実施 2026.01 ・ 更新 2026.09.01
AI外観検査で不良指摘を約95%削減、創業130年の不織布メーカーの検査体制
企業規模:300人以内
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 目視検査の見落としが減らない
- 検査の精度が人によってばらつく
- 客先からの不良指摘対応に追われている
どのようなAIの取り組み?
反射光と透過光の両方をAIに学習させる外観検査で、客先からの不良指摘を約95%削減した取り組み
業種
不織布製造(製造業)
取り組み領域
品質検査/外観検査工程
使ったAI
AI外観検査カメラ(画像AI・良品学習)
主な成果
客先からの不良指摘を約95%削減
1894年創業の金井重要工業は、繊維機器部品の製造から始まり、不織布事業を長く手がけてきた製造業です。不織布の検査は人の目に頼っており、幅が広く1ロール数百mある製品を、1本あたり約1時間、2名が表と裏に分かれて確認していました。ここにAI外観検査を手がけるスタートアップのフツパーが加わり、反射光と透過光の双方から撮影した画像をAIに学習させる検査システムを構築します。不良の発生自体が極端に少ない事情に合わせて正常な状態を覚えさせる良品学習を採用し、学習データの作り方、画像処理専用照明への切り替え、ロールの仕上がりに応じた光量の自動調整まで、両社が現場で作り込みました。稼働後は客先からの不良指摘が大きく減り、検査時間も短縮されています。
出典:不織布検査で見落とし95%削減。創業130年企業がスタートアップと作り上げた外観検査システム | 株式会社フツパー Hutzper 発行元:株式会社フツパー
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
検査が雑だったわけではありません。1本あたり約1時間をかけ、2名で表裏を確認する体制が組まれ、疲労がたまらないよう休憩を増やしたり別工程を挟んだりする調整も行われていました。それでも見逃しは残り、検査員の熟練度や疲労の度合いによって精度がぶれる。不織布は厚みがあるため地合いのムラは表面からは判断できず、成形後に初めて見えてくる内部の異物にいたっては、表面を眺めるだけでは手の打ちようがありませんでした。自動車の天井内装材として出荷された製品は、客先の加工後に不良が見つかると外観不良として全体が廃棄対象となり、補償対応と数十時間規模の報告書作成が続きます。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は見逃しの数ではなく、検査の難易度が人の生理的な限界を超えていたことにあります。数時間続けて欠点を探し続ける作業は人には不可能だという現場の言葉が、その線引きを端的に示しています。熟練や気合いで埋められる差ではない領域が残っていた以上、増員や工夫を重ねても頭打ちになるのは避けがたかったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
反射光と透過光を組み合わせて画像を取る設計が、この検査システムの出発点になっています。不織布は厚みがあり、表面で跳ね返る光だけでは、地合いの内側に入り込んだ異物までは写りません。提案されたのは、両方の光で得た画像をAIに学習させ、表面の傷や汚れと内部の異物を別々の見え方として扱う構成でした。過去に調査しても内部まで確認できる仕組みが見つからなかった検査を、光の当て方から組み替えて成立させた点が、最初の分岐だったと考えられます。
不良が極端に少ないという製造現場の実情に合わせ、良品学習(正常な状態を覚えさせ、そこから外れたものを異常として拾う手法)を選んだ判断も効いています。ただし検査範囲は広いのに探す不良は小さく、全体を写した画像だけではどこに異物があるのかAIに教えられません。そこで品質保証の担当者が、不良のある耳端にテープを貼り、そこから何センチの位置に異物があるかを記した位置情報マップを作り、画像とセットで渡す方法をとりました。学習データの正しさをベンダー任せにせず、製品を最もよく知る側が担保したこの分担が、精度の土台になっています。
精度が伸び悩んだ局面で、原因をモデルではなく照明という物理条件に求めた切り替えも見逃せません。不織布は種類ごとに厚みや密度が変わり、明るさによって見え方が揃わないため、画像処理専用の照明へ変更したうえで、ロールの仕上がり具合に応じて光量を自動調整する機能まで組み込まれました。平日はラインが動いていて手を入れられないという制約に合わせ、検査が止まる土曜日に一緒に調整したり、リモート接続で当日中に修正したりする進め方も、使いながら学習を重ねる形を支えています。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
客先からの不良指摘は、1台目のシステムで半減し、今回の検査機が稼働してからは月数件、約95%の削減に至っています。1本あたり約1時間かかっていた検査時間も30〜35分程度まで短縮されました。残る指摘は不良の取り方や成形工程に起因するものへと内容が変わり、見落としに由来するものは大きく減少。検査員からは検査が楽になったという声が出ており、補償対応や報告書作成に費やしていた見えないコストも軽くなっています。検知精度が上がったことで発生要因の究明が進み、材料や設備のメンテナンスなど上流での対策に時間を割ける状態が生まれました。
うちでも使える?
応用しやすいのは、同じ形の製品が連続して流れ、良品が圧倒的多数を占め、不良の位置を後から人が特定できる検査工程です。良品学習は不良サンプルを大量に集められない現場でも成り立ちますし、この事例のように位置情報を記録する手間を惜しまなければ、学習データの質は自社側の工夫で引き上げられます。
一方で、条件が揃わない場面もあります。不良の判断基準が客先ごとに揺れていて社内でも言語化できていない場合、AIに教えるべき正解が定まらず、学習データ作りの段階で止まります。カメラや照明を置くスペースがない、ラインを止めて調整する時間をどうしても確保できないといった物理・運用面の制約も、精度を詰める工程で効いてきます。この事例でも現在はAIが検知したものを人が確認する運用であり、検査そのものが消えるわけではない点は押さえておきたいところ。
まず試すなら、手元にある不良サンプルを、反射光と透過光の両方で撮り比べてみてください。どちらの光でなら見えるのかがはっきりすれば、AI以前に必要な撮り方の条件が見えてきます。
この事例は2026年1月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:画像AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
株式会社フツパー
AIを用いた外観検査システムを提供するスタートアップ。大阪産業創造館主催のベンチャーサポートプログラムでの出会いをきっかけに金井重要工業の外観検査システムを手がけ、学習データ作成の段階から伴走し、運用後のメンテナンスまで一気通貫で支援する体制をとっている。
金井重要工業株式会社
出典・参考情報
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