更新 2026.09.01
カメラ映像のAI監視で排水処理の異常予兆を捉える、第一工業製薬の早期警戒システム
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 設備の異常に気づくのが遅い
- 夜間や休日の監視が手薄
- 異常かどうかの判断がベテラン頼み
どのようなAIの取り組み?
屋外の排水処理施設の水面をカメラ映像とAIで常時監視し、異常の予兆を早い段階で捉える仕組みづくりに取り組んだ事例
業種
化学工業(製造業)
取り組み領域
工場の排水処理施設の監視・環境管理
使ったAI
カメラ映像を使う画像AI(異常検知)
主な成果
人がいない時間帯も監視でき、予兆段階での対処が可能に
第一工業製薬は、界面活性剤をはじめとする工業用薬剤やライフサイエンス関連製品を手がける化学メーカーです。同社の大潟工場では、24時間365日動き続ける排水処理施設を対象に、水面の様子をカメラでとらえてAIが常時見張る「早期警戒システム」づくりが進められました。屋外の施設という条件のもとで向き合ったのは、風向きによって位置が変わるスカム(浮遊汚泥)や油膜をどう捉えるか、雨や雪で水面が波立ったり白く映り込んだりする状況を異常と誤らないか、処理過程で自然に生じる無害な泡とトラブルの予兆である異常なスカムをどう見分けるか、という三つの難所です。取り組みは、実際の処理施設の映像で判別できるかを確かめ、続いて継続的な映像監視で兆候をつかめるかを評価する段取りで進み、屋外でも映像による異常検知が実用に足ることが確認されています。なお本事例は、AI開発を手がけるHACARUSの導入事例として公開されているものです。
出典:24時間稼働の排水処理施設を守る「AI早期警戒システム」 - HACARUS INC. 発行元:HACARUS INC.
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
排水処理は微生物の働きに支えられたデリケートな工程で、処理槽の状態は刻一刻と変わります。従来のやり方では、pHや汚泥の状態が異常値として現れた時点ですでに悪化が進んでいることが多く、元に戻すまでに長い時間と労力を要していました。最悪の場合、排水基準の超過を避けるために生産ライン自体を止めるという、経営に直結する判断まで迫られます。担当者が定期的に見回ってはいても、常時張り付くことはできず、夜間や休日は人の目が届きにくい。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は監視要員が足りないという人手の問題ではなく、異常が計測値として数字に出た時にはもう手遅れになっているという、気づくタイミングのずれにあったのではないでしょうか。数値が動く前に、水面の見た目にはすでに変化が出ている。その「まだ数値になっていない段階」を誰も継続的に見ていられなかったことが、遅れの正体だったように読めます。
どうやって、うまくいったのか
点ではなく水面という面全体を映像で捉える発想が、この取り組みの出発点になっています。スカムや油膜は軽く、風向き次第で位置を変えるため、決まった場所で測る定点センサーでは取りこぼしが避けられません。どこに現れるか分からないものを追うなら、監視する側も範囲で見るしかない。この割り切りが、屋外の排水処理施設という難しい対象にカメラ映像を持ち込む理由になっています。
もう一つ効いたのは、誤検知の要因を最初から設計課題として名指ししたやり方です。雨や雪による水面の波立ちと白い映り込み、そして処理過程で自然に出る無害な泡。これらを「ノイズ」「良性」としてあらかじめ区別すべき対象に据えたうえで、本当に検知すべき悪性の浮遊物だけを見分けることを目標に置いています。屋外の監視は、異常を見つける難しさより、異常でないものを異常と言わない難しさのほうが実運用を左右します。そこに先に手を打った設計だからこそ、現場が使い続けられる形に着地したと考えられます。
検証の順番も、実務に寄せた組み立てになっています。まず実際の処理施設の状況をもとに、風や天候の影響を含む環境下でカメラ映像による判別が成り立つかを確かめ、そのうえで現場での利用を想定し、継続的な映像監視で異常の兆候を把握できるかを評価する。単発の判定精度と、動き続ける現場で兆候を追い続けられるかは別の話です。この二段構えの確かめ方が、実用性の判断を曖昧にしなかった要因ではないでしょうか。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
人が巡回していない時間帯もAIが監視を続けることで、異常の予兆段階での対処が可能になり、大規模なトラブルや操業停止のリスクが大幅に低減しています。担当者の経験則に委ねられていた良性・悪性の判断もAIによる客観的な基準での判定に置き換わり、属人化の解消につながりました。現場からは、常時監視で予兆を捉える仕組みが安心と安全を支えているという受け止めも示されています。同社はこのシステムを環境管理の要として本格運用に乗せ、蓄積データを異常の原因分析や運転条件の自動最適化へ広げる計画です。
うちでも使える?
この手法が向くのは、設備が休みなく動き続けていて、異常が数値として表面化する前に見た目の変化として現れる工程です。水面、排出口、コンベア上の付着物など、カメラを据えられる場所に変化が出るなら、同じ組み立てを検討する余地があります。逆に、異常のサインが匂いや微細な振動、内部の化学変化にしか出ない工程では、映像を足しても得られるものは限られます。良性か悪性かの区別が、見た目ではなく前後の工程条件や履歴と突き合わせないと決まらない場合も、映像だけで完結させるのは難しいでしょう。屋外であれば、日照や天候の振れ幅がどこまで大きいかも、実現性を左右する条件になります。
最初の一歩としては、既設のカメラがあるならその映像を数日分ためて、過去に異常が起きた時刻の前後をさかのぼって見返してみること。予兆がすでに映像に写り込んでいたかどうか。そこが、この手法を自社で試す価値があるかの分かれ目になります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:画像・動画・3D
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
プロジェクト実施・導入企業
第一工業製薬株式会社
出典・参考情報
24時間稼働の排水処理施設を守る「AI早期警戒システム」 - HACARUS INC.
発行元:HACARUS INC.
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