下流の物流だけがそれを吸収する構造にあったのではないでしょうか。積載率35%の2便は、波を運ぶためだけに走っていた便とも言えます。人手不足が進めば、物流側が不利益を飲み込んで支える「耐える物流」はいずれ成り立たなくなる。台数や人員をやりくりする範囲での改善では届かない性質の課題だったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
この取り組みで効いたのは、配送の組み方ではなく発注のしかたに手を入れた点だと考えられます。曜日ごとの荷量の波は、物流センターやトラックの側で発生しているわけではなく、店舗の発注という上流で作られています。直近7日間の需要予測を使い、曜日ごとの納品量が一定に近づくよう発注数を自動で調整する設計は、波が下流へ流れ出す前に抑え込む発想です。波の発生源まで戻って設計し直したことが、2便制という前提そのものを崩す条件になったと見ています。
平準化を、賞味期限と店舗の棚のキャパシティという制約の中で行っている点も見逃せません。納品量をならすだけなら計算は単純ですが、日持ちのしない食品を前倒しで納めれば売れ残りが増え、棚に収まらなければ現場が受け取れません。売り場が回る範囲を条件として組み込んだうえで数量を動かすやり方は、在庫を適切に保ちながら物量の山だけを削るという難しい両立を、実運用に乗せるための設計だったのでしょう。
土台に、2021年から運用されてきた需要予測型自動発注の仕組みがあったことも大きいはずです。予測の基盤をゼロから立ち上げるのではなく、すでに現場で回っている発注の流れに平準化ロジックを重ねる構成がとられています。さらに、荷量の平準化はシノプスと伊藤忠商事が共同展開するプラットフォーム側が担い、生まれた車両の余力時間を使った共同配送や運行ルートの最適化、製造工場側の生産集約は現場と関係事業者が担うという役割分担が敷かれました。仕組みが生んだ余力を誰がどう使うかまで決めてある構成が、改革を1便化だけで終わらせなかった要因ではないでしょうか。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
北海道ロジサービスの調べでは、積載率は実施前から58ポイント上がって93%に達し、労働時間は年間26,448時間、毎日トラック7台分を解放する規模で削減されています。CO2排出量も年間310トン減りました。物流効率の改善が、そのまま労働時間と環境負荷の軽減につながっている点が、この成果の特徴です。現場からは、需要予測システムとDeCM-PFの取り組みが効率化の推進力になったという評価が示されています。今後は定番品に加え、特売品や卸向けの発注へ仕組みを広げる準備が進められています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、曜日や催事によって需要にはっきりした波があり、その波の起点となる発注の権限を自社側が握っている業態です。販売実績が日次で貯まっていて、数日分の在庫を前後に動かせる余地があるほど、平準化の効果は出やすくなります。小売に限らず、注文の山谷が自社都合で生まれている卸や製造でも、考え方は移植できるはずです。
一方で、納品日が取引先の都合で決まっていて自社では動かせない場合や、当日生産・当日消費に近く在庫を前倒しできない商材では、同じやり方はそのまま効きません。店舗や倉庫に一時的な保管余力がまったくない場合も、ならした分を受け止められず現場が詰まります。この事例が棚のキャパシティを条件に組み込んでいるのは、その難しさの裏返しです。
まず試すなら、直近1、2か月の曜日別の納品量を並べ、山の日と谷の日で何倍の差があるかを見るところから。差が大きいほど、平準化の余地は残っています。
この事例は2024年7月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
株式会社シノプス
「世界中の無駄を10%削減する」をビジョンに掲げ、需要予測型自動発注サービス「sinops」を開発・販売するソフトウェアメーカー。日配食品や惣菜といった賞味期限が短く需要予測が難しいカテゴリーのシステム化に成功し、多くの食品小売企業に採用されている。伊藤忠商事と共同で食品バリューチェーン最適化サービス「DeCM-PF」を展開。東証グロース上場(証券コード:4428)。
生活協同組合コープさっぽろ、北海道ロジサービス株式会社
出典・参考情報
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