実施 2025.06 ・ 更新 2026.09.20
AI音声合成でバス車内放送を自動生成、全333両で更新をオンライン化
プロジェクト期間:1年 〜 2年
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 音声データを1台ずつ入れる作業が重い
- 案内の内容をすぐ直せない
- 収録のたびに時間と手間がかかる
どのようなAIの取り組み?
AI音声合成で車内アナウンスを生成し、放送データの更新をオンライン化した路線バスのAI取り組み
業種
路線バス(運輸・物流)
取り組み領域
車内アナウンス放送/車内放送広告販売
使ったAI
AI音声合成サービス「コエステーション」(音声AI)
主な成果
全333両でバスアナウンス更新の完全オンライン化を実現
川崎鶴見臨港バスは、クラリオンライフサイクルソリューションズ、ケイエムアドシステムとともにバス車内放送の仕組みを作り替える開発を進め、2025年6月2日から全333両で本格運用を始めました。専用サーバーと車載機器をオンラインでつなぎ、放送データを遠隔で更新できるようにした点が中心にあります。車内で流れる音声は、ナレーターの肉声から、エーアイのAI音声合成サービス「コエステーション」による人工音声へ切り替えられ、原稿からその場で音声を作れる形になりました。開発は日本バス情報協会代表理事の技術指導を受けながら進められ、2024年6月から11月にかけて鶴見営業所の管轄路線で実証実験を実施し、改良を加えたうえで全車両へ広げています。あわせて、車内放送広告をWebから申し込める販売の仕組みも運用が始まりました。
出典:(株)エーアイ AI音声合成サービス「コエステーション®」がバス車内放送システム完全オンライン化に向け採用 | 株式会社エーアイのプレスリリース 発行元:株式会社エーアイ
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
これまでのバス車内放送は、スタジオで収録した音声データを1台ずつ手作業で車載機器に入れる方式でした。作業の負担が大きいために頻繁な更新ができず、多様なニーズに応えられない状態が続いていました。
編集部の見立てでは、ここでの本当の詰まりは音声の出来映えではなく、音声が物として車両側に固定されていたことにあります。案内を一つ変えるだけでも、収録と全車両分の書き換えという物理的な工程が必ず挟まる。つまり、案内の鮮度を上げようとするほど人手のコストがそのまま増える構造になっていたわけです。更新頻度を上げられないという制約は、現場の努力でどうにかできる場所には置かれていなかったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
効いたのは、音声を「あらかじめ用意しておくもの」から「必要なときに作るもの」へ置き換えた設計です。AI音声合成をシステム側に組み込み、専用サーバーと車載機器をオンラインで結んだことで、原稿の変更が車内で流れる音声まで届く経路ができました。音声ファイルを車両へ運ぶのではなく、放送の元になる情報を更新すれば足りる形に変わっています。さらにGTFS(公共交通データの共通フォーマット)を活用し、放送以外の運行に必要な情報の更新も同じオンラインの流れに載せています。
もう一つは、いきなり全車両に広げなかった段取りです。2024年6月から11月まで鶴見営業所の管轄路線に絞って実証実験を行い、そこで見えた点を改良に反映させてから333両への展開に進んでいます。走行中の車両をすべて一度に置き換えれば、不具合が出たときの影響範囲も戻し方も読みにくくなる。範囲を限った検証を先に置いた判断が、全車両展開へ踏み切る足場になったと考えられます。
音質を実際の利用環境に合わせて調整した点も見落とせません。DNN(深層学習を用いた方式)による滑らかな音声をそのまま載せるのではなく、バス車内で聞きやすくなるようチューニングが施されています。聞き取れるかどうかは乗客にとっての価値そのものであり、合成音声の自然さと車内での明瞭さは必ずしも一致しません。加えて、車載システム、広告販売、運行、音声合成、技術面の助言という役割を複数の主体で分担した体制が、一社だけでは踏み込みにくい領域をつないでいます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2025年6月2日から全333両で本格運用が始まり、バスアナウンス更新の完全オンライン化、アナウンス広告のタイムリーな更新、車内アナウンス広告販売のECサイト化という3点が実現しています。広告面では、年間契約が前提で自由度が低かった従来の売り方から、放送する期間や時間帯をWeb申し込み時に指定し、AI音声で音声原稿もその場で作成・確認できる形へ変わりました。出稿クライアント数や広告収入の増加は、現時点では期待されている段階です。乗客に必要な情報をリアルタイムで知らせるトライアルも予定されています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、決まった文面を繰り返し流していて、その中身が季節や時期で変わる案内業務です。商業施設や駅構内の館内放送、店舗の案内、無人受付の音声など、原稿さえ決まれば読み手を人に頼らなくてよい領域では、同じ考え方が効きます。ポイントは音声合成そのものよりも、原稿を差し替えたら現場の機器まで自動で届くという経路を作れるかどうかにあります。
一方、端末がネットワークにつながっておらず、音声の入れ替えに物理的な作業が残る環境では、音声合成だけを導入しても手間はほとんど減りません。今回のように広告主など社外からの依頼で内容が変わる場合は、申し込みから原稿、音声化、配信までを一続きの業務として設計しないと、途中で人の確認待ちが発生して鮮度は戻ってしまいます。まず試すなら、いま流している定型アナウンスが直近1年で何回書き換えられ、1回あたり誰が何時間を使ったかを数えてみてはいかがでしょうか。その回数と時間が、仕組みを変える価値の大きさをそのまま示します。
この事例は2025年6月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:音声AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社エーアイ
AI音声合成サービス「コエステーション」を提供する情報通信企業。東証グロース上場(証券コード4388)、資本金1億5148万円。バス車内放送システムのオンライン化に向け、AI音声合成サービスを提供している。
川崎鶴見臨港バス株式会社
出典・参考情報
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