実施 2025.05 ・ 更新 2026.09.25
需要予測AIと数理最適化で飲料の発注量をならす、キリンビバレッジの物流平準化
プロジェクト期間:2年 〜 3年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 取引先の発注量の波に振り回されている
- ドライバー不足で配送が組めない
- 取引先とデータをつなげたい
どのようなAIの取り組み?
需要予測AIと数理最適化を組み合わせ、メーカーから卸・小売までをつないだ物流の平準化に取り組んだ事例
業種
清涼飲料の製造・販売(製造業)
取り組み領域
サプライチェーン・物流の需給調整
使ったAI
需要予測AI(機械学習)と数理最適化
主な成果
自社のVMI拠点で使うシステムが立ち上がり、グループ全体への展開構想へ発展
飲料メーカーのキリンビバレッジが、AI・データサイエンスでDXを支援するJDSCと組み、2023年の声がけから約2年をかけて物流の平準化に取り組んできました。背景にあるのは、トラックドライバーの労働時間規制と人手不足、いわゆる2024年問題です。メーカー単独で積載率を上げても、発注担当者が欠品を恐れて需要予測の1.5倍、2倍の量を注文することで生じる物流の波までは抑えられません。そこでJDSCが提供する需要予測基盤 demand insight® をベースにカスタマイズし、需要予測AIと数理最適化を用いて、小売・卸・メーカーのデータをつなぐ仕組みの構想と実装を進めました。途中で対象を卸向けから、キリンビバレッジ自身が需要予測と在庫補充を担うVMI拠点へ切り替え、実データを用いた検証を重ねながら機能を固めています。
出典:【キリンビバレッジ株式会社 掛林正人様インタビュー】需要予測AIと数理最適化技術で、メーカーから小売までを巻き込んだ物流平準化を実現 | 共創ストーリー | 株式会社JDSC|AI・データサイエンスでDXを支援 発行元:株式会社JDSC
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
飲料は季節や天候によって物量が大きく振れる商材です。キリンビバレッジでは2024年問題を受けて積載率の向上などに取り組んできましたが、メーカーのオペレーションだけでは手の届かない領域が残っていました。発注担当者が欠品を恐れて多めに注文すると、店頭の実売とかけ離れた発注量が卸を経由してメーカーへ伝わり、物流の波が需要予測の1.5倍、2倍にまで膨らむことがあります。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は物量の多さではなく、変動を生んでいる意思決定が自社の外側にあった点にあります。予測の精度をどれだけ高めても、発注する側が安全のために上乗せを続ける限り、波そのものは消えません。自社の内側で削れる余地は先行して取り組んだ積載率改善でおおむね使い切っており、次の一手は取引先の発注行動に踏み込む以外になかった、という構図だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
ゼロから作らず、すでにあるベースをカスタマイズするという入り方が、この取り組みの推進力になったと考えられます。今回は前例のない仕組みであり、実現可能性が見えないとビジネスの構想が定まらず、構想が固まらないと開発にも入れないという鶏と卵の関係がありました。既存の需要予測基盤を土台に置く選び方は、構想に柔軟性が残る段階から手を動かし始められるため、この行き詰まりをほどく方向に働きます。初期段階で提供できる付加価値を仮定し、卸や小売を何社巻き込めるかのパターンごとに収支を試算する検討を並走させたことで、技術の見通しとビジネスの見通しを同じ場で詰められました。
対象を卸から自社のVMI(納入側が取引先の在庫を管理し補充する仕組み)拠点へ大きく切り替えた判断も、実装を前に進めるうえで大きかったはずです。障壁の高い相手を押し切るのではなく、自社が需要予測と在庫補充を直接担っている場所に的を絞り直したことで、使い手と作り手が同じ社内にそろいました。この切り替えが効いたのは開発のしやすさだけではありません。自分たちが使っているという事実は、経営陣への説明でも、のちに他社を誘う場面でも、机上の構想とは違う重みを持ちます。
初期版を早い段階で現場に触らせるユーザー検証の組み立ても、この規模の仕組みでは効きます。日次の発注内容の確認といったシンプルな機能から設計し、実際の業務担当者が日常業務と並行して実データで使う形にすれば、運用効率の悪さや足りない機能がその場で浮かび上がります。設計・開発側が発注画面や在庫の実務について直接質問を受けられる状態は、業務理解を早める近道でもありました。担当者が持つ実績ベースの感覚とPoCの結果にずれが出たときも、早くから現物を挟んでいたことで、互いのイメージをすり合わせて埋めることができています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2年の取り組みを通じて、キリンビバレッジがVMI拠点で実際に使うシステムが立ち上がり、実データを用いたユーザー検証を経て機能が強化されてきました。自社で使っているシステムとして自信を持って説明できるようになったことは、外部を巻き込む段階での材料になっています。公開されている定量的な効果の数値はありませんが、取り組みはグループ内物流の相談へと広がり、4月にキリングループロジスティクスへ物流DX推進部が立ち上がるなど、グループ全体への展開が構想されています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、自社の中の効率化をひととおりやり切ったうえで、変動の原因が取引先側の発注行動にあると見えている業務です。需要予測や在庫補充を自社が担っている拠点や取引条件が一部でもあるなら、そこを起点に小さく試し、手応えを確かめてから外へ広げる順番が取れます。既製の予測基盤を土台にできる領域かどうかも、立ち上がりの速さを左右します。
一方で、この事例は取引先を巻き込むことが平準化の前提になっている点に注意が必要です。実際、卸へのアプローチでは導入の障壁がクリアできず、対象の切り替えが必要になりました。相手にとっての利点を示せない段階で連携を持ちかけても、話はなかなか動きません。どのデータをどこまで渡すかという線引きや、運用の複雑さを引き受ける体制も、先に詰めておきたいところです。
まず試すなら、直近1か月分の取引先からの発注量と、自社の出荷実績や店頭の販売実績を並べてみてはどうでしょうか。どこで、どれくらい上振れが起きているのか。その振れ幅が数字で見えるだけでも、誰と何から話すべきかの当たりはつきます。
この事例は2025年5月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社JDSC
AI・データサイエンスでDXを支援する企業。需要予測基盤 demand insight® を提供し、需要予測やコンテナ組最適化による成果創出、複数企業を巻き込んだコンソーシアム型の取り組みなどの実績を持つ。
キリンビバレッジ株式会社
出典・参考情報
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