実施 2025.03 ・ 更新 2026.08.27
名鉄バスの乗務員シフト作成、最適化AIで8〜10時間の手作業が3〜4時間に
プロジェクト期間:1年 〜 2年
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 毎日のシフト作成に半日以上かかる
- 勤務時間のルール計算が手作業
- シフト作成がベテラン頼み
どのようなAIの取り組み?
最適化AIにより、1日8〜10時間を要していた乗務員シフト(交番表)の作成を3〜4時間に短縮したAI取り組み
業種
バス運行事業(運輸・物流)
取り組み領域
乗務員シフト(交番表)の作成
使ったAI
最適化AI「Optium」(焼きなまし法)
主な成果
シフト作成が8〜10時間から3〜4時間に短縮
愛知県を中心に11営業所、車両700台、乗務員1,357名を抱える名鉄バスでは、日々の乗務員シフトにあたる「交番表」を、数十年にわたり紙と鉛筆と電卓による手作業で作り続けてきました。1日分を組むのに8〜10時間、時には丸1日を要する業務です。2023年4月、ALGO ARTISの最適化AIソリューション「Optium」を用いたプロジェクトが始動。当初はExcelに入力したデータをアルゴリズムに渡し、返ってきた結果を確かめるという形で試しながら、制約条件と設定の調整を1,300回以上重ね、現場の声を集めて要件を磨いていきました。2025年3月には2営業所で本格運用が始まり、法令に基づく時間計算はシステムが担うようになっています。
出典:【名鉄バス様】バス運行の交番表最適化|ALGO ARTIS 導入事例 発行元:ALGO ARTIS
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
交番表は1日でも欠ければ運休につながるため、毎日誰かが必ず作り続けなければならない業務です。しかも現場の実態は、100コースに対して出勤予定者が80人しかいないといった不足状態が常態で、休日出勤を依頼したり、一つのコースを分割して別のコースにつなげたりしながら数を合わせていく。乗務員の拘束時間の上限が16時間から15時間へ短縮されたことで、法令に基づく時間計算の難しさはさらに増していました。
編集部の見立てでは、この困りごとの核心は作業時間の長さそのものではなく、担当者が机に張り付き続けたことで生じていた副作用のほうにあります。交番担当は本来、乗務員に最も密に接するべき立場でありながら、計画を練るのに必死で会話の機会をほとんど持てずにいた。その姿を日々見ていた若い世代には「交番担当への配属は嫌だ」という印象が定着し、担い手が細っていく。作業負荷の問題が、いつのまにか人が育たない問題へと転化していたのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
既成のサービスでは解けないと早い段階で見切り、焼きなまし法と呼ばれる最適化アルゴリズムを軸に据えた選択が、この取り組みの起点になっています。焼きなまし法は、割り当ての組み合わせを少しずつ入れ替えながらより良い解を探していく手法で、コースと乗務員という膨大な組み合わせの中から制約に反しないパターンを見つけ出す用途に噛み合います。営業所ごとに地域特性も固有ルールもまったく異なり、ある営業所のやり方が別の営業所では通用しないという事情は、出来合いのパッケージにとっては扱いにくい条件でした。それを「守るべき制約を与えて解かせる」形に置き換えれば、営業所ごとの違いは条件設定の違いとして吸収できます。
最小構成から始めて条件を磨き込む進め方も、実運用にたどり着けた要因です。いきなり完成したシステムを持ち込むのではなく、Excelに入力したデータをアルゴリズムに渡して結果を確認するという素朴なやり方から着手し、制約条件と設定の調整を1,300回以上積み重ねました。ALGO ARTISのアルゴリズムエンジニアと頻繁に電話で方向性を詰め、時には現場に同席して一緒に意見を整理する体制が、その反復を支えています。
展開の順序を「変える意志のある現場から」に切り替えた判断も見逃せません。1ヶ月半毎日通い詰めても動かず、一時停止せざるを得ない営業所があった一方で、変えたいという空気のある営業所を先に見つけ、土日も平日も足を運んで声を集め、要件へ反映していきました。使う側でも「手組みを一切しない」と決め、まず全乗務員の条件を打ち込みきる——最初の2〜3時間をそこだけに費やす——という切り替えが起きています。中途半端に手作業と併用している限り条件は入力されきらず、出力の質も上がらないため、この割り切りがAIに叩き台を作らせる前提を成立させたと考えられます。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
本格運用後は、交番表の原案が約10分で自動作成され、作業全体は3〜4時間へ。従来の約半分に短縮された営業所も生まれています。効果が大きかったのは、前日の勤務終了時刻を見ながら翌日の開始可能時刻を全員分計算し直す確認作業が、法令計算をシステムが担うことで不要になった点です。完成版に手を入れるのは突発の欠勤や個別の条件変更など2割程度で、まったく修正のいらない日も出ています。組み終える時間が早まったぶん、交番担当者が乗務員と話せる時間も少しずつ増えました。一方で、使いこなすには相応の慣れと経験が求められるという実情は残っています。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、守るべきルールが法令や社内規定として明文化され、割り当ての可否を機械的に判定できる計画業務です。交番表は、拘束時間や休息時間という判定可能な制約と、コースと人という有限の組み合わせで構成されていました。勤務シフト、配車、設備の稼働割り当てなど、同じ構造を持つ業務は決して珍しくありません。
逆に、そのまま持ち込みにくい要素もあります。この事例では、乗務員一人ひとりの性格や事情まで踏まえた配慮が計画に織り込まれてきました。そうした暗黙の判断基準を条件として書き出せないままだと、出てくる案は現場の感覚と噛み合いません。全乗務員の条件入力に最初の2〜3時間を要したことが示すように、入力の手間も相応にかかります。取り組みを知って視察に訪れた同業他社の多くが、コスト面をネックに導入へ踏み切れていない点も、判断材料として押さえておきたいところです。
手はじめに、直近1週間分のシフトを見返して「なぜこの人をこの枠に入れたのか」を一つずつ言葉にしてみてはどうでしょうか。書き出せた分がAIに渡せる条件、書き出せなかった分が人の判断として残る領域です。
この事例は2025年3月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:バックオフィス・管理部門(人事・経理・法務)
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
プロジェクト実施・導入企業
ALGO ARTIS
最適化AIソリューション「Optium」を提供する企業。焼きなまし法をはじめとするアルゴリズムに長けたエンジニアを擁し、計画業務の最適化を支援している。
名鉄バス株式会社
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