実施 2025.06 ・ 更新 2026.09.25
日本通運グループが内製した業務用生成AIアプリ、利用者が1年で約3倍に
プロジェクト期間:2年 〜 3年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 機密情報の漏えいが心配で生成AIを使えない
- ツールを入れたのに社員が使ってくれない
- ルーチンワークに時間を取られている
どのようなAIの取り組み?
要約・翻訳・情報検索などを対話形式で行える業務用の生成AIアプリを自社で開発し、グループ内での利用を広げたAI取り組み
業種
情報システム会社(運輸・物流)
取り組み領域
社内業務全般/情報システム部門
使ったAI
自社開発の業務用生成AIアプリ(GPT-4.1/o3)
主な成果
月間利用者が約8,700人となり前年同月比で約3倍
日本通運グループのシステム会社であるNX情報システムは、グループ社員が業務で使える生成AI搭載のWebアプリ「NX-Brain」を自社で開発し、2023年度から展開しています。要約、翻訳、アイデア出し、情報検索を自然な対話形式で行える一方、機密情報が外部に流出しない仕組みを前提に構築されており、独自のプリセットプロンプトやファイルの読み取り・出力といった業務ニーズに合わせた機能拡張ができる点も特長です。2025年1月から6月にかけては、WordやExcelの読み取り、指定したURLの内容を取り込んで質問に答える機能、GPT-4.1/o3モデルの導入、画像やExcelへの出力機能を実装。並行して2025年4月には日本通運本社各部の希望者を対象に生成AI基礎研修を行い、利用者へのeラーニング教育も継続しています。
出典:社員インタビュー01 アプリケーションデリバリ部 | NX情報システム採用サイト 発行元:NX情報システム
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
この会社がRPA(パソコン上の作業を自動化するソフトウェア)の開発に着手したのは2018年のことで、狙いは一貫して生産性の向上に置かれていました。自動化でルーチンワークにかかる時間を減らし、営業やマーケティングのような人にしかできない仕事へ時間を振り向ける。その発想は、のちの生成AIの取り組みにもそのまま引き継がれています。背景にあるのは、物流業界だけでなく日本全体が直面する少子高齢化と人口減少による労働力不足で、グループの事業継続に関わるテーマとして位置づけられています。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は「作業が多すぎる」という量の話ではなく、働き手が今後も減っていく前提のもとで、限られた時間をどの業務に配分するかという構造の問題だったのではないでしょうか。量の問題であれば人を増やせば解決しますが、人が増やせない前提に立つと、残す仕事と機械に渡す仕事を線引きし直すしかありません。RPAから生成AIへと手段が移っても目的が変わらなかったのは、そもそも解こうとしていた問いが道具ではなく配分にあったからだと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
最も効いたのは、利用者の反応を機能開発の優先順位に直結させた進め方だと考えられます。2025年4月の生成AI基礎研修では、スクリーンショットやWord・Excelの添付、PDFのテキスト化(OCR)などへの肯定的な反応が集まり、なかでもPDFのテキスト化はすぐに使いたいという声が多数を占めました。その声を受けて開発を強め、機能のブラッシュアップを進めるという流れができています。研修を「教える場」だけでなく要望を吸い上げる場として使う設計は、作り手が想像する便利さと現場が本当に欲しい機能とのずれを縮めるうえで有効に働いたはずです。
機密情報が外部に流出しない仕組みを前提に置いたうえで機能を積み上げる順序も、社内展開を後押ししたポイントでしょう。一般に社内の生成AI活用が止まる原因は、性能よりも「この資料を入れてよいのか」という判断の迷いにあります。安全性を土台として先に固めてしまえば、利用者はファイルを読ませることや業務データを扱うことをためらわずに済み、独自のプリセットプロンプトのように業務へ寄せた作り込みも活かしやすくなります。
一般機能の拡張と、特定の利用者向けに業務課題を解決する特化型アプリの導入を、二段構えで並行させている点も見逃せません。全員が使う共通機能は横に広げ、部門固有の課題は個別のアプリで受け止める。この切り分けがあることで、共通基盤を過剰に複雑化させずに個別ニーズへ応えられる形になっています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2025年6月時点の月間利用実績は、ユーザ数が約8,700人、リクエスト回数が約442,000リクエストで、いずれも過去最高を記録しました。2024年6月の実績と比べると、ユーザ数は約3倍、リクエスト回数は約6倍に増えています。研修後のアンケートでは「出社直後にNX-Brainの画面を立ち上げている」「業務効率化のツールとして活用してみたい」といった声が寄せられました。利用者数の伸び以上にリクエスト回数の伸びが大きいことは、一人あたりの使用頻度そのものが上がっていることを示しています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、要約・翻訳・下書き作成・調べ物のように、部門をまたいで誰にでも発生する作業が業務時間を圧迫している組織です。共通機能を一つの入口にまとめておけば、部門ごとに別々のツールを契約するより展開も教育も軽く済みます。一方で、この事例は情報システムを担う組織が自ら開発とプロジェクト管理を担い、利用者への教育まで一貫して回している点に支えられています。ツールを契約するだけで開発や改善を担う人が社内にいない場合、同じように機能を積み増していく形をそのまま真似るのは難しいでしょう。扱う情報の機微さによっては、外部に出さない仕組みをどう確保するかが先に立ちはだかります。
試すなら、まずは自部門の会議で「どの機能なら今日から使うか」を挙手で聞いてみてはいかがでしょうか。この事例でPDFのテキスト化への要望が開発の優先順位を動かしたように、実際に使う人が真っ先に欲しがる機能は、意外なほど地味で具体的なものです。
この事例は2025年6月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:外部・Web・SNSデータ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
NX情報システム
日本通運グループのIT会社。日本通運からの依頼によるシステム開発や運用を担ってきたが、2024年に日本通運のIT推進部と統合し、グループ全体を見据えたIT戦略の立案・提案へと役割を広げている。業務用生成AI搭載Webアプリ「NX-Brain」の開発・展開やRPA開発を手掛ける。
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