実施 2025.07 ・ 更新 2026.09.20
紙製品の荷積み計画を10秒以内で作成、熟練者の判断を再現したAIの実証
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテランの勘に頼った計画作業
- 配車や積み付けの計画に時間がかかる
- 後継者が育たず業務が属人化
どのようなAIの取り組み?
熟練者の思考過程を再現するAIで、トラックの荷積み計画づくりを10秒以内に短縮できることを確かめた実証事例
業種
紙・パルプ製造(製造業)
取り組み領域
出荷・荷積み計画/配車計画
使ったAI
匠の思考過程を再現する荷積み計画AI(独自開発)
主な成果
実証実験で一回の荷積み計画作成を10秒以内に完了
新潟県で紙・パルプ製品を手がける北越コーポレーションと、グループで輸送を担う北越物流は、トラックへの荷積み計画づくりを長く熟練担当者の経験に委ねてきました。製品の形状やトラックの積載量、届け先ごとの指定条件に加え、ドライバーの荷下ろし負担まで見越した割り付けが必要で、そのまま機械に置き換えにくい業務です。ここに横河電機と横河ソリューションサービスが加わり、熟練者の頭の中にある判断の順序を聞き取ったうえで、その思考過程を再現する荷積み計画AIを独自に開発しました。実証実験では自動立案を試し、一回分の計画を10秒以内で正確に作成できることが確認されています。両社はこの結果を受け、2025年7月からの正式導入を決定しました。
出典:匠の思考プロセスを再現する荷積み計画AIにより、 計画立案作業を大幅に短縮-積み方の制約、届け先の荷下ろし場や働く人への配慮も含めて最適化- | YOKOGAWA 発行元:横河電機株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
紙製品の出荷では、製品の形も車両の積載量も届け先の条件もそろっておらず、さらにドライバーの負担を軽くするため、配送先はできるだけ一か所に、難しければ近い地域にまとめるという配慮まで求められます。従来の最適化技術は、目的と制約がこうして増えるほど計算のロジックを組むこと自体が難しくなり、計画づくりに要する時間も延びていきます。自動化が進まないまま、後継者の育成にも課題が残っていました。
編集部の見立てでは、困りごとの核心は一件あたり何時間かかるかではなく、熟練者が当たり前のように払っている配慮が、本人以外には読めない形のままだった点にあります。積載効率のように数えられる条件と、荷下ろし場の事情やドライバーへの気遣いのように数式へ落としにくい条件が、同じ頭の中で同時に処理されていた。だからこそ、どこから仕組みに移せばよいのか、その糸口自体がつかみにくかったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
効いたのは、荷積みを数式の最適化問題として定義し直すのではなく、熟練者が実際にたどっている判断の順序をそのまま写し取るという設計の向きです。開発にあたってはAIコンサルタントが匠の思考プロセスを詳細に聞き取り、現場の状況を理解したうえで専用のAIを組み立てています。制約を網羅的に並べて解かせる方法では、条件が増えるほど組み立てが破綻しやすくなる。その壁を、正解の作り方を人から学び取る側に回り込んで越えた構図と読めます。
もう一つは、これまで要件として扱われてこなかった「気遣い」を、はっきり設計の対象に引き上げたことです。各トラックの配送先をできるだけ一か所にまとめる、複数になるなら近接した場所に寄せる、そのうえで積載量も踏まえる。効率という一本の物差しだけなら切り捨てられかねない配慮を、計画の中に最初から組み込んだ点に、この事例固有の判断が表れています。
進め方の面では、いきなり本番運用に移さず実証実験として成立性を確かめ、その結果をもって正式導入を判断する段取りが取られました。属人化した業務をAIに載せ替える場合、出力が現場の納得を得られるかどうかは実際に動かすまで読み切れません。検証の場を先に置く順序は、その不確実さを抱えたまま投資判断を迫られる状況を避ける現実的なやり方です。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
実証実験では、出荷品や車両、届け先の指定条件といった複雑な要素を踏まえながら、一回分の荷積み計画を10秒以内に正確に作成できることが確認されました。あわせて、各トラックの配送先を可能な限り一か所にまとめる、複数ある場合は近接地に集約するといった匠特有の気遣いを反映し、積載量も考慮した計画が立てられることも確かめられています。この成果を踏まえ、北越コーポレーションと北越物流は2025年7月からの正式導入を決めました。数字の短縮以上に、人が担ってきた配慮を保ったまま自動化の見通しが立った点が大きいと言えます。
うちでも使える?
応用しやすいのは、条件が多く、しかも机上の効率計算だけでは現場が納得しない計画業務です。配車や積み付け、工程の割り付け、シフト作成などは、数字の上での最適解と、実際に動く人にとっての現実解がずれやすい領域で、熟練者の判断を聞き取って再現する進め方が合います。逆に難しいのは、判断する人が複数いて基準が食い違う場合や、案件ごとに前提が入れ替わり「いつもの手順」と呼べるものが存在しない場合です。この事例のように、聞き取った思考過程を土台にする以上、再現すべき手順が一人の中で安定していることが前提になります。また、気遣いの中身は業種ごとに違うため、他社の要件をそのまま持ち込んでも現場の合意は得にくいでしょう。
まず試すなら、次の計画づくりの場に同席してみてください。担当者が手を止めた場面と、そのとき何を避けようとしたのかを一つずつ聞く。そこが、仕組みに移せる判断と移せない配慮の境目を見つける入口になります。
この事例は2025年7月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
横河電機株式会社/横河ソリューションサービス株式会社
紙パルプ業界向けに「紙パルプDXソリューション」を展開し、ものづくりの革新と持続的な成長を支援している。
北越コーポレーション株式会社/北越物流株式会社
出典・参考情報
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