実施 2026.06 ・ 更新 2026.09.23
花王のパレット伝票入力をAIで自動化、ある工場で月147時間を省力化
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 紙の伝票の手入力に時間を取られている
- 入力ミス探しに人手を割いている
- 毎月大量の書類をさばききれない
どのようなAIの取り組み?
書類の文字をAIが読み取る仕組みでパレット伝票のシステム入力を自動化し、ある工場で月147時間、約74%の省力化につなげたAI取り組み
業種
日用品・化粧品製造(製造業)
取り組み領域
工場・物流拠点のパレット受払管理/伝票入力
使ったAI
route-D AIデータ入力(AI-OCR)
主な成果
ある工場で月147時間、約74%の省力化
花王は、商品の保管や輸送に使うパレットの移動情報を伝票に記録し、工場から物流センターへの出荷・入荷のたびに管理システムへ手入力することで受払を管理しています。伝票の発行枚数は月に数万枚にのぼり、ある工場では入力作業だけで月200時間が発生していました。この工数を圧縮するため複数のOCR(書類の文字を読み取る仕組み)を比較検討し、株式会社route-Dが提供する「route-D AIデータ入力」の採用を決定。読み取り精度の高さに加え、複数の読み取り結果を表形式で一括確認できる画面と、誤読の可能性がある項目を目立たせる信頼度ハイライト機能が決め手となりました。ツールの利用と並行して業務フローの改善にも着手し、ある工場では月147時間、約74%の省力化に至っています。
出典:花王株式会社、「route-D AIデータ入力」を導入し帳票のシステム入力工数を70%以上削減 | 株式会社route-Dのプレスリリース 発行元:株式会社route-D
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
月に数万枚という伝票の量にまず目が行きますが、編集部が注目したいのは、花王のパレット管理精度がもともと高い水準にあったという記述です。ある工場では入力業務に月200時間が費やされ、それでも入力ミスはゼロにならず、棚卸のたびに差異を確認する追加の作業が生まれていました。
困りごとの本質は、精度が足りないことではなく、その精度が人の時間と集中力の投入によって支えられていた点にあったのではないでしょうか。手入力で品質を保つ構造では、扱う伝票が増えるほど、入力の時間もミスを探す手間も同じように膨らみます。紙の伝票を起点にした運用が、管理の正確さと現場の負荷を切り離せない形で結びつけていた。手を入れるべきだったのは、精度そのものではなく、精度を支える方法のほうだったと考えられます。
どうやって、うまくいったのか
この事例で最も効いたのは、読み取り精度100%を前提に置かなかった選定の姿勢だと考えられます。パレット伝票には手書き文字が含まれるため、どれほど高精度なAIでも読み違いは残ります。その前提に立ち、完璧な読み取りを求める代わりに「誤読の可能性がある項目を可視化して、確認すべき箇所を効率的に特定する」という基準で信頼度ハイライト機能を評価した点に、実運用を見据えた判断が表れています。AIの弱点を消そうとするのではなく、弱点が出る場所を人に教える設計に寄せたわけです。
確認作業そのものを工数として数えた比較検討のやり方も、見逃せない要素です。自動化は入力の手間を減らす一方で、読み取り結果を点検する新しい作業を生みます。伝票画像と読み取り結果を表形式で並べ、複数書類の明細データをまとめてチェックできる画面を評価軸に据えたことで、「入力は減ったが確認で相殺された」という典型的な行き詰まりを回避できたのではないでしょうか。
フォーマットの違いを設定作業で吸収しない仕組みも、現場での立ち上がりを支えたと見られます。「route-D AIデータ入力」は、読み取り位置の座標設定を必要とせずAIが書類の内容を理解してデータを整理し、読み取った内容を社内のマスタ情報に変換します。使うほど業務ルールを学習していく性質や、AI一括学習機能と専門家の伴走によって本運用までの時間を縮める進め方も、ツールを入れて終わりにせず業務フローの改善まで併走させた今回の進行と噛み合っています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
「route-D AIデータ入力」の活用と業務フローの改善を合わせた結果、ある工場で月147時間、約74%の省力化が実現しました。伝票をデータ化したことにより、業務の集約性やデータ保全性も向上しています。今後は運用規模を広げ、他工場や他拠点へ展開することでパレット管理のオペレーションをAIで標準化していく方針が示されており、route-Dも花王のDX活動への伴走を続けるとしています。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、書式がそろっていない紙の書類を、決まった項目に落として基幹システムへ入力している業務です。とくに、入力先の項目が明確で、社内のマスタ情報と突き合わせる必要があり、なおかつ枚数が多い業務ほど、読み取りの自動化が効いてきます。今回のように手書きが混じる場合でも、誤読しやすい箇所を人が確認する前提で運用を組めるなら、十分に射程に入るでしょう。
一方で、扱う枚数がもともと少ない業務では、確認作業の負担が残るぶん効果が実感しにくくなります。読み取った値をそのまま登録できず、記載内容の意味を業務知識で判断してから入力しているような工程も、自動化の効き目は限定的です。また、確認を担う人員を置けない体制では、誤読の可視化という利点を活かしきれません。
試すなら、対象を1種類の帳票に絞り、入力にかかっている時間と、入力後のミス確認にかかっている時間を分けて測るところから。どちらが重いかが分かれば、読み取り精度と確認画面のどちらを重視して製品を見比べるべきかが自ずと決まります。
この事例は2026年6月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:帳票・紙の資料
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
株式会社route-D
製造業・流通業に特化した生成AIプロダクトの開発・販売を手がける企業。フォーマットがバラバラな帳票類のシステム入力を自動化する次世代型OCR「route-D AIデータ入力」を提供し、人手不足が進む製造業・流通業の業務効率化と蓄積データの活用を支援している。資本金3.73億円(資本準備金含む)。
花王株式会社
出典・参考情報
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