実施 2025.10 ・ 更新 2026.09.17
ピッキング支援ロボットで生産性2倍超、物流センターの属人化脱却
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- ベテランの経験に頼った出荷作業
- 新人が戦力になるまでが長い
- 人手不足で現場の負荷が増している
どのようなAIの取り組み?
帳票のバーコード読み取りと容器ごとの注文割り当てを組み合わせ、物流センターの人時生産性を2倍以上に引き上げたピッキング支援ロボットの取り組み
業種
物流センター運営(運輸・物流)
取り組み領域
物流センターの出荷・ピッキング業務
使ったAI
ラピュタPA-AMR大容量モデル(自律走行するピッキング支援ロボット)
主な成果
人時生産性が35LPMHから79.5LPMHへ拡大
横浜市に拠点を置くケイヒン配送は、横浜商品センターの出荷業務にラピュタロボティクスのピッキングアシストロボット「ラピュタPA-AMR大容量モデル」を納入し、2025年10月に稼働を開始しました。同センターでは出荷作業がベテランの経験とノウハウに依存しており、スポットワーカーや新人がすぐに戦力になりにくいこと、人手不足で現場オペレーションの負荷が膨らんでいることが課題になっていました。短期間のPoC(小規模な試験導入)と生産性シミュレーションで効果を見極めたうえで採用を決め、事前に印刷した帳票のバーコードを読み取って作業順序を割り当てる方式と、容器ごとに1オーダーを担当させる積載方法を組み合わせています。稼働後も定例会で稼働データを分析しながら設定を調整する運用が続き、1人が1時間に処理する行数を示すLPMHは当初の35から79.5へ拡大しました。
出典:ラピュタロボティクスのピッキングアシストロボット「ラピュタPA-AMR大容量モデル」がケイヒン配送の横浜商品センターで稼働開始 | ラピュタロボティクス 発行元:ラピュタロボティクス株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
横浜商品センターの出荷作業は、ベテラン作業スタッフの経験とノウハウに支えられていました。誰がやっても同じ結果になる作業ではなかったため、スポットワーカーや新人はすぐに戦力にならず、人手不足が進むほど負荷は限られた人に集まっていきます。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は人数の不足そのものではなく、作業の手順が人の頭の中にあって外から見えない状態にあったことだと考えられます。手順が個人の記憶と勘に格納されている限り、人を足しても処理能力はすぐには増えません。教育に時間がかかり、やがて生産性に頭打ち感が出る。現場から教育コストと生産性の頭打ちが語られているのは、その構造を裏づけるものでしょう。ロボットに期待されていたのは力仕事の肩代わりというより、手順を機械の側に移し、誰が入っても同じ順番で動ける状態をつくることだったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
作業指示の出し方を、現場が使ってきた紙の帳票に合わせて設計した点が効いています。事前に印刷された帳票のバーコード(出荷番号やピックIDなど)をスキャンすると、その読み取り順がそのままロボットへの作業割り当てになります。既存の帳票運用を捨てさせずに機械側へ接続したため、作業者が新しく覚えることは読み取る動作に絞られました。あわせて、帳票と荷物を後から突き合わせる事後照合、いわゆるカルタ取りの工程そのものが要らなくなり、手戻りの発生源が一つ消えています。
容器の持たせ方を変えた設計も、この取り組みを支えています。30Lのオリコン(折りたたみコンテナ)を4つ積み、1つの容器に1オーダー分だけを入れる形にしたことで、どの荷物をどこへ入れるかという仕分けの判断が作業者の手元から離れました。従来のように60Lの容器へ複数オーダーをまとめる方式では、投入先を考える負荷が常に残ります。4つの間口を同時に進められる構成は、同じ棚の前で複数の注文を片づけることを可能にし、移動距離を抑えます。
導入の判断と稼働後の運用が地続きになっていることも見逃せません。短期間のPoCと生産性シミュレーションで見込みを確かめてから採用を決め、稼働後は定例会で稼働データや作業者別の生産性を分析し、環境や設定値を調整するPDCAを回し続けています。ロボットを置いた時点を完成形とせず、数値を見ながら調整を重ねる前提で運用を組んだことが、現場に根づく力になったと考えられます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
現場からは、1人が1時間に処理する行数を示すLPMHが当初の35から79.5へ拡大したことが報告されています。人による作業で頭打ちを感じていた水準から2倍以上になった計算で、導入時に掲げた従来比2倍以上という目標の線に届いた形です。属人的な作業からの脱却については、新人やスポットワーカーでも即戦力として動ける環境が整うことへの期待が語られている段階で、今後は対象オーダーの拡大を通じたさらなる改善が見込まれています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、作業の指示が紙やハンディ端末を通じて現場に流れていて、順序さえ決まれば誰でも実行できるタイプの業務です。出荷や仕分けのように、判断の中身が「どこへ行き、何を、いくつ取るか」に整理できるなら、手順を機械側に移す余地は大きいと言えます。一方で、荷姿が毎回異なり持ち方や積み方に熟練の判断が要る商品が中心の現場や、通路幅・棚配置がロボットの走行を想定していない倉庫では、同じようには運ばないでしょう。今回のように、短期の検証とシミュレーションで効果を見積もる工程が先に置かれているのは、その適性を確かめる意味があったはずです。
最初の一歩としては、自社の出荷業務のなかで「後から帳票と荷物を突き合わせている工程」がどこに残っているかを、実際の作業を見ながら確かめてみてはどうでしょうか。照合や確認のために生じている往復は、指示の出し方を変えるだけで消える可能性があります。
この事例は2025年10月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:帳票・紙の資料
採用したAI技術・ツール
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
ラピュタロボティクス株式会社
物流向けロボティクスソリューションを提供する、チューリッヒ工科大学(ETH Zürich)発のベンチャー企業。「ロボットを便利で身近に」をビジョンに掲げ、制御技術および人工知能技術を活用した次世代クラウドロボティクスプラットフォームの開発と、ロボットソリューションの開発・導入・運用支援を行う。世界30ヵ国以上から集まったエンジニア、営業チーム、カスタマーサクセスチームで構成される。
ケイヒン配送株式会社
出典・参考情報
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