実施 2022.09 ・ 更新 2026.08.27
約120万機種の需要をAIで予測、LIXILが生産計画で全国試験運用
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 在庫の余りと欠品を繰り返している
- 商品点数が多すぎて予測が追いつかない
- 計画づくりがベテラン頼みになっている
どのようなAIの取り組み?
機械学習による需要予測ソリューションで、約120万機種におよぶ製品の需要を細かい粒度で見立て、生産計画業務の高度化に取り組んだAI事例
業種
建材・住宅設備機器製造(製造業)
取り組み領域
需要予測/生産・在庫計画
使ったAI
AI需要予測ソリューション「MDF」(機械学習)
主な成果
少量品を含めて予測誤差が低減(全国で試験運用中)
サッシ・ドアやエクステリアなどの建材を手がけるLIXILのハウジングテクノロジー事業で、生産計画のもとになる需要予測をAIに任せる取り組みが進んでいます。用いられているのは、PwCコンサルティング合同会社が独自開発した機械学習アルゴリズムによる需要予測ソリューション「MDF(Multidimensional Demand Forecasting)」です。予測の対象は約120万の製品機種、物流センター別に分けたSKU単位では約230万にのぼります。2022年9月に既存品、2023年1月にはモデルチェンジ品と、二段階に分けて予測値がリリースされ、2023年4月時点では全国で試験運用が始まった段階にあります。算出された予測値は月次で提供され、生産・在庫・調達を含む計画業務を高度化していくための土台として位置づけられています。
出典:PwCコンサルティング、LIXILへAIを活用した需要予測を導入、全国での試験運用開始を支援 | PwC Japanグループ 発行元:PwCコンサルティング合同会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
生産から物流に向けて毎月数百万単位の計画値を出す必要がある一方、人手で把握できていたのは商品シリーズ別と主要品目の傾向まででした。細かい粒度の計画値は、過去の出庫構成比などで簡易的に按分してつくられていたため、エリア別・SKU別の需要の動きや特徴までは捉えきれません。そこに感染症の流行や原材料価格の高騰、購買行動の変化が重なり、海外生産拠点から国内6カ所の物流センターまでを見通した3〜4カ月先の精度が求められるようになりました。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は「予測が当たらない」ことそのものではなく、計画をつくる粒度と、現場が実際に判断している粒度がずれていた点にあります。どの拠点にどの機種を何個送るかという判断は最小単位で下されるのに、その根拠となる数字は上位の集計値を割り戻した近似でした。按分という手続きが挟まる限り、個別の動きは平均に溶けて見えなくなります。欠品や過剰在庫、横持ち輸送といったリスクは、その解像度の差から生まれていたのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
約230万におよぶ予測対象の一つひとつに対し、月次で予測モデルを都度生成するという設計が、この取り組みの中核にあります。全体で一つの大きなモデルを作り込むのではなく、対象ごとに固有の癖を捉えたモデルを毎回立て直す形をとったことで、按分に頼らずSKU単位・エリア単位の数字を直接算出できるようになりました。計画の粒度を意思決定の粒度に合わせにいった判断だと読み取れます。
過去実績が使えない領域を、あえて機械的な処理の射程に引き込んだ点も見逃せません。旧機種の終息と新機種の立ち上がりが重なるモデルチェンジ品は、時系列の実績だけでは予測が成り立たない典型ですが、対象品の新旧機種マッピングを用いた予測アプローチによって、1対1から多対多までのパターンを扱えるようにしています。既存品を先に出し、後からモデルチェンジ品を加えるという二段階のリリース順も、確実に効く範囲から現場に渡していく現実的な進め方です。
三つ目は、月次業務として回り続けることを前提に置いた運用設計です。モデルの再学習を毎月行って直近の傾向を取り込み、予測精度が時間とともに劣化するのを防ぐ一方、軽量かつ高速な並列処理によって、限られた計算資源でも月次の計画サイクルに収まる処理時間に抑えています。実績値を主としたシンプルなデータで精度を出すアルゴリズムであることも、データ整備の負荷を抑える方向に働いたはずです。膨大な予測データを事業側へ届ける環境にはLIXILが独自に持つデータプラットフォームが使われ、各工場でデータ活用を自走させるためのデジタルスキル支援も並行して進められました。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
公開資料では、MDFの活用により定番品・量産品だけでなく少量品についても、上ぶれ・下ぶれ双方の予測誤差が低減したことが示されています。エリア別の精度向上を受けて、2023年1月にはタイ・ベトナム・中国大連の各工場から中四国エリアの岡山物流センターへ輸送する対象SKUが見直され、年3回の全国定期見直しへの展開が予定されています。特注品や少量品、モデルチェンジ品まで機械的に扱えることで手動対応の範囲は極小化し、計画業務の標準化による属人化の解消と、浮いた工数をリスク低減活動へ振り向ける取り組みは、これから進める計画として位置づけられています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、扱う品目が人手で見きれないほど多く、出荷や出庫の実績が一定期間積み上がっていて、しかも予測値の受け取り先が決まっている場合です。ここでいう受け取り先とは、どの拠点にいくつ送るか、どの工場でいつ作るかといった、予測が出た後に実際に動く判断のことを指します。逆に、扱う品目が数十点程度で担当者が全体を見渡せる規模なら、モデルを個別生成する方式の利点は出にくく、投資に見合わない可能性があります。
難しさが出るのは、予測が当たっても計画に反映する仕組みが整っていない場合です。この事例では、予測値を事業側へ届けるデータ基盤と、工場側でそれを使いこなすための支援が揃って初めて実用化の動きにつながっています。予測の精度だけを上げても、届け先と使い手が用意されていなければ数字は宙に浮きます。まず試すなら、1拠点・1製品群に範囲を絞り、過去数カ月分をさかのぼって「その時点の実績だけで予測したら、どれだけ外れたか」を検証してみる。按分で済ませている数字が実際にどれほどぶれているかが見えれば、投資判断の材料になります。
この事例は2022年9月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
PwCコンサルティング合同会社
経営戦略の策定から実行まで総合的なコンサルティングサービスを提供する企業。PwCグローバルネットワークと連携し、クライアントが直面する経営課題の解決とグローバル市場での競争力向上を支援している。AIを起点とするデータ活用を経営の中枢に取り入れる「AI経営」を提唱し、需要予測ソリューション「MDF」をサブスクリプション(SaaS型)でも提供している。
株式会社LIXIL
出典・参考情報
PwCコンサルティング、LIXILへAIを活用した需要予測を導入、全国での試験運用開始を支援 | PwC Japanグループ
発行元:PwCコンサルティング合同会社
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