実施 2026.07 ・ 更新 2026.09.19
物流現場の社員がAIアプリを開発、三井倉庫ロジスティクスの人材育成モデル
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 現場の困りごとがIT部門に伝わらない
- DXを任せられる人材が社内にいない
- AIを入れても現場で使われない
どのようなAIの取り組み?
物流現場の社員自身がAIを活用した業務アプリケーションの企画・開発・運用を担う、OJT型のDX人材育成モデルを共同で構築した取り組み
業種
倉庫・物流業務受託(運輸・物流)
取り組み領域
物流現場のDX人材育成/業務アプリ開発
使ったAI
AIを活用した業務アプリケーション開発(AI駆動開発)
主な成果
トライアル参加の現場社員8名が開発したAIアプリが現場で運用開始
三井倉庫ロジスティクスと日本IBMは、物流現場で働く社員が自ら課題を見つけ、AIを活用した業務アプリケーションの企画から開発、運用までを担う実践型の人材育成モデルを共同で組み立てました。対象となるのは物流現場と関連部門から選抜された業務に精通した社員で、日常の仕事を続けながら、課題の特定と定義、アプリケーションの開発、運用と改善という一連の流れを実務のなかで経験します。日本IBMは、課題整理やユースケース設計、アプリケーション開発、運用定着までを横について支える役割を担います。本格展開に先立つトライアルには現場社員8名が参加し、入出荷実績から物量を予測して作業計画の立案を支える仕組みや、商品の画像から物流品質の問題の原因を探る仕組みが生まれ、実際の現場で動き始めています。
出典:IBM Japan Newsroom - ニュースリリース 発行元:日本アイ・ビー・エム株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
物流業界では労働力不足が深刻さを増し、地政学リスクの高まりや災害の激甚化といった外部環境の変化も重なって、多様化する顧客ニーズへの対応やサプライチェーン管理の高度化が求められるようになっています。業務は複雑さを増し、先行きも読みにくい。経験や属人的な判断だけで回し続けるには限界があり、データにもとづく意思決定を支えるデジタル技術が欠かせない、というのがこの取り組みの出発点です。
目を引くのは、両社が「デジタル技術を導入するだけでは現場の変革は進まない」という認識を前提に置いたことです。編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は、使えるAIがなかったことではなく、現場の課題を要件の形に翻訳できる人が現場側にいなかったことにあります。倉庫や配送の作業には、その拠点でしか通じない段取りや例外処理が幾重にも積み重なっています。外部の担当者が要件を書き起こそうとすれば、その機微はどうしても抜け落ちる。ツールの調達ではなく人の育成が主題に据えられた理由は、そこにあると考えられます。
どうやって、うまくいったのか
課題の特定と定義を現場社員の手元に残したことが、この育成モデルの骨格になっています。日常業務のなかから社員自身が課題を発見し、現場視点で要件を整理するところからサイクルが始まる設計で、最初の一歩が「与えられたテーマを解く」ではなく「解くべきテーマを決める」に置かれている。要件定義を外に出さない切り分けは、現場固有の例外を仕様から取りこぼさないための現実的な選択だったのではないでしょうか。
対象者を物流現場および関連部門で業務に精通した社員から選抜し、日常業務と並行して取り組む形にした点も効いていると考えられます。研修室で完結する座学ではなく、実際に困っている業務をそのまま題材にするOJT(実務を通じた訓練)の形をとることで、学んだ内容の使いどころを探す手間が最初から発生しません。業務知識を持つ人にAIの扱い方を足すという順序は、AIに詳しい人に業務知識を覚えてもらう順序よりも、立ち上がりが速い構えです。
開発して終わりにせず、実際の業務に導入して効果検証と改善を繰り返す工程までをサイクルに含めた設計も見逃せません。この一巡があることで、参加者は自分が書いた要件の当たり外れを現場の反応から確かめられ、育成と業務改善が同じ活動のなかで進みます。日本IBMは課題整理からユースケース設計、アプリケーション開発、運用定着までを伴走する役回りに徹しており、成果物を納品するのではなく進め方そのものを渡す分担になっている。この役割分担があるからこそ、開発経験のない現場社員が企画から運用までを主導するという、本来はハードルの高い構図が成り立っていると見られます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
本格展開に先立って実施されたトライアルには、現場社員8名が参加しました。過去の入出荷実績などのデータから物量を予測し、最適な作業計画の立案を支援する「AI物量予測アシスタント」や、物流品質上の課題が発生した際に商品の画像データから原因の特定と再発防止策の提示を行う「物流品質解析ツール」などが生まれ、いずれもすでに現場で運用が始まっています。両社はこの結果をもって、DX推進人材の育成と継続的な業務改善を両立するモデルとしての有効性を実証したと位置づけており、三井倉庫ロジスティクスは今後3年間で50名規模への拡大を方針として掲げています。
うちでも使える?
この形が生きるのは、業務知識が現場に厚く蓄積されていて、何が問題なのかが現場に立たないと見えない仕事です。倉庫や工場、店舗運営のように、拠点ごとに手順や例外の事情が異なる業務では、要件を書ける人を現場の内側に育てる意味が大きくなります。逆に、業務が全社で標準化されていて、既製のツールをそのまま当てはめれば足りる領域では、社員を育てる回り道を選ぶ必要は薄いでしょう。
応用を検討するうえで見落としやすいのが、時間と保守の負担です。日常業務と並行して企画・開発・改善まで回すには、選抜された社員が業務を離れる時間を周囲が吸収できる余力が要りますし、現場が作ったアプリケーションを誰がどう保守し続けるのかという線引きも、早い段階で決めておかないと後から効いてきます。外部の支援を受ける場合も、完成物を受け取る契約なのか、進め方を移転してもらう契約なのかで、残るものが変わります。
まずは、直近1か月の業務を振り返って「データを見れば判断できたはずなのに、担当者の記憶や勘で決めた」場面を、現場の担当者本人に一つ挙げてもらうところから。その一件が、育成のテーマとしてちょうどよい大きさかどうかを測る物差しになります。
この事例は2026年7月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
日本アイ・ビー・エム株式会社
代表取締役社長は山口明夫。AI活用、AI駆動開発、人材育成および業務変革支援の経験を持ち、現場課題の発見からユースケース創出、AIアプリケーション開発、運用・定着までを一貫して支援している。
三井倉庫ロジスティクス株式会社
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