更新 2026.09.01
AIと経済学でクーポン原資を最大70%削減、サイバーエージェントの価格最適化
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 全員に同じクーポンを配っている
- 販促費がかさむのに売上が伸びない
- 値引きの効果を測れていない
どのようなAIの取り組み?
AIと経済学を組み合わせた分析で、売上を維持しながらクーポン原資を最大70%削減した価格最適化の取り組み
業種
インターネット広告事業(メディア・広告)
取り組み領域
販促・クーポン施策の最適化
使ったAI
AI×経済学の価格最適化モデル(機械学習・因果推論)
主な成果
売上を維持したままクーポン原資を最大70%削減
株式会社サイバーエージェントは、AI事業本部が担うリテールメディアや小売DXの領域で、クーポンやポイントといった値引き原資の効率化に取り組んでいます。2016年にAI技術の研究開発組織「AI Lab」へ設けた経済学研究チームの知見を土台に、購買データから「誰に」「いくら」値引きすべきかを予測するソリューション「価格エージェント」を開発し、提供を始めました。中核にあるのは、クーポンがある場合とない場合の購買行動の差を予測する因果推論(施策が結果にどれだけ効いたかを推定する手法)の応用技術です。顧客企業への展開にはSnowflakeのNative App Frameworkを採用し、分析ロジックと顧客の機密データを別々のアカウントに分けたうえで、Streamlitで作成したダッシュボードごとパッケージとして届ける形をとりました。ドラッグストアやアパレルメーカー、EC事業者などで先行導入が進んでいます。
出典:AIと経済学で実現する価格戦略の革新。クーポン原資最大70%削減ソリューション『価格エージェント』をNative App Frameworkでセキュアかつスケーラブルに展開 発行元:Snowflake
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
販促費をめぐる状況の背景には、原材料費や人件費の高騰、円安といったコスト圧力があります。従来の販促施策は過去の経験則をもとに全顧客へ一律の値引きを行うやり方が中心で、小売業界ではアプリ利用者全員に多種多様なクーポンを配る運用も広がっていました。ところが購買意欲の高い顧客にまで同じ値引きが届き、企業が期待するアップセルやクロスセルにつながらない状態が生まれます。顧客の多様化と商品ラインナップの複雑化によって、経験則による値付けが成り立ちにくくなっていた事情も重なりました。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質はクーポンの配りすぎそのものではなく、「値引きがあったから買った人」と「値引きがなくても買っていた人」を区別する物差しを持てなかったことにあります。施策全体の売上でしか効果を測れない限り、配布をやめる判断には常に売上減少の不安がつきまといます。一律配布は、判断材料がない中で選ばれた、最も安全に見える選択だったのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
値引きの効果を、施策全体ではなく利用者一人ひとりの行動変容として捉え直した設計が、この取り組みの起点にあります。クーポンがある世界とない世界での購買行動の差分を予測するという因果推論の応用は、「配った人がその後買ったか」ではなく「配ったから買ったのか」を切り分けます。この切り分けができれば、値引きがなくても買っていた層を配布対象から外すという判断に、はじめて根拠が生まれます。インターネット広告オークションの入札金額の最適化で積み上げてきた経済学の知見を、小売の値引きという別種の意思決定へ移し替えた点が、この予測を支える土台になっていると考えられます。
分析ロジックそのものを製品として切り出し、パッケージにして顧客の環境へ届けるという配り方も、実運用を可能にした要因でしょう。Snowflake上でアプリケーションをまとめて配布できるNative App Frameworkを使い、コードやクエリ、Streamlitで作った画面までを一つの汎用アプリとして格納する。この形にしたことで、クライアントごとに環境を用意する個別実装から離れられます。顧客のPOSデータやユーザーマスタと、提供側の分析ロジックを別々のアカウント上に置く構成は、機密データを預からずに済ませるという運用上の割り切りでもあります。
Snowflakeのアカウントを持たない企業にも閲覧専用のReaderアカウントを発行し、その中で自社データを分析できるようにした選択は、利用の敷居を下げる工夫として見逃せません。パッケージにはStreamlit in Snowflakeで開発したダッシュボードまで含まれ、顧客側がターゲット層やクーポン額、予算といった条件を自ら動かしてシミュレーションできます。分析結果を報告物として渡すのではなく、条件を試せる場ごと渡す設計が、提供側と顧客が同じ画面を見ながら施策を詰める議論を成り立たせたのではないでしょうか。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
推進したこと
この事例で出た成果
先行導入では、売上を維持したままクーポン原資を最大70%削減する成果が出ています。ある小売企業では、全ユーザーに配布していたカテゴリークーポンの効果をAIモデルで分析したところ、売上への効果が確認できたのは一部のユーザーに限られ、効果のあった層だけに配信を絞ることで原資を70%削減しました。削減された原資は、新商品開発やポイントプログラムの拡充といった利用者の体験を高める施策に再投資されています。ダッシュボードを介した共有については、担当エンジニアが、感覚値として間接的な業務工数の約30%削減という効果を挙げています。
うちでも使える?
応用が利きやすいのは、会員アプリやポイントカード、ECのように、誰がいつ何を買ったかを個人単位で追える業態です。値引きの案内をID単位で出し分けられ、施策を繰り返している環境であれば、配布した層と配布しなかった層の行動を突き合わせて効果を見積もる余地があります。逆に、現金中心で購買履歴が個人にひもづかない売り場や、値引き施策が年に数回しかなく比較の材料が集まらない商売では、同じ形をそのまま持ち込むのは難しいでしょう。購入頻度が低く単価の高い商材も、行動の差が見えるまでに相応の時間がかかります。
もう一つの分かれ目は、データを誰の環境に置くかという条件です。この事例のように分析する側とデータの持ち主が別々なら、データを預からずに分析できる仕組みが前提になりますが、自社のデータを自社で分析するのであれば、その手当ては要りません。まずは直近で配ったクーポンを一つ選び、使った人が以前から同じ商品を買っていた人かどうかを購買履歴で照らし合わせてみるところから。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
AIツール・サービスの提供形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:数値・Excel・ログ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:AIモデル・構築手法
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
Snowflake
データ分析基盤を提供する企業。Native App FrameworkやReaderアカウント、Streamlit in Snowflake、データクリーンルームなどの機能を通じて、データとロジックをセキュアに共有・分析できる環境を提供している。
株式会社サイバーエージェント
出典・参考情報
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