実施 2024.12 ・ 更新 2026.08.31
生成AIで社内規格の確認を5分から1分に、産業機械メーカーの製造現場
プロジェクト期間:半年〜 1年
企業規模:1,000人以上
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 社内ルールを探すのに時間がかかる
- ベテランしか判断できない業務がある
- 機密情報が多くAIを使いにくい
どのようなAIの取り組み?
社内規格の検索と英文仕様書のレビューを生成AIで支援し、規格確認1回あたりの時間を約5分から約1分に短縮した製造現場のAI取り組み
業種
産業機械製造(製造業)
取り組み領域
製造現場の規格確認/塗装仕様書レビュー
使ったAI
製造業向け生成AIサービス(Azure OpenAI Service基盤)
主な成果
規格確認1回あたり約5分から約1分へ短縮
日立グループでポンプや送風機などの大型産業機械を手がける株式会社日立インダストリアルプロダクツは、議事録作成や文章作成といった事務作業にとどまっていた生成AIの利用を、製造という中核業務へ広げる取り組みを2024年12月に開始しました。用いたのは、株式会社日立システムズが提供する製造業向け生成AIサービス「製造業向けアシスタントAI」です。Azure OpenAI Serviceを利用して外部と切り離したクラウド上に稼働環境を構築し、機密性の高いデータを扱える前提を整えたうえで、二つの用途を開発しています。一つは、全社共通・工場別・部門別の三層に分かれた社内規格を、作業内容を尋ねるだけで探し出せる確認支援。もう一つは、英語で届くことが多い塗装仕様書を翻訳し、自社設備では対応できない指示や、互いに矛盾する指示の可能性を洗い出すレビュー支援です。取り組みは取材時点でも継続しています。
出典:製造業向けアシスタントAI導入事例:株式会社日立インダストリアルプロダクツ様:株式会社日立システムズ 発行元:株式会社日立システムズ
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
製造の現場では、未経験の作業や不明点のある作業に入る前に、必ず関連する規格を確認します。ところが規格は全社共通・工場別・部門別の三層で構成され、部門規格だけで50ページを超えることもあるため、確認作業には会社全体で年間推定1,044時間が費やされていました。塗装仕様書のレビューも、英文を読み解いたうえで自社設備で対応できるかを見極める必要があり、高度な経験と知識を持つ担当者に頼らざるを得ない業務になっていました。
編集部の見立てでは、ここでの本質的な困りごとは文書の量ではなく、「どの規格が目の前の作業に効くのか」「この指示は受けられるのか」を見分ける勘所が、個人の経験の中にしか残っていなかった点にあります。同社自身も、人財育成や技術継承の難しさを以前からの課題として挙げています。人手不足と技術者の高齢化が重なれば、その勘所は補充されないまま細っていく。検索の手間として見えていた負荷は、技術継承の詰まりが表面に出たものだったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
機密情報を扱えるかどうかを最初に片づけた構成が、この取り組みの出発点になっています。顧客向けの製品図面のように外へ出せないデータを扱う以上、一般的な生成AIサービスのままでは製造業務に持ち込めません。Azure OpenAI Serviceを使ってクローズドなクラウド上に稼働環境を用意し、情報が外部へ流れない前提を先に作ったことで、事務作業で止まっていた利用をコア業務へ動かす余地が生まれました。
回答に必ず引用元を明示する設計も効いています。生成AIがもっともらしい誤りを返す性質そのものは消せないため、正誤の最終判断は人の側に残し、確認にかかる手間だけを短くする。出力に根拠の在りかを添えるやり方は、その割り切りを機能の形にしたものと読めます。規格文書の所在に不慣れな新人でも、示された文書に自分で当たって確かめられるため、AIの答えを鵜呑みにする使い方から距離が置けます。
三つめは、現物の業務データを学習させ、精度が出るまで直し続ける進め方です。塗装仕様書のレビューでは、過去の仕様書と、それに対して実際に出された指摘事項が学習データとして使われ、テストとフィードバックとチューニングが繰り返されました。技術を先に立てるのではなく、どの業務に生成AIが効くのかを細かくヒアリングしてユースケースを組み立てる順序を取ったことが、現場の判断に噛み合う機能設計につながったと考えられます。翻訳では原文と翻訳文を1画面に並べて表示する専用インターフェースを用意しており、作業者が突き合わせながら読む実際の手順に画面を寄せた点も、使われ続ける条件を満たしています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
規格の確認支援では、1回あたり約5分を要していた検索が約1分に短縮できることが確認され、時間にして最大80%の短縮にあたります。回答精度は当初期待通りではなかったものの、継続的なチューニングによって60%以上まで改善しました。塗装仕様書のレビューAIは、翻訳機能で約80%、要チェック項目の抽出機能で約60%の精度に達し、レビュー1件あたりの平均作業時間は約30時間から約18時間へと、約40%の工数削減が確認されています。全社約1,900人に効果が波及した場合のインパクトは、現時点では期待として語られている段階です。
うちでも使える?
応用しやすいのは、判断の根拠が文書として社内に残っている業務です。規格や手順書、過去に出した指摘の記録がそろっていれば、それらを参照させて根拠付きで答えを返す形は組み立てやすくなります。逆に、ルールが文書化されず口頭で受け継がれている現場では、そもそも学習させる材料が足りず、同じ形をなぞっても手応えは得にくいはずです。
精度の水準も見ておく必要があります。この事例は6割から8割という数字のうえで、人が引用元にあたって確かめる工程を残す前提で運用されています。誤りがそのまま事故や不適合につながる最終判断を置き換える使い方には向きません。機密データを扱うためのクローズドな環境を用意できるかどうかも、実行可能性を分ける条件になります。
手始めに試すなら、直近に自社で行ったレビューや規格確認を一件だけ取り上げ、担当者が何を見て、どこを根拠にそう判断したのかを、そのまま書き残してみてはどうでしょうか。学習データになり得る記録が社内にあるのかを測る、実物大の試金石になります。
この事例は2024年12月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社日立システムズ
製造業向け生成AIサービス「製造業向けアシスタントAI」を提供するITサービス企業。生成AI専門チームによる導入からチューニングまでの継続支援体制を備える。
株式会社日立インダストリアルプロダクツ
出典・参考情報
製造業向けアシスタントAI導入事例:株式会社日立インダストリアルプロダクツ様:株式会社日立システムズ
発行元:株式会社日立システムズ
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