実施 2026.06 ・ 更新 2026.08.18
服薬記録の作成が最大5分の1に、患者との会話からAIが文案を作る薬局の仕組み
※イメージ画像です

取り組み概要
やさしく事例解説
プロジェクト解析
実施・導入企業
こんな方へおすすめのAI解説です
- 毎日の記録作成に時間を取られている
- お客様と向き合う時間が足りない
- 話した内容をあとから思い出して書いている
どのようなAIの取り組み?
服薬指導の会話を音声で記録し、AIが薬歴の文案を生成することで、薬歴作成時間を最大5分の1に短縮したAI取り組み
業種
調剤薬局(医療・ヘルスケア)
取り組み領域
薬歴作成/服薬指導の記録
使ったAI
AIアシスタント機能付きクラウド版電子薬歴サービス(音声認識+文案の自動生成)
主な成果
薬歴作成時間を最大5分の1に短縮
全国に191店舗の調剤薬局を展開するコスモファーマグループは、在宅医療や介護施設への対応拡大と薬剤師の働き方の見直しを背景に、薬歴システムのクラウド移行を進めています。その中心に据えたのが、三菱電機デジタルイノベーションが提供する、AIアシスタント機能を搭載したクラウド版電子薬歴サービスです。服薬指導のやりとりを音声で記録し、処方内容から想定される指導の流れと照らし合わせながら、AIが薬歴の文案を組み立てます。導入はスモールスタートで始まり、現場の声を集めながら店舗を広げる形が取られました。薬歴作成にかかる時間は従来の3〜5分から1〜2分へと縮み、記録の質や薬剤師の残業時間にも変化が現れています。
出典:「AIアシスタント機能」の活用により薬歴作成時間を最大5分の1に短縮 | 株式会社コスモファーマ | 三菱電機デジタルイノベーション株式会社 発行元:三菱電機デジタルイノベーション株式会社
やさしく事例解説
何に困って、AIを入れたのか
導入前、薬剤師は1日のうち90分から120分を薬歴の作成に充てていました。対物業務に追われ、患者と向き合う時間を十分に確保できない場面も生じています。加えて、在宅医療や介護施設での対応を広げていくには、店舗の端末に縛られずに患者情報へアクセスできる環境が欠かせない状況でした。
編集部の見立てでは、この困りごとの本質は作業時間の長さそのものではなく、服薬指導の場で聞き取った情報を、その場を離れてから記憶をたどって文章に起こすという構造にあります。会話と記録が時間的に切り離されているために思い出す作業が発生し、しかも思い出せなかった情報は記録から静かに抜け落ちていく。時間と質の両方が、同じ一点から削られていたのではないでしょうか。
どうやって、うまくいったのか
決め手になったのは、薬剤師の思考モデルに沿ってAIの動きを設計した点です。この仕組みは処方内容を事前に分析して想定される服薬指導の流れを予測し、実際の患者との会話と照合しながら薬歴の文案を組み立てます。開発は三菱電機デジタルイノベーションと、東京大学発のスタートアップであるmediLab株式会社の共同によるもので、単なる音声のテキスト化ではなく、記録を書くまでの思考をなぞる設計になっている点が従来のシステムとの違いです。記録するための道具から、考える過程を支える道具へと役割をずらした発想が、現場で使われる仕組みにつながったと考えられます。
現場の音環境と話し方に耐えられるかを見極める、検証の進め方も効いています。同グループがAI活用に着目したのは4〜5年前で、当時は音声認識が専門用語や方言を捉えきれず、実用化を見送った経緯がありました。今回は学術大会で本機能を知った後にすぐ検証へ移り、現場のフィードバックを重ねながら展開しており、テレビ音声などの環境ノイズを自動的に除去し、長い会話から要点を整理して出力するところまで到達しています。技術の一般的な進歩を待つのではなく、自分たちの窓口で実際に起きる雑音や言い回しに合うかどうかを判断の物差しに置いたことが、過去の見送りとの分かれ目でしょう。
薬歴作成からレセプトコンピュータとの連携までを一つの流れで完結させる構成も、効果を左右した要素です。文案を作る部分だけを速くしても、その後に転記や別システムへの入力が残れば、現場の手数は思ったほど減りません。個別最適ではなく業務全体の効率化につながるかどうかを選定の基準に据えた判断が、日々の運用に無理なく収まる形をつくっています。まず試し、現場の反応を見ながら広げていく段階的な進め方も、合わなければ引き返せる余地を残したまま検証と展開を同時に進める設計として機能しました。
具体的に、どんな成果が出たのか
改善・向上したこと
この事例で出た成果
薬歴作成にかかる時間は従来の3〜5分から1〜2分へと短縮され、服薬指導後の入力作業が大幅に削減されています。新店舗の開局時に発生していた初月20〜30時間の残業も大きく抑えられ、円滑な開局につながりました。変化は効率面だけにとどまりません。これまで記録には不要と考えられていた患者との雑談の中に重要な情報が含まれていると気づく契機となり、蓄積された背景情報が次回の服薬指導に生かされています。AIが生成する文案が書き方の手本となり、日常業務の中で記載スキルが磨かれる効果も生まれました。
うちでも使える?
応用しやすいのは、人と話しながら進める仕事で、その内容をあとから所定の様式に書き起こしている業務です。介護記録や設備の点検報告、訪問先での相談対応など、会話の中にすでに答えがあるのに、書く作業が別途発生している場面では、同じ考え方が働く余地があります。
一方で、この事例が成り立っている条件も見ておく必要があります。薬歴は処方内容という構造化された情報が先にあり、指導の流れをある程度予測できるからこそ、AIが文案の見当をつけられます。会話の展開が毎回まったく異なり、拠り所となる事前情報が乏しい業務では、同じ水準は望みにくいでしょう。記録が制度上の責任と結びつく領域なら、担当者が内容を確認して仕上げる工程を残す前提で設計することになります。文案づくりだけを速くしても、後続システムへの転記が残れば効果は目減りする点にも注意が必要です。
まず確かめるとすれば、直近の記録を一件、会話で交わした内容と最終的に書いた文章を並べてみること。書き起こしの過程で何が落ちているのかが見えれば、自社にとっての伸びしろの大きさも見当がつきます。
この事例は2026年6月時点の情報です。AI分野は変化が速いため、現在は同様の取り組みをより短い期間・少ない負担で実現できる場合があります。
プロジェクト解析
プロジェクト内容
AI導入・支援形態
導入部門・データ活用
導入部門:全社共通・汎用業務
活用したデータ:文書・ナレッジ
採用したAI技術・ツール
採用したAI技術:テキスト・言語AI
AIモデル・ツール
連携ツール
連携したシステム・外部サービス
プロジェクト実施・導入企業
三菱電機デジタルイノベーション株式会社
調剤薬局システムや、AIアシスタント機能を搭載したクラウド版電子薬歴サービスを提供。「AIエージェントが生みだす新たな薬局体験」をコンセプトに、レセプトコンピュータと電子薬歴を融合した保険薬局向けオールインワンプラットフォームの開発に着手し、AIエージェント分野では株式会社mediLabの技術協力を得て2026年度中のサービス提供開始を目指している。
株式会社コスモファーマ
出典・参考情報
「AIアシスタント機能」の活用により薬歴作成時間を最大5分の1に短縮 | 株式会社コスモファーマ | 三菱電機デジタルイノベーション株式会社
発行元:三菱電機デジタルイノベーション株式会社
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