実施 2024.11 ・ 更新 2026.08.27
北陸電力、石炭を運ぶ船の割当計画をAIが草案作成し週数時間の単純作業を削減
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 毎回ゼロから計画を組み立てている
- 条件が毎日変わって最適解が出せない
- ベテランの勘に頼った計画づくり
どのようなAIの取り組み?
配船計画最適化システムの活用により、年間約80隻に及ぶ石炭運搬の計画案をAIが自動で作成し、週に数時間かかっていた単純作業をほぼ解消したAI取り組み
業種
電力(エネルギー・インフラ)
取り組み領域
燃料調達/石炭海上輸送の配船計画
使ったAI
配船計画最適化システム「Optium」(計画最適化AI)
主な成果
週に数時間発生していた単純作業がほぼ解消
北陸電力は発電量の約4割を石炭火力が占め、敦賀・七尾大田・富山新港の3つの火力発電所へ、年間およそ80隻の船でオーストラリアやインドネシア、北米などから石炭を運び入れています。この配船計画は長らく、ネットワークから切り離された「配船パソコン」と呼ばれる業務用パソコンを使い、担当者が船会社との契約条件と照らし合わせながら手作業で組み立てていました。2024年11月、同社はALGO ARTISが提供する配船計画最適化システム「Optium」の運用を始め、前提条件を入力すると年間計画の土台をAIが自動で作る形へ切り替えています。関係者はそれぞれのアカウントから最新の計画を参照でき、条件を変えた複数案のシミュレーションも人手をかけずに行えるようになりました。
出典:【北陸電力】石炭海上輸送の配船計画最適化|ALGO ARTIS 導入事例 発行元:ALGO ARTIS
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
配船計画の作成には、大きく3つの困りごとがありました。契約を確実に履行できる計画を優先するあまりコストの吟味まで手が回らなかったこと、計画づくりそのものに時間がかかっていたこと、そして担当者の知識量や経験値によって計画の質にばらつきが出ていたことです。積地と揚地と船の組み合わせは無数にあり、運賃表を一つひとつ突き合わせて検証する余裕はありませんでした。
編集部の見立てでは、この業務の本質的な難しさは「考えるべき条件が多い」ことよりも、「その条件が毎日動き続ける」ことにありました。天候や市況、船の動静、発電所の運転状況が日々変わる以上、担当者は探索の範囲を絞る基本方針、たとえば遠い航路には安い船を、近い航路には高い船をといった経験則に頼らざるを得ません。困っていたのは計画を作れないことではなく、作った計画が本当に最善だったのかを確かめる手立てがなかったこと。ここに十数年来の悩みの核心があったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
成功要因の一つ目は、AIの出力を完成品ではなく「叩き台となる草案」と位置づけた分業設計です。前提条件を入力すれば計画の土台が自動でできあがるため、担当者は白紙から80隻を振り分ける作業ではなく、示された案を評価し手を入れる作業から始められます。ゼロベースで計画を書き起こす同僚が一人増えたという現場の受け止め方は、この役割配分をよく表しています。あわせて、AIに任せたほうがよい部分と人間が判断すべき部分を線引きし、システムには反映しきれない経験や勘を次の世代へ引き継ぐという方針を明示している点も、AI任せへの傾きを防ぐ設計として見逃せません。
二つ目は、検討の回数そのものを増やせるようにしたことです。従来は条件を少し変えた別案を一つ作るだけでも担当者の負担が大きく、比較できる選択肢の数が構造的に限られていました。人手をかけずに複数パターンを生成できる仕組みにしたことで、統括課長が自分で別案を組んでから助言するといった動き方が生まれています。計画づくりが一人の頭の中の作業から、複数案を並べて議論する対象へと変わった点が重要です。
三つ目は、計画を関係者が同じ画面で見られる形へ移した設計です。単独で動くパソコンの中に計画が閉じ込められていた状態から、アカウントを持つ関係者が各自の端末で好きなタイミングに最新版へアクセスできる状態へ移したことで、共有という行為が業務から切り離されました。運用開始からの立ち上がりを支えたのは、他の電力会社での配船計画のDXに取り組んだ実績があるシステムを選び、事前協議で効果の見通しを確かめてから運用準備に入るという慎重な進め方だったと考えられます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
運用開始から約4か月の時点で、1週間に数時間発生していた単純作業はほとんどなくなりました。計画を紙に印刷して配る、PDFで出力してメールで送るといった、情報を共有するためだけに生じていた業務も不要になっています。担当者は計画をよりよくすることに時間を使えるようになり、2024年度から配船を担当し始めた担当者自身も、業務のハードルが下がったと受け止めています。労働時間の削減は感覚値として効果が現れ始めた段階で、細かな定量化はこれから。石炭調達コストの削減や属人化の解消は、今後に期待する効果として位置づけられています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、守るべき制約と良し悪しを測る物差しの両方を数値や条件の形で書き出せる計画業務です。組み合わせの数が人間の比較できる範囲を超えていて、しかも前提が日々更新される。そういう領域なら、AIに草案を作らせて人が評価する分担は、業種が違っても成り立つ余地があります。
逆に難しいのは、判断材料が担当者個人のやり取りの中にしか存在しない場合です。今回の事例でも、運賃表や船会社との契約条件という参照できる形の情報があったからこそ、条件を入力して計画の土台を作らせることができました。相手ごとの口約束や、明文化されていない優先順位で回っている業務では、まず条件を書き出す工程が必要になります。また、他の電力会社での実績を確かめたうえで導入を決めた経緯からも分かるとおり、近い業務の運用例があるかどうかは判断材料になります。
まずは直近に作った計画を一つ取り出し、その案を選んだ理由を「絶対に外せない条件」と「安いほうを選んだ判断」に分けて書いてみてはいかがでしょうか。この二つを分けて書けるかどうかが、最適化に載せられる業務かどうかの分かれ目になります。
この事例は2024年11月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
ALGO ARTIS
配船計画最適化システム「Optium」をはじめとする計画最適化サービスを提供する企業。電力会社の石炭輸送における配船計画のDXに取り組んだ実績を持つ。
北陸電力株式会社
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