実施 2025.03 ・ 更新 2026.09.01
不良品検知率100%、漢方薬メーカーが錠剤の外観検査を無人化したAI画像検査
プロジェクト期間:半年〜 1年
企業規模:100人以内
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 目視検査がベテラン頼みになっている
- 人を増やさずに生産量を増やしたい
- 検査システムが高額で手が出ない
どのようなAIの取り組み?
熟練社員の目視に頼っていた錠剤の外観検査を、深層学習を用いたAI画像検査に置き換え、検査ラインの無人化に踏み切ったAI取り組み
業種
医薬品製造(製造業)
取り組み領域
品質検査/錠剤の外観検査
使ったAI
WiseImaging(深層学習の画像検査システム)
主な成果
不良品検知率100%、過検知は1/50,000
三和生薬は、猛毒のトリカブトを減毒加工した漢方薬原料「ブシ」を扱う医薬品メーカーで、錠剤の外観検査を長らく熟練社員の目視に委ねてきました。原材料の入荷から出荷までの期間を半減させる新工場の建設が動き出す一方、既存工場も止められないため、人を増やさずに両方を回す手立てが必要になります。そこで採用されたのが、シーイーシーが自社開発する深層学習型のAI画像検査システム「WiseImaging」でした。既存のベルトコンベアにマグネット式スタンドでWebカメラを取り付け、USBケーブルで検査用PCにつなぐという最小構成を組み、正常・不良それぞれ200枚弱の画像を使って追加の学習とアノテーション、判定しきい値の調整を実施。ベルトコンベアのメーカーも交えた実証実験を経て2024年9月に導入を決定し、2025年3月末から実運用に入っています。
出典:三和生薬株式会社 様 | WiseImaging | 導入事例 | シーイーシー VR+R 発行元:シーイーシー
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
錠剤の外観検査は1日あたり60万錠に及び、担当できるのはこの道15年以上の熟練社員に限られていました。人の感覚に依存する作業のため誰でもできるわけではなく、需要に検査が追いつかない場面も生じます。そこへ、2026年9月竣工予定の新工場を、老朽化した既存工程を動かしながら立ち上げるという条件が重なりました。通常ならライン増設に伴う増員で対応するところですが、増員は製造コストを押し上げ、安定供給という目的そのものを揺るがしかねません。
編集部の見立てでは、ここでの困りごとの本質は検査の量ではなく、生産能力が「代わりのきかない技能」に縛られていた点にあります。錠数がいくら増えても、判断できる人の数以上には検査が進まない構造です。もう一つの壁は、展示会で見た画像検査システムの多くが数千万円規模だったこと。人的リソースが限られた企業にとって問題だったのは金額の絶対値というより、その投資が回収できるという見通しを持てるかどうかだったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
立ち上がりの重い部分をベンダー側に寄せ、現場には調整だけを残した役割分担が効いています。事前検証の段階でシーイーシーがある程度まで学習させた状態でシステムが提供されたため、三和生薬側は自社ラインでの追加検証にとどめることができました。用意した画像は正常・不良それぞれ200枚弱で、AI学習用のデータとしては驚くほど少ない枚数です。誤判定したものを追加学習させ、不良箇所を示すアノテーションと判定しきい値の調整を行うだけで、インライン化に耐える精度まで持ち上げられた形です。
既存ラインをつくり替えず、後付けできる最小構成に絞った設計も、導入のハードルを下げる方向に働いています。カメラ設置の自由度が高いことを活かし、日常点検の清掃を妨げないようマグネット式スタンドを選び、そこにWebカメラを取り付けて簡単に着脱できるようにする。検査用PCとの接続はUSBケーブル1本で、設置作業は1日もかかりません。設備を大がかりに改造しないという選択が、投資額と現場の運用負荷の両方を同時に抑えています。
現場側でアノテーションとしきい値に手を入れられる状態を保った点が、いわゆる「手の内化」の実体だと考えられます。それが表れたのが、ベルトコンベアの速度を上げると画像が移動方向に伸びてしまうという、インライン化に必ずついて回る問題への対処です。当初は速度を落として回避していたものを、伸びた画像そのものをAIに学習させるという解き方に切り替えました。外部に依頼せず現場で試して直せる体制があったからこそ選べた解決策であり、AI活用を一度きりの導入で終わらせない条件でもあります。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
2025年3月末に始まった実運用では、不良箇所の検知率は100%に達し、見逃しは発生していません。正常品を不良と誤って弾く過検知も1/50,000にとどまり、不良検知でベルトコンベアが停止しパトランプが回る頻度は1日10回程度と、生産ラインの歩留まりの高さもうかがえる水準です。ベルトコンベアの速度は従来と同じまま錠剤の検査ラインを無人化でき、目視を担っていた熟練社員は他業務へ配置転換されています。導入コストが低いため投資は1年で回収できる見込みで、今後は錠剤を入れる包材や箱の検査自動化も検討が進められています。
うちでも使える?
応用しやすいのは、不良の特徴が見た目に現れ、同じ品目が大量に流れる工程です。この事例のように既存のコンベアにカメラを後付けできる構造であれば、設備そのものを入れ替えずに検査だけを切り出せます。加えて、ある程度学習させた状態のシステムを受け取れるかどうかも、必要な画像枚数と立ち上げ期間を大きく左右します。
一方で、重さや手触り、においなど画像に映らない要素で良否を決めている検査は、そのまま置き換えられません。少量多品種で品目ごとに不良の出方が異なる場合や、そもそも不良品のサンプルが手元にほとんど残っていない場合も、学習が組み立てにくくなります。清掃や段取り替えのたびにカメラ位置や照明条件が変わる工程では、精度を安定させる工夫が別途必要になるでしょう。
最初の一歩としては、手元の不良品を数十点、実際のラインと同じ角度で撮影してみることをすすめます。撮った写真だけで自分たちが良否を見分けられるか。ここで迷うようなら、AI以前に「何を不良とするか」の定義から手をつける番です。
この事例は2025年3月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
シーイーシー
工場現場やFA機器に関連するシステム開発を数多く手掛けてきた企業。その経験を活かした自社開発製品として、ディープラーニングを活用したAI画像検査システム「WiseImaging」を提供している。
三和生薬株式会社
出典・参考情報
掲載企業の方へ:本記事は公開情報をもとに作成しています。内容の修正・削除、または貴社確認のうえでの公式掲載をご希望の場合はこちらからご連絡ください。
