更新 2026.08.31
戸田建設、過去の事故事例をAIが提示する安全指示書づくり支援とRAG精度改善
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 過去の事故事例をすぐ探せない
- ベテランの知識が若手に届かない
- 必要な資料が複数のシステムに散在
どのようなAIの取り組み?
過去の安全・品質ナレッジをAIチャットボットから引き出せるようにし、現場の安全指示書づくりを支えることを目指したAI取り組み
業種
総合建設業(建設・土木)
取り組み領域
工事現場の安全・品質管理/安全指示書作成
使ったAI
RAGを使ったAIチャットボット
主な成果
AIの検索精度(ヒット率)が向上し、必要な情報と出典の提示を確認
建設大手の戸田建設は、工事現場で毎日交わされる安全指示書の作成を支えるため、社内に積み上がってきた安全・品質のナレッジを対話形式で引き出せるAIチャットボットづくりに着手しました。支援にあたったのはAI企業のHACARUSで、チャットボットの構築と、RAG(社内のデータを検索してAIの回答に使う仕組み)の精度を高めるコンサルティングを担っています。最初から大がかりなシステムを組むのではなく、まずプロトタイプを現場で使ってもらい、そこで見えた回答のばらつきや検索精度の弱さを踏まえて、データ処理と検索方式を作り直す進め方をとりました。
出典:現場の安全意識向上に向けた「安全・品質AIチャットボット」のコンサルティング - HACARUS INC. 発行元:HACARUS INC.
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
戸田建設が抱えていたのは、工事経験の浅い技術者をどう支えるかという課題でした。朝礼や昼礼で使う安全指示書には、その日の作業に近い過去の事故事例や品質不具合事例、関連する安全衛生規則を反映させたいところですが、それらのナレッジは複数のシステムやファイル形式にまたがって置かれており、忙しい現場担当者がすぐにたどり着ける状態ではありませんでした。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は知識の不足ではなく、時間の制約にあります。会社としての知見はすでに社内に存在しているのに、朝礼前のわずかな時間では引き出せない。つまり「持っているのに使えない」状態です。だとすれば取り組むべきは新しい知識をつくることではなく、既にある知識への到達時間を縮めることであり、対話で聞けば関連事例が返ってくる形式が選ばれたのは、この時間の壁に照準を合わせた結果ではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
まず効いたのは、大規模なシステム構築から入らず、現場で試して直すことを前提に置いた段階的な進め方です。対話形式で過去事例を検索・参照できるプロトタイプを先に立ち上げ、実際の現場で使ってもらったところ、情報収集が速くなる、リスクに気づきやすくなるという手応えの一方で、回答のばらつきと検索精度の弱さが表面化しました。注目したいのは、この否定的な結果を失敗として片づけず、システム構成とデータ処理プロセスを見直す入力として扱った点です。何が足りないかは机上では分からない、という前提に立った設計判断だったと考えられます。
精度改善の攻め方も、この事例の特徴が出ています。回答が的外れなときにAIモデルそのものを取り替えて解決しようとするのではなく、データ構造の最適化、独自の前処理、複数の検索手法を組み合わせたアルゴリズムの実装という、データ側と検索側の作り込みで押し返しました。社内文書は書式も粒度もばらばらで、そのまま検索に載せても目当ての一件には届きません。手を入れる場所を「探される側」に置いた設計が、実運用に耐える精度へ近づける道筋をつくったと見ています。
もう一つ見逃せないのが、実務で利用しやすい回答フォーマットの制御です。安全指示書は毎日決まった形で作られる書類ですから、AIの答えが正しくても、書式がばらつけば現場は結局それを整え直す手間を負います。出力の形をあらかじめ型にはめる工夫は、精度の話とは別軸で、使われるかどうかを分ける現実的な設計です。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
見直しの結果、AIの検索精度(ヒット率)は向上し、必要なナレッジが取得できないという従来の課題は大きく改善しました。多くのテストで、必要な情報と正確な出典が提示されることが確認されています。現場検証の段階でも、情報収集の効率化やリスクへの気づきの向上といった評価が得られました。一方でナレッジを並列に検索したときに不要な回答が生成される課題は残っており、今後は戸田建設のDX統轄部で、独自アルゴリズムの改良や全文検索機能の活用、AWS Kendraの利用などによる改善が検討されています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、答えが社内文書のどこかに必ず書かれている業務です。過去のトラブル記録、規則、点検結果といった「参照して確かめる」性質の仕事は、この事例と構造が重なります。逆に、現場ごとの状況判断が大きく、書き残されていない判断が結論を左右する業務では、同じ作り方をしても期待した答えは返りません。また、必要な資料がそもそも文書として残っていない場合は、検索の工夫より先に記録の整備が必要になります。
進め方の面でも参考になる点があります。この事例では、精度が足りないという結果が出てから設計を組み直しています。裏を返せば、最初から完成度の高いものが出てくる前提で計画を立てると、途中の作り直しが「想定外」として扱われ、続けにくくなるということです。
最初の一歩としては、朝礼前の数分のように、時間に追われながら資料を探している場面を一つ選び、その場で必要になる文書がいまどのシステムに、どの形式で置かれているかを確認してみてはいかがでしょうか。散らばり方が見えれば、AI以前に整理すべきものも同時に見えてきます。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
戸田建設株式会社
出典・参考情報
現場の安全意識向上に向けた「安全・品質AIチャットボット」のコンサルティング - HACARUS INC.
発行元:HACARUS INC.
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