実施 2020.06 ・ 更新 2026.09.11
JR西日本が自動改札機の故障をAIで予測、点検3割減・故障2割減を両立
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 毎年決まった回数の点検が負担
- 突然の設備故障で呼び出される
- どの機械から点検すべきか判断できない
どのようなAIの取り組み?
自動改札機の稼働データから故障の兆しを予測するAIによって、点検回数約3割減と故障件数約2割減を両立させたAI取り組み
業種
鉄道(運輸・物流)
取り組み領域
設備保守/予知保全
使ったAI
機械故障予測AI(機械学習)
主な成果
自動改札機の点検回数を約3割、故障発生件数を約2割削減
JR西日本は、在来線管内に置かれた約2,000台の自動改札機を対象に、機械の故障を事前に予測するAIを自社で開発しました。券詰まりの回数や切符の搬送速度といった日々の稼働データと、これまでの故障履歴との関係を機械学習させ、故障が起きやすい状態にある機器を割り出す仕組みです。稼働データは週に一度クラウドへ送られ、そこで推論が実行されると、故障確率の高い順に機器が並んだ画面が保守担当者に届きます。加えて、なぜその機器の故障確率が高いのかという要因を示す解釈機能も独自に用意されました。2020年6月から神戸エリアで試行し、その結果を踏まえて管内全域へ広げ、現在は券売機や精算機にも同じ仕組みが使われています。
出典:自動改札機の点検回数30%減と故障発生数20%減を同時に実現「機械故障予測AI」 - JRW Innovation platform 発行元:JRW Innovation platform
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
自動改札機1台につき、定期点検は年に7回、故障による呼び出しは年に2回。これに約2,000台という数が掛かると、年間で約14,000回の点検と約4,000回の緊急対応になります。JR西日本が抱えていたのは、この点検回数と故障発生件数を同時に下げたいという、一見すると噛み合わない二つの要求でした。
編集部の見立てでは、困りごとの本質は作業量の多さそのものではなく、点検を「どこに」向けるかを決める材料がなかったことにあります。台数と回数で保守計画を組む限り、まだ元気な機器にも傷みかけた機器にも同じ頻度で人が向かうことになり、点検を減らせば取りこぼしが増え、故障を減らそうとすれば回数が膨らむ。二つの要求が衝突しているように見えたのは、機器の状態が分からないまま暦だけで保守が動いていたからではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
予測の材料に、券詰まりの回数や切符の搬送速度といった、機器が日々吐き出している動作ログとセンサデータを選んだ点が、この取り組みの土台になっています。改札機は毎日大量の乗車券を処理しており、その処理の様子は特別な計測をしなくても記録として残ります。それを故障履歴と突き合わせ、どんな挙動の変化が故障の前触れになるのかを機械学習で学ばせる。新たに何かを測りに行くのではなく、すでに手元にある記録を予測の資源として読み替えた設計です。
もう一つの柱は、故障確率を押し上げた要因を機器ごとに示す解釈機能を独自に作り込んだところにあります。予測モデルの出力が「この機器は危ない」という数字だけであれば、保守担当者は結局どこを見ればよいのか分からず、従来どおりの一通りの点検に戻ってしまいます。要因まで提示されるからこそ、点検に向かうかどうかだけでなく、行った先で何を確認するかまで決められる。予測を判断材料として使える形に落とし込んだことが、現場で回る仕組みになった理由だと考えられます。
運用のリズムを週に一度のデータアップロードと推論に置いた点も見逃せません。故障予測は常時監視でなければ意味がないと思われがちですが、点検の計画を組み替える単位が週や月であるなら、予測の更新もその周期に合わせれば足ります。いきなり全線に広げず神戸エリアで試し、試行エリアと対象外エリアを1台あたりで比べる形で効果を確かめてから展開に進んだ段取りは、効果が目に見えにくい予測の仕組みを組織に受け入れさせるうえで理にかなった進め方。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
2020年6月から神戸エリアで試行し、試行エリアと対象外エリアの自動改札機を1台あたりで比較したところ、総点検回数は約3割、故障発生件数は約2割減りました。少ない点検で故障も抑えるという相反する目標が同時に成り立つことが確かめられ、JR西日本管内へ展開され、券売機や精算機にも適用されています。現場からも、保守業務が効率的になったという評価が出ています。同じ予知保全の技術は2024年4月から東洋紡の製造ラインの一部でも使われ、故障による製造ラインのタイムロスが累計で約10時間短くなったと評価されています。
うちでも使える?
この手法が効きやすいのは、同じ型の機械が数多く並び、それぞれが稼働の記録を残していて、過去の故障がいつどの機器で起きたかを後から突き合わせられる現場です。台数が多いほど、一律の点検計画を機器の状態に応じて配分し直したときの差は大きくなります。逆に、対象が数台しかない、故障がめったに起きず学習に使える履歴が乏しい、機器ごとに構成や使用条件がばらばらで一つのモデルにまとめにくい、といった条件では同じ形での再現は難しくなります。稼働の記録が機器の中に閉じていて外に取り出せない場合、最初の壁はAI以前のところにあります。
まず試すなら、自社の設備の点検票と修理伝票を一年分並べ、故障した機器が直前にどんな数値や症状を出していたかを一件だけ追ってみる。兆しが読めそうな故障なのか、それとも本当に突発的なのか。その一件で、次に進む価値があるかどうかの見当はつきます。
この事例は2020年6月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:機械・設備・位置
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
JR西日本
在来線管内に約2,000台の自動改札機を持つ鉄道事業者。自社開発の機械故障予測AIを自動改札機・券売機・精算機の保守に活用している。
出典・参考情報
自動改札機の点検回数30%減と故障発生数20%減を同時に実現「機械故障予測AI」 - JRW Innovation platform
発行元:JRW Innovation platform
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