実施 2021.09 ・ 更新 2026.09.20
AI-OCRで輸出入書類の入力工数を約1/3削減、物流企業のデータ加工の工夫
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- FAXで届く書類の入力に追われている
- 帳票の書式がバラバラで自動化できない
- 読み取った後の手直しが多い
どのようなAIの取り組み?
AI-OCRと読み取り後のデータ加工ツールを組み合わせ、輸出入書類や請求書の入力・仕訳処理を効率化したAI取り組み
業種
総合物流(運輸・物流)
取り組み領域
通関業務の書類入力/請求書の仕訳処理
使ったAI
AI-OCR「AIRead」+ETLツール「Waha! Transformer」
主な成果
Invoice入力業務で3分の1ほどの工数削減、読み取り精度98.5%
静岡県静岡市を拠点に港湾運送や倉庫、国際物流などを手がける鈴与株式会社は、通関業務でFAX受領するInvoiceやPacking Listを税関システムへ入力する作業に、AI-OCRを取り入れました。採用したのは、アライズイノベーション株式会社が提供するAI-OCR「AIRead」と、そのオプションである「AIRead ETL Option」です。オプションの中身はユニリタのETLツール「Waha! Transformer」で、読み取った文字をそのまま使うのではなく、複数行の明細を扱いやすい形に結合したり、誤読した文字を置き換えたりする加工までを担います。その後、適用範囲はグループ会社の請求書仕訳処理や出荷指示書、船荷証券にも広がり、請求書処理の仕組みは「請求書仕訳支援クラウド」として外部への提供も始まっています。
出典:AI-OCR連携自動化で請求書仕訳クラウドサービスを支える「Waha! Transformer」|鈴与株式会社 様・アライズイノベーション株式会社 様|導入事例 発行元:ユニリタ
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
通関事業の部門が抱えていたのは、FAXで届くInvoiceを税関システムへ打ち込む作業でした。1件の申告で明細が100行を超えることがあり、しかも複数件がまとめて届くタイミングもあります。書式には一定の法則性があるものの統一はされておらず、情報の記載位置も書類ごとに微妙にずれるため、従来型のOCRでは単純なデータ化さえ難しい状態が続いていました。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は「文字が読めない」ことではなく、「読めたところで、そのままでは業務システムに流し込める形になっていない」ことにあったのではないでしょうか。行数が可変で、項目の並びも揃わない帳票は、文字を抽出した瞬間にはまだバラバラの断片でしかありません。入力担当者が実際に時間を使っていたのは、文字を目で追う作業よりも、断片を申告や仕訳の形に組み直す判断のほうだった。そう考えると、OCR単体では解けない課題だったことが見えてきます。
どうやって、うまくいったのか
読み取りの手がかりを座標ではなくキーワードに置いた選択が、この取り組みの土台になっています。多くのAI-OCRが採る座標指定の方式は、記載位置が固定された帳票なら強みを発揮しますが、明細行数が伸び縮みするInvoiceでは位置そのものがずれてしまいます。書類の「形」ではなく、そこに書かれた語を目印に情報を拾う方式へ切り替えたことで、非定型という前提を無理に定型へ押し込めずに済んだと考えられます。
読み取りの次に来るデータ加工までを同じ仕組みの中に含めた設計も、実運用を成り立たせた要因でしょう。品名や単価、数量、小計が1行に揃っていない明細を、ETL(複数システム間でデータを抽出・変換・連携する仕組み)で複数行から1行へ結合し、税関システムに登録できる形へ整える。請求書では、読み取った内容から該当する勘定科目を判定して情報を付加し、会計システムへ渡すデータを組み立てる。OCRの出力を人手で整え直す運用は現実的ではないという判断が、選定の条件そのものを「読み取り後まで面倒を見られるか」へと押し上げた点が興味深いところです。
精度改善の主導権を自分たちの側に残そうとした姿勢も見逃せません。学習モデルが作れても中身がブラックボックスであれば、どこをどう直せばよいか判断できない。この懸念を選定の条件に据え、文字を学習させるモジュールが用意された仕組みを選んだうえで、請求書処理では会計システムへの登録前に人が確認し、システムが提示した内容を修正した結果を学習へ戻す流れを組んでいます。誤読しやすい文字の置き換えをデータ加工側で吸収する運用も含め、精度を一度きりの導入成果ではなく、回し続ける対象として扱う設計になっています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
最初に適用した通関業務では98.5%の読み取り精度に達し、明細が100行規模になるInvoiceの入力業務では3分の1ほどの工数削減につながりました。有効性がグループ内に伝わったことで相談が相次ぎ、請求書の仕訳処理や、荷主からFAXで届く出荷指示書、船荷証券の入力にも適用が広がっています。当初はOCRに懐疑的だった現場の見方も変わり、今では業務に欠かせない仕組みとして受け止められています。請求書処理の仕組みは「請求書仕訳支援クラウド」として外販が始まり、複数社で導入作業が進行中です。
うちでも使える?
相性がよいのは、紙やFAXで届いた書類を読み取って終わりではなく、その内容を別のシステムへ登録しているタイプの業務です。読み取り後に「複数行をまとめる」「マスターと突き合わせる」「区分を判定して付け加える」といった加工が挟まっている業務ほど、OCRだけを入れても効果が頭打ちになりやすく、加工の仕組みまで含めて考える意味が大きくなります。属人的になりがちな仕訳判断が標準化される点も、担当者が限られている現場では検討材料になるでしょう。
一方で、扱う帳票が1種類に近く、記載位置も件数も安定している業務では、加工基盤まで用意する手間に見合わない可能性があります。また、この事例は読み取り結果を人が確認し、修正内容を学習に戻す工程を前提にしています。確認する人も、精度を育てる担当も置けない体制では、導入直後の精度がそのまま上限になりかねません。まずは直近1か月に届いたFAX帳票を数枚並べ、同じ種類の書類でも記載位置がどれだけ揃っていないかを目で確かめるところから。その差の大きさが、座標方式で足りるのか、別の手がかりが要るのかを分ける目安になります。
この事例は2021年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:帳票・紙の資料
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
アライズイノベーション株式会社
AI-OCR、ローコード・ノーコード開発ツール、RPAを提供。AI-OCR「AIRead」と、そのETLオプションとしてユニリタのETLツール「Waha! Transformer」をOEM販売している。
鈴与株式会社
出典・参考情報
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